21. いよいよレースです
まぶたに光りが差す。暗闇から意識が浮上してくる。
大きな窓にかかるカーテンの隙間からは眩しい日差しが光りのカーテンとなってこぼれ落ちていた。
いつも走るために起きる6時より早い5時に目覚ましはセットしたけど、それより早い時間のようだ。
再び寝る気にもならないのでベッドから私は起き出した。
いよいよ宇佐見君の婚約者を決めるレース当日だ。
6時には会場入りをするので5時半にはお屋敷を出発する予定。
「うーん、やっぱり学校のジャージがいいかなあ。もう地球人ってバレているみたいだし。」
シュリさんがこっちの動きやすい服ってのを用意してくれたけど、着物みたいなあわせの服だから胸元が心許ないんだよね。革のコートは一番外側に羽織って風避けにするとして…風は通すものの動きやすさはジャージが一番なんだよね。ただ色気も何も無いんだけど。
きっとお嬢さん達は着飾ってくるんだろうな。
同じ女の子として、それに皆に注目されるだろうし、キレイな格好をしたい気持ちはある。
でも第一の目的は宇佐見君のフィアンセにミケがならないように、彼女に勝つこと。だから私のみてくれは気にしないで実用性重視でいったほうが良いよね。
悩んだあげく結局服装は、サブバックに入っていた体操着に緑のジャージの上下、白い革のロングコート、はき慣れた運動靴、バイク用のプロテクターを付け、ミッ○ィー柄のヘルメットとなりました。うん、色気ないよ。分かってる。
朝ご飯にシュリさんがおにぎりを握ってくれました! 梅干しは無いけど海苔が巻いてある! お弁当にもシュア君に持たせてくれるって。
◇
5時半に宇佐見君とジェラールさん、シュリさんもお屋敷を馬車で出発です。
その馬車についていく形で私とシュア君もバイクで出発。
出発前にはシュリさん、ラジェールさん、宇佐見君にさんざん「ケガだけはしないように。」と念押しされてしまった。宇佐見君にはさらに「無茶するな。」とまで言われちゃったよ。そんなに私暴走キャラに見えるのかな。
見送りのメイドさん、従者さんには大声で「頑張ってください。」と頭を下げられたんだけどね。ちょっとは期待されている?
シュア君のバイクは銀色。シルバーです。中学生くらいの背格好なのにバイクに乗っていても不良には見えない。様になっていて格好いい。そしてシュア君の背中には大きなリュックサック。食べ物やら敷物やら色々入っているんだって。ちなみに私は手ぶらです。ほんと、いいサポート役がいて良かった。
天気は快晴。キレイな青空が広がっている。
王様が穏やかで良い天気を精霊にお願いした結果らしい。なんか王様最強だわ。
思わず深呼吸すれば、胸の奥まで汚れの無い新鮮な空気が染み渡っていく。ここ自動車走っていないもんね。自分がすごく尊いものになった気分がする。
うん、私バイクの運転上手くなった。結構いけると思う。
私は特別緊張することも無くスタート地点へと向かう。馬車チームとは別行動です。
スタート地点はあの市が立っていた広場だ。お祭りイベントだからか軽食の屋台もでている。
赤い紙テープが張ってあってその前にバイクを並べた。バイクは20台くらいある。サポート分もあるとして参加者は10人くらいか。
ヘルメットをとって辺りを見渡せば、バイクの台数以上の参加者らしき獣人、人型が沢山いる。思わずシュア君をみれば
「バイクなしで参加する人もいるんだよ。」
とのこと。大きなイベントで注目されているから参加することで楽しんだり、注目を浴びようとするらしい。さすがお祭り大好き民族。
バイクで走る部分を自分の足で走ろうっていう強者だからか、がたいの良い人ばかりだ。私なんて皆の背に埋もれてしまう。それに眼光鋭いよ。
参加者に圧倒されてちょっとビビってきた。
手を見つめ、グーパーして「平常心、平常心。」と呟いていれば、遠くから甲高い悪役お嬢様笑いが聞こえてくる。やつだな。
声のする方をみれば、案の定そこにいたのは以前私に皇子のフィアンセになる宣言をしたミケチャーン ジャージルだ。どピンクの服が目に痛い。あ、スカートかと思ったら裾のすぼまったキュロットスカートなんだ。フリフリしているし、自己主張強!
思わず目を背けてしまったのに、私のこと指さしてズンズンと近づいてくる。人のこと指さすのはお行儀悪いって教わっていないのか?
『この間の生意気な娘、逃げないで来たのは褒めてあげるわ。私の実力に驚くが良い。』
あー、裏月語しっかり脳内変換されて理解できますよ。こう言う言葉ってしっかり分かっちゃうんだよね。あー、耳に聞こえるニャーニャーが五月蠅い。がたいの良い獣人のお姉様方と比べれば迫力無いミケに気後れはしない。
「あんたには負けないわよ。」
売り言葉に買い言葉。
それ以上の言い合いになる前にシュア君やミケのサポート役に引き離されました。
ちょっとストレッチして、手足のパワーリストを外す。重いのはめていたから身体がすごく軽く感じる。
ルートの説明を簡単にシュア君からされて、再びヘルメットをかぶる。
周りから熊さん達やキジにゃん君の声援が聞こえる。皇子に惚れてる人間の姉ちゃんって言い方は止めて欲しいんだけど。
獣人と人型がスタート地点に集合し始めた。
塔のような建物のバルコニーに宇佐見君の姿がみえる。あ、目が合った。ニヤッと笑ってる。
「・・・」《頑張れ》
突然、私の頭の中に宇佐見君の言葉が浮かんだ。
はっともう一度宇佐見君を見たけれど、すでに私を見てはいない。不意打ちズルいと思いつつ私の顔は真っ赤だ。動揺させないでよ。
バイクにまたがりエンジンをかける。
塔を見ればラジェールさんが拳銃のようなものを空に向かって構えている。
シュア君とアイコンタクトをとって、前を向く。
会場皆でカウントダウンだ。
「%○c、%J●、▲%k、×b○、#II」《5、4、3、2、1》
『スタート!!』
青空に立ち上る白い煙。
レースの始まりです。




