19. 不器用な人
「はあ。残念。」
眉尻を下げてシュリさんは上目使いで私を見る。
「いくらお願いされても、手と足以外のマッサージはされたくないです。」
美人さんにお願いされてもゆずれないものはあるのだ。手足を触られるだけでも物凄く恥ずかしいのに、寝そべって背中をマッサージされるなんて言語道断です。いくら気持ちよくなると分かっていてもです!
「透子ちゃん、スベスベで柔らかくって、触り心地がすっごく良いんだもん。ここの子って基本、獣人でしょ、だからちょっと毛深いのよね。」
「私だってそこそこ毛深くて困っているくらいなんです。恥ずかしいからなでないでください。」
私は獲物をねらう目のシュリさんからキャアキャアと部屋の中で逃げ回っていた。
過剰なスキンシップをもとめるシュリさん…自立した素敵お姉さんキャラは何処へいったのですかあ?
==Don,Don!!==
突然、ドアをグウで叩く音。
「騒がしいぞ。何やっているんだ?」
ドアの外から宇佐見君の怪訝そうな声。
紳士ですから部屋に入ってきたりはしません。
「練さま、気になるう? もう、透子ちゃんたら可愛くってね。スベスベなのよ。ううん、何でもないから大丈夫よ。」
とかなんとか、言ってシュリさんは宇佐見君を追い払ってしまった。
そしてゼイゼイと息のあがった私にお茶の支度をしてくれる。
まだ知り合って数日なのに嬉しいことにシュアさんに私は気に入られたようだ。
お世辞にも人懐っこいタイプではないと自覚しているんだけど、むしろ壁を付くって自分を守るタイプと思うのだけど。
言葉が足らなくて無愛想だと言われたこともある。
シュリさん曰く、私は不器用で頑張っていて構いたくなるタイプらしい。
「練さまもね、不器用なのよ。そつなく何でもこなしているように見えるかもしれないけど、裏で努力しているのよ。」
「知っています。」
小学生の時の彼は何にでも一生懸命だった。全力だった。
「裏月と地球の狭間で自分の居場所を一生懸命つくっているの。でもどっちかっていうと気持ち的には地球よりかな。だから裏月の女の子には今ひとつ目が向かないみたいでね。王族として求められるものも色々あるし、かといって地球で裏月のことベラベラ話して相談する訳にもいかないから、自然とつきあう友人も限られてね。反抗期らしきものもなく来ちゃって、見ていて痛々しかった所に透子ちゃんが来て…いい意味で人間らしくなったわ。シュアを褒めてやらなくちゃね。」
「何か今の宇佐見君、上から言いたいこと言う王様にしかみえないですけど。」
「こっちにいる時は王族だからねえ。でも結構小心者で気にしてばっかりなのよ。ここでは何でも気持ちを声に出さなくちゃ伝わらないから、日本人の透子ちゃんには言いたいこと言っているようにみえるかもね。透子ちゃんも伝えたいことはちゃんと声に出さなくちゃだめよ。黙っていてもわかってもらえると思っちゃダメだからね。」
バイクに乗ってレースに出るだけでも、私にとっては自分を変える出来事だ。
声に出して気持ちを伝える…恥ずかしいことでは無いんだよね。必要なんだよね。自分から行動をおこすことを覚える良い機会なんだよね。
意識して気持ちをちゃんと伝えるって最近していないんだよなあ。
無意識に国中に気持ちがすでに2回も伝わってしまったし。
取りあえず、シュリさんにお礼を言います。




