魔剣ゾルディティン
決闘の場所を整備しに夜明けと同時に広場に来たソドムとレウルーラ。肌寒いが澄んだ空気が心地よい・・・などと感傷に浸っている暇などなかった。
現地でギルマスのラセツと大まかな打ち合わせを済ますと、続々とやって来る冒険者ギルドからの派遣スタッフに指示を出し、決闘場所と観戦場所が分かるように、石灰で白く区切らせ、有料席には椅子の代わりに木箱を設置させた。
そう、彼らは酒場での喧嘩を興行にして一儲けしようと目論んでいるのだ。最初は自分らで切り盛りして丸儲けするつもりであったが、人を雇って規模を大きくしたほうが利益が大きいと踏んで、ギルドに協力を依頼したのだった。
利益の源泉は有料席だけではない。どちらが勝つか客に賭けさせて、もっと儲ける算段であった。そのための簡易取引所を設置しなくてはならなかったが、建ててる暇はないので、馬車の荷台を借りて代用することにした。
「よ~し、様になってきたな。無料の場所は前列が胡坐で我慢してもらうとしよう。あ、剣闘士の控室としてテントも必要だな。ラセツ殿、追加でテント二つを準備していただきたい」ソドムは戦よりも気合が入っている。
「わかりました、手配します。ソドム殿、ギルドとしては総売り上げの一割を頂けるので文句はありませんが、なぜ街はずれで決闘を行うのでしょうか?」常識やルールを重視して生きてきたラセツは、どうにもソドムのやることが理解できない。いや、人としても嫌いであった。妻がいながら姉に手を出すなどと、許せるものではない。
「うむ、後でわかる」考えることに忙しいソドムは、素っ気ない返事をしてから、
「あっ、荷台を追加。それと、街で屋台を営業している者たちに出店を打診してみてくれ。場所代をギルドに納めるのを条件にな」と、ギルマスへの配慮を見せた。
「了解した。お気遣い痛み入る」嫌いな相手に気遣われて、居心地が悪くなったラセツは、決闘場の線引きを采配しているレウルーラの所へ行って、
「レウルーラさん、実際のところ利益とれそうですか?」と、運営の心配を吐露した。
「客が少なかったら当然赤字よ・・・、あと賭けの胴元なんて初めてだし」ソドムから勝算を聞かされていても、少し不安なレウルーラ。
「ですよね・・・。オッズは前評判で決めるんですか?」ラセツの読みでは人気・知名度・実力を加味して、シュラが1.3倍、ボウルが2倍くらいに落ち着くと思っていた。
「独断と偏見の固定オッズでやるみたい」
「固定オッズ?運営費を控除しないわけですから、しくじったら胴元が大損するかもしれませんよ!」と、本気で心配しだすラセツ。
「なんだか 姉を過大評価しておられるみたいですが、勝てるんでしょうか?相手のボウルは、ガタイの割に素早く、その巨躯から繰り出される大剣の破壊力はかなりのもので、人間よりも大きな魔物を真っ二つにしたそうです。昔、姉やソドム殿の戦いぶりを見たことがあるので強いのは分かっておりますが、体格差は埋めがたいかと」ギルドマスターとしての観察眼を持つがゆえに、姉の勝利に懐疑的であった。
レウルーラは、今までのシュラの戦いぶりを思い返し、迷いを消して妹のラセツを安心させようと思った。
「逆に、それが狙い目なんだって。戦士としての肉体条件を全て上回るボウルと、名が知られているが見た目は小娘の戦士シュラ、見比べたらどっちが勝つと思うかしら?」レウルーラは得意げにラセツを指さしながら話を続ける。
「皆がボウルが勝つに違いないと思うでしょ。そしてその固定オッズの倍率は・・・まさかの10.0。コイツ絶対勝つって思った方に賭けると10倍になって返ってくるのよ。対して女だてらに戦士やってるシュラちゃんの倍率は1.1しかない」レウルーラは少し考える時間を作り、
「ラセツさんなら、どっちに賭ける?」とラセツに問う。
「それは・・・姉を応援したいですが、ボウルに賭けるかもしれません」
「でしょ?有り金をボウルに賭けるのが普通。でも、私の見立てでは今の彼女の実力は大陸五指に入ると思うわ。つまり、シュラちゃんが絶対勝つ。八百長じゃないけど、街のお金をゴッソリいただくつもり」と、自信を込めて言ってニッコリ笑う。
「そ、そうですか、安心しました・・・。四賢者のレウルーラさんが言うのだから間違いないでしょう!これを聞いてしまったからといって不正にはなりませんから、私は姉に全額賭けるとします」ホッとしたのか、ラセツの表情は少し緩み、持ち場に戻っていく。
二時間ほどして、大まかに会場が出来上がった頃、レウルーラはソドムに一つ質問をした。
「ねえ、取引所の隣の荷台は何を扱うの?」
「何だと思う?」会心のアイディアをもったいぶるソドム。
「わかった、込み合った時の為の第二取引所でしょ?」資産が十倍になるかもしれない儲け話だから、客が殺到すると予想するレウルーラ。
「残念、ハズレ。だが、その案もいい。さらに一台増やすとしよう」
「ありがと。で、答えは?」
「あれはな・・・質屋だ」ドヤ顔するソドム。
「質屋って、あの?」
「そう、鑑定と取り立てはギルドに任せる。金が十倍になるチャンスなら、冒険者が装備を質に出して金を借りてでも賭けようとするんじゃないかな?」と悪辣な考えを披露した。
「な、なんて狡猾な!悪魔ね!」罵りながらも笑顔で抱き着くレウルーラ。このような面白いことを考え出すソドムが好きなのだ。
レウルーラを抱きとめたソドムは、
「悪魔ではない、悪魔をも統べる影王だ」と、真顔でレウルーラの発言を修正した。
(ふふ、質屋の狙いはもう一つあるがな)
朝の八時過ぎに、客はゾロゾロと現れ始めた。
厳しい環境の下界は、生活するのがやっとなので、イベント事など皆無に等しい。だからなのだろう、早朝にもかかわらず噂を聞き付けた市民が多くやって来た。職人・商人、カップルに隠居者まで、まるで祭りのような賑わいを見せている。冒険者しかこないと予想していた運営サイドとしては嬉しい誤算であった。
なお、ショッキングな事柄もあるため、子供連れはお断りしている。
冒険者ギルドが大急ぎで手配した各屋台から旨そうな匂いがするので、大半の者は吸い込まれるように屋台に向かって歩いて行く。見事ソドムの狙いは当たった。ソドムの屋台収入はないが、ギルドに恩を売れたのは大きい。
「おい!選手は控室で待機しないとダメだろう!」ホットドッグ屋に並ぶ赤髪の娘を見つけたソドムは、余計なトラブルが起きないようシュラを控室に行かせたがる。
グリルした熱々のソーセージをパンにはさみ、シュークルート(キャベツの酢漬け)を乗せ、味付けはシンプルにケチャップとマスタード。かぶりつけば、パリッと皮が弾けて肉汁が溢れ出し、それをしっかりとパンが受け止め、旨さを逃がさずいただける・・・素朴ながら絶品だ。と、シュラは心で食レポをして、時間にルーズな彼女を起こして連れて来たトリスからビールを受け取り豪快に飲んだ。
「たは~!最高!!」戦いに慣れているシュラ、プレッシャーとは無縁のようで、ピクニック気分での来場であった。
「シュラ様、主が控室へ行くように言ってますよ!」
「ん?そうらっは。いまいふ」行儀悪く食べながら返事するシュラ。
(腹が減っては戦ができぬってね。他にも食べたいものがあったけど、サクッと終わらせてからにするかな)
「私は進行役を仰せつかりましたので、昨夜の打ち合わせ通りにお願いします」
「うん、任せて。本気でやるけど、開始五分くらいは相手の見せ場を作ればいいんでしょ?」
「はい、あくまでも興行ですので」
「りょーかい」そう言って、シュラは控室に向かった。
薄暗いテントに入ると、中には冴子がいた。冴子は夜間にシュラの剣の改良を終わらせ、無事に決闘に間に合った。
打ち下ろし時の稲妻エフェクトを追加した程度なので、時間と素材の消耗は少なくて済んだが、冷静に考えてみれば性能に無関係の錬成だったので、無理に急がずともよかったのだが、そこには気がつかなかった。
「お待たせ、間にあって良かったわ」疲れた笑顔で剣を渡す冴子。「破邪の剣 改め、魔剣ゾルディティンです」
「おー、魔剣かぁ。カッコいいし、渋いネーミングね。で、名前の由来とかあったりする?」と、嬉しそうに剣を抜いて眺め、シュラがうっかり由来を聞いた。
「え~、話せば長くなりますが・・・。大和帝国の更に昔、修羅の眷族になった怨霊クスノキが欲した三つの魔剣で貪・瞋・痴というものがありました。この剣の意味は、貪る・怒り・愚かさなのですが、それになぞらえた効果(毒・火・稲妻)を持った魔剣というコンセプトで、元からあった火魔法と、ソドム殿に先ほど協力して頂いた毒魔法、あとシュラちゃんの希望だった見た目だけの稲妻を付与してあります。ネーミングはソドム殿によるもので、トンジンチを魔剣ぽい発音にしたそうです」
「うげっ、ホントに長いじゃないですかぁ」うんざりするシュラ。
「申し訳ありません。簡潔に言うと、斬った相手に毒を与え、衣類に着火し、振り下ろした場合はプラスして見掛け倒しの稲妻が落ちる・・・魔剣ゾルディティンです。ちなみに毒は強力ではありませんが、解毒せずにいると一日ほどで死に至る場合があるそうです」長い台詞を終えた冴子は、「それにしてもバカバカしい魔剣を作ったものだ」と思った。
「おお!凄い!斬りつければ毒と火かぁ、めっちゃ魔剣じゃん。なにより、ド派手でいいっすな。修羅が由来ってのもピッタリだし!」シュラは喜び、戻って来た相棒を両手で抱いた。まさにシュラのための魔剣である・・・相変わらず、チャージ式の三流品だが。
素直に喜ぶ様を見て、少しは報われて疲労感が軽減する思いになった冴子。
(まあいいわ、これでこの娘の戦意は向上した。シュラちゃんは単純だから、それが強さに直結しますから)
武器説明が終わったあたりで、ソドムもテントに入ってきて、必殺技名が書かれたボードをシュラに見せた。そのボードは家の窓くらいある大きなもので、三枚も持ってきていた。
「お、魔剣ゾルディティンを受け取ったな。あと、必殺技名はこれだ。二枚目は飛び蹴りの名前だ」
「必殺技だけでよくね?」
「そうなんだが、仮に致命傷を与えても即死でなければ、止めを刺さなくてはならない。その時に、同じ攻撃してもつまらんだろう。だったら、得意の金剛聖拳のオーラを纏わせた飛び蹴りで爆散させたほうがウケると思ってな」
「お、いいじゃん。さすがソドム。で、三枚目の板は何?」
「ああ、これは対戦相手の技を書いたんだ」
「なる。つまり、ボウルも技名を叫ぶのね」
「そうだ。戦いが盛り上がるようにな。実況は俺がして、解説はレウルーラがするから、予め情報も奴の聞いて来たところだ。守秘義務だから今は言えないが」変なところが律儀なソドム。実は本気で対戦を楽しみにしていた。
「ま、勝つからなんでもいいよ」シュラは剣を鞘に収めて腰に提げた。
「言うと思った。賭けが始まる前、それぞれ略歴紹介と自己アピールをしてもらうから、よろしく頼むぞ」
「大丈夫、試合前に斬りかかるようなことはしないから」戦いが近づき表情が戦闘モードになり始めるシュラ。変態痴漢野郎をぶった斬るイメージを頭に描いている。
「では、健闘を祈ります」そう言うと、彩子は鎧に歩くように命じて、ソドムと一緒にテントを出た。
朝九時、広場中央で戦士紹介が始まった。戦うフィールドは半径10mの円内、進行役と関係者それと戦士以外は立ち入りが禁止された。円には控室代わりのテントが二つあり、試合開始時には撤去することになっている。
戦士紹介の前にギルドの運営スタッフ四人が、固定オッズが書かれたボードを掲げてフィールド外周を歩いてまわる。これでオッズは知れ渡り、あとはそれぞれの戦士紹介でどちらに賭けるか見極めるのである。
やはり・・・というか当然というか、ぽっと出の女戦士が1.1倍で(二十年もブランクがあった)、暴れ盛りの大男が10倍というのは間違いではないかと会場はどよめきに包まれた。
が、「これは稼げる・・・」と密かに思うものが多数いた。
勇ましい演奏と共に簡易闘技場の中心に歩み出たトリスは、来場者への挨拶はそこそこに戦士の紹介を始めた。
「では・・・、生ける伝説!?かつて大和帝国兵をバッサバッサと斬りまくった百人斬り、破邪の剣で敵を焼く姿はチビドラとして恐れられました。そして本日は、新たな必殺技と魔剣・ゾルディティンのお披露目をしてくれるそうです!。ガーターズ・シュラ!!」銀髪の好青年トリスが、ハイテンションでシュラを呼び出し、陽気なな曲を演奏し始める。
それに応じて颯爽とテントから現れる・・・かと思われたが、のっそりとダルそうに現れ、シュラは適当に観客に手を振った。
やる気があろうがなかろうが女戦士は珍しい。黒いミニスカートにガーターベルト、上はビキニトップというエロさに全振りした姿は大好評で、賭けるかどうかは別として人気は凄かった。昔、ソドムから「見られて恥ずかしい身体じゃないんだから、どんどん見せろ」と言われたことがあったが、「見られるのも悪くはない」と少し思った。やはり、人間なんだからモテて嫌ということはない。
「シュラさん、戦いを前に意気込みを聞かせてください」というトリスの問いに
「頑張りまーす」と答えて、早く終わらないかとばかりに腕を組んだ。やる気のなさにトリスは驚いたが、気を取り直してボウルの紹介に移った。
「次に、最近勢いに乗っている狂戦士、大太刀のボウル~!!」トリスは、あらじめリサーチしていたボウルの故郷の民族音楽に曲を変えた。
(勝手なネーミング、叱られないといいけど)
呼ばれたボウルは音楽に合わせ、のっしのっし大きな図体を揺らして現れた。
昨夜と違ってボウルの両腕には鎖が巻き付けられていた。女戦士は手数で挑んでくる可能性が高いと思い、腕の動脈を守るために鎖を準備したのだ。時節ジャラジャラと金属音を出す鎖は、手に負えない猛獣を連想させたので観客は息を飲んだ。
ボウルは途中で歩みを止めた。「何事か?」と、皆が騒めき始めた時、彼の仲間三人が盾をもって駆け寄り、一列になり片膝を着き盾を構えた。
「俺様は女を斬るのは本意じゃねー!。だが、戦うからには本気でいくぜぇ!」そう言うと、背中の大剣を構え、大振りで一回転させて勢いをつけてから、三人めがけて横に払った。
「超絶竜巻斬り!!」斬撃と同時に技名を叫ぶボウル。盾で受けた連中は、強烈な斬撃に耐えきれず、数メートル吹き飛ばされた。
(やっべ、やりすぎたー!)
三人をなぎ倒したボウルは観衆に向かってガッツポーズをして、自らの強さをアピールする。
それに反応してトリスが足元に置いてあったボードを高く掲げた。それにはボウルの技が書かれてあり、より一層観客を盛り上げる効果があった。場は「これは勝確だろ!」という雰囲気に包まれた。表には出さないが、「女戦士がズタボロになる姿を見てみたい」という暗い欲求も中には混じっている。
ボウルという男は なかなか曲者で、ただ勝つだけでなく、なるべく自分に賭けさせれば、固定オッズなので胴元であるソドムが大損すると閃いた。借金に四苦八苦するソドムらの姿を見たくなったボウルは、上記のデモンストレーションでさらに自分の人気を高めることにしたのであった。
圧倒的な力を見せつけたボウル、中央に向かって歩いて、
「これが実力ってもんよ。尾ひれがついたお前の話とはわけが違うぜ。もっとも、百人斬りってのはアッチの方だったとしたら、本当なんだろうがな。約束が楽しみだ。グハハハハ」と笑って、シュラを挑発する。
気のいい彼の仲間たちは、倒れて土埃にまみれたままでも「わっははは」と合わせて笑い、シュラを侮辱した。
シュラはビビるどころか、獲物を狙う肉食獣のように睨んだ。一晩寝て治まっていたシュラの怒りが、ボウルの挑発のおかげで再燃した。
「ハッ!昨日からシャクしろって言ったり抱きついてきたり、テメーは最低最悪だな。仮にアタシが風俗嬢だったとしても、公共の場で初対面の女に咥えろって普通 言うか?まあ、あんたがどんなプレイを妄想してるか知らんけど、勝つのはア・タ・シ!」
(確かに風俗嬢に負けないくらい攻めた格好してはいるけど、言っていいことと、悪いことはある!)
「フン、弱い犬ほどよく吠える。見ての通り盾でのガードは無意味だ、その小っこい盾じゃなおさらなぁ。武器のリーチも体格差もこちらが有利。せいぜい死なないようにしてくれよ・・・」ニンマリと笑うボウル。
今一度ガッツポーズをキメてから、倒した仲間を介抱しに向かった。
(しっかし、酌を尺と勘違いされていたのか?…だが、プレイなどと人を変態扱いしやがって)
戦士の紹介が終わり、賭けの受付が始まるが、やはり優勢はボウルであった。
シュラは女としては筋肉質だが、大柄で屈強なボウルと比べれば、町娘と戦士といった印象を持ってしまうので、ボウルが勝つと思うのが自然であった。加えて、ボウルが勝てば大儲けというオッズも追い風になった。
ソドムの思惑通り人気はボウル一色になったため、欲深いものは質屋に殺到して金を借りた。そのおかげで賭け金は膨れ上がる。
「ふぅ~、どうやら上手くいったな」運営席でソドムは一息ついて、ホットドックに噛り付く。
「ええ、あとはシュラちゃんが勝てば終わりね。固定オッズだから、ボウルに賭けられたお金は、丸々私たちが貰えるわけね。シュラちゃんに賭けた少数派の人たちへの払い戻しは微々たるものだから凄まじい儲けよね」
(てか、この人は商人が向いてるんじゃないかな。国の運営も、どこか発想が商人ぽいとこあるし)
「そうだな。だが、まだまだ賭け金は膨れ上がるはずだ」ご機嫌なソドムは、お気に入りの黄金のガントレッドを布でふきふきしてニヤけている。
(全ては計画通り、あと一つピースが・・・)
「それはそうと、何で街はずれで開催したの?」
「ふふ、そろそろ分かる・・・」と、話を聞いているのかわからない曖昧な言葉を発して、街の反対側の荒野を遠望するソドム。
つられてレウルーラが、その方向を見ていると、砂塵を上げて何かが近づいてくるのに気がついた。
「あれは・・・」何だろう?という疑問しかないレウルーラ。
段々と騎馬の一団だとわかった頃、冒険者とギルド関係者も気がつき、緊張が走った。市民にもそれが伝わり、不安がよぎる。
「ソドム!?あれは修羅国じゃないの!?」顔面蒼白になったレウルーラが、ソドムのマントを掴んだ。騎馬に混じって一頭立ての戦車がいるので、間違いないと思ったのだ。
「そのようだな。どうやら、俺のメッセージが伝わったようだ」と、したり顔のソドム。
「どういう事?」焦り気味のレウルーラが立ち上がりながら聞いた。異変に気がついて運営席にラセツもやって来る。ソドムは冷静に二人をなだめ、
「あれも客だ。治安圏の境目ならば、彼らも参加しやすいだろうと思ってココにしたのだ」
「しかし、どうやって修羅国に報せたんですか?まさか・・・、ガーターズは繋がっていたのですか!?」ラセツは問いただしながらも、ゆっくりと抜刀できる体勢になっていく。
魔人であるソドムは、剣で斬られたても かすり傷しか負わないが、ギルドと争う気はないため、両手を挙げておどけて見せる。
「おいおい、俺たちが何人暴走賊を殺したと思っている。内通なんてするはずがないだろう。ま、酒場で決闘することを喧伝していたのだ、街に紛れ込んでいたスパイが報告すると期待してたのさ」と、種明かしするソドム。
「スパイ!?」動揺するラセツ。
「そりゃあ、いるだろう。街の住人や冒険者とて一枚岩ではない。報酬次第では情報を流す不届き者もいてもおかしくはない」
「認めたくありませんが・・・、なくはないですね」
(それを炙り出すのが今後の課題だな)
「それはさておき、今日だけは彼らを客として受け入れてはいただけないだろうか?」
「な、何をおっしゃるのです!」ラセツは怒りをあらわにした。山賊どもには散々手を焼かされてきたのだ、彼らとは「戦」の一文字しかないのだから。




