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夜空に見えるのは青い地球  作者: 妃 大和


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24. 森はジャングルでした

 ここ裏月の気候って訳分かんないなあ。

 バイクで走ってきた赤茶けた植物の殆ど生えていない世界から一転して、今居るのはまさにジャングル。


 入り口こそ杉や檜みたいな木が生えていたけど、今囲んでいるのはマングローブのようなクネクネした樹形の木ばかり。そこに絡みついているツタのような植物。

 ちょっと蒸し暑いし。

 入り口にはなんとか道らしきものがあったけど、気が付けばもじゃもじゃと生い茂る草とうねうねした木の根が地面にあるばかり。うっそうと木は茂り、お日様の姿はおろか空さえよく見えません。

 最初はバイクにまたがっていたけど、地面はうまく走れないし、空中も木の枝?で走れないしで、バイクを押して地面を歩いてます。

 すっごい重いはずのバイクも手から思念貴石にパワーを伝えれば殆ど重さを感じないで押すことが可能なのです。


 いくら重力の恩恵で筋力UPしていても、ただこれがずっと続くのはつらい。

 顎が思わず前へ出て、いつまで歩くのかと足の動きは遅くなる。

 でもここジャングルの嬉しい所は空気が濃いこと。

 裏月の重力が地球の3分の2のせいか、空気が足りない感じがずっとしていたんだよね。

 それが今、じっとりと湿った濃厚な空気に包まれていて肺が喜んでいる。あー、空気が美味しい。


 シュア君は時々立ち止まり、目を瞑って360度方向を探っている。そして何やら方向を決めてそっちに進んで行く。たとえ道が無いようであってもだ。


「シュア君、地図も無しでよく進む方向が分かるね? 入り口には道があったと思うけど、いつの間に道を通らなくなったの?」


 と素朴な質問をしてみた。さすがに30分以上もそんな進み方をしていれば聞きたくもなるってもんでしょ。


「道に沿っていくと霧島さんが見たくないだろうものを見なくちゃならないから道を通るのを止めたんだ。チェックポイントからこっちって言う合図の思念音声が出ているからそこに向かってる。ここの怖い動物の思念とか気配を避けるようにして進む方向を決めているよ。もう少ししたら川があるから、川の上空をバイクで走って行こう。」


 ほうほう、サポート役の力量が試される場なんだね。

 森を抜けてチェックポイントにさえ行けば、最短距離を選ぶもよし、獣との戦いを選ぶもよしなんだ。

 そしてシュア君は安全第一を選んでくれたとみましたぞ。そうそう、私はか弱い地球人。戦いは無理です。怖いのもイヤです。

 でも、見たくないだろうものって何だろう?

 皇子の婚約者としての何事にも動じない態度を養う?ために道に障害物が用意してある? なにげに婚約者を試しているね。


 デコボコ道に足をとられながら川の側まで来た。途中なんかの這う音や木の葉がガサガサいっていたが「あっち行け。あっち行け」と言う私の呪文が効いたのか…生き物にお目にかかることは無かった。

 川幅は約1メートル。なんとか川の上空2メートルくらいは空間が出来ている。やっとバイクに乗れるね。


 バイクに乗ったことでスピードアップです。進んでいる気がやっとする。ここで一気に歩いていた遅れを取り戻す。

 時々目の端にカラフルな生き物がチラッと入るけど、「あっち行け」の呪文が効いているのか幸いこっちには来ない。どんな生き物かは深く考えないようにしている。


 川幅は所々広くなったり狭くなったりしていたが、概ねバイクで空中を走ることは順調に進んでいた。

 距離にして5キロほど進んだろうか。


 ふいにシュア君の「うっ。」という息を呑む声がした。後ろを振り返れば、腰に手を回し小ぶりの剣に手をかけている姿が目に入った。

 少しバイクのスピードを落とす。

 どうしたんだろうと思っていれば、私でもわかる異臭。生臭い動物の臭いと腐臭。さらに血の香り。思わず顔をしかめる程だ。騒がしい気配もするようだ。


 私が走る横を追い越してシュア君のバイクが前へ出る。さらに減速する。


「道で何か起きているようですね。レースの護衛は救助要請が出ない限り助けには来ないことになっていますが、助けを呼べないのかもしれません。様子を見に行っても良いですか?」


 もちろん、と私は答える。怖いのはイヤだけど、誰かか傷ついているなら助けたい。


「少し離れて付いて来てください。危ないと思ったら道に沿って全速力で逃げてくださいね。」


 シュア君に何度も身の安全を確保して逃げることが第一と念押しされる。

 その間に川の側から足元の悪いデコボコ道の上をバイクを押して通り、人工的に作られた道に出た。


 音のする方をみれば護衛のような獣人がお嬢様らしき獣人を守りつつ、剣を振っている。

 思わず目を見開いてしまった。こんなの見たこと無いよ。


 見知らぬ獣人が対峙しているのは野犬のような獣。口からのぞく犬歯が長い。半開きの口からはダラダラとよだれと泡が出ている。野犬の切りつけられたような傷からは血が流れているがひるむ様子はない。さすが護衛は強いようだが少々疲れている様にも見える。それに取り囲む野犬はあと8匹残っている。

 その足下には大きな塊肉のようなもの。人の頭くらいあるだろうか。青っぽい色の部位もある。腐り気味のエサ?なんで置いてあるの?


『そこのもの。助けなさい。』


 はあ、と思わず天を仰いでしまったわ。緑の枝葉しか見えなかったけど。

 甲高くて耳に突くその声はミケのものでした。





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