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面接

エレナから貰った連絡先を頼りに、彼女の元へ訪ねた。


ギルドが運営する、役所の一つっぽい建物。

その上にある「自然管理課」という事務所に彼女はいた。



「あら、久しぶり!…聞いたわ。大変な目にあったのね」

「エレナさん…僕を…僕を調査員にして欲しいです!」

「…え?…えぇ?」


「危険な仕事なのはわかってます、しかし、友達が魔物に…」

「…それはギルドから聞いたわ。新人の冒険者がヒスイリュウに挑んで返り討ちにあった。一人は左腕を失うほどの怪我をしたって」


「はい…」


「…無事でよかった。アキラ君のような人がそんな危険を冒すはずが無いと思ってたから…。立ってるのもなんだし、ちょっとついてきて」


事務所の奥を進むと、取調室のような小さな部屋があった。

悪いことしてないのに、緊張するな…


「さて、早速だけど…いいよね?」


このアイスブレイクを挟む間もなく進む感じ、魔物と向き合うのはこういうことなのか…?


「さて、その友達は気の毒だけど…でも、左腕で済んだとも言えるわ。ヒスイリュウに襲われて左腕を喰われた。なのに生きて帰れた。そのまま食べられずに」


「はい、私が撃たなかったら、彼は食べられてました…。良いんですか?そんなふうに考えても」

「反省は大事、でも『彼の腕を失ったのは自分のせい』だなんて思ってほしくないだけよ。」

「…ありがとうございます」


「では、単刀直入に聞くわ。どんな作戦で挑み、どうやって生きて帰ったのか、教えてちょうだい」


「まず、僕達は全身を泥で塗りたくりました。そして前線はケビン、僕は後方から擬態照明で彼を視覚的にも擬態させました」


「あら、ちゃんとしてるじゃん。…え、それでも気付かれたってこと?」


「彼が獲物を探すときに使うのは、臭いでも目視でもなかったです。…電気です。生き物の身体を流れる小さな電気です」

「生き物の身体を流れる電気?」

「はい。」


「…聞いたことはある。私達人間や、多くの魔物が電撃魔法を使えるのは、《実は全ての生き物には電気が流れててそれを魔力で増幅させてるから》という…。根拠のない、頭の体操程度の仮説だと思ってたけど…本当の可能性があったなんて」


「それで、もしかしてと思って燻製肉にほんのちょっぴりだけ電気流して放り投げたら…そっちの方に食いついてくれました。…正直、それで確定とは言えませんが」

「…それで、以上かしら?」

「はい、後は任務失敗の報告を出して、ケビンと共に病院へ…」


「…わかった。ヒスイリュウの索敵のカラクリが解りかけた時、どう思った?」

「どうって…まず、なぜヒスイリュウが電撃に弱いことにも説明がついた…って感じですね。おぉっ…ってなりましたけど、それよりもケビンの救助の方が優先でした」


「…なるほど。…じゃあ、アキラくん、冒険者としてのあなたに聞くわ。ヒスイリュウにリベンジしろって言われたらどうする?ちなみに行かなかったら殺す」


「行かないとは言わせないつもりですね…彼は鼻先で獲物を探ってました。おそらく鼻先に電気を感じる器官があります、そこに高圧の電流を与えたら勝機はある…っていうことを、強そうな剣士さんに頼んで同行してもらいます。或いは…五人以上のパーティで多方向から電気をばら撒いて相手を撹乱させる…とか?」


「自分一人では倒さないってことね」


「はい、鼻先に高圧電流を当てる、そんなギリギリまで敵意持って近づくことはしません」


「なるほど…では、本題に入るよ」


突如、エレナさんに鋭い眼光が宿る。

嘘でしょ…今のはまだ本題じゃなかったの…?

でも、どんな問いでも答えてみせる。


「家族が魔物に喰われたら、どう思う?」

「辛い、とても悲しいです」


「その魔物に復讐したいと思う?」

「…正直に言うと、そうです。多分…殺したくなります」


「この質問について、どう思う?正直に答えて」

「…変な質問だと思います」


「どうして?」

「その魔物は人の味を覚えてます、駆除…つまり、復讐が最適解になります。それって…なんだか…」


言葉が詰まる…この違和感を具現化したいけど…何も出てこない。


その生き物を殺すことには変わらないけど…ごっちゃにするのは違う。


「…復讐と駆除は違うのはわかりますけど…自分が当事者になると、混合してしまうと思います」


「…人と魔物、どっちの味方?両方という答えはなしね」

「人です。魔物を知るのは人のためです」


これははっきり言えた。

エレナの表情が少し緩んだ。


「なるほどね。…ねぇ、一昨日あんな目にあったのに、なんでもっと危険な場所に踏み込もうと思ったの?絶対、使命感とか勢いとかじゃないよね。…何かきっかけあるでしょ」

「博物館に行きました。…色んな魔物の剥製や骨格を見てきました。…本当に楽しかったです。おかしいですよね…まだ魔物に惹かれてるなんて。ヒスイリュウの剥製も、最初は吐きそうになりましたけど、それでも…ちゃんと見ると…かっこいいなって…あんなことされたのに…まぁ、言ってしまえば剥製の彼と、ケビンの腕を食べた彼は別ですけどね」


「…わかった。」

エレナの口角が僅かに上がった。

そして、『やっぱりね』とでも言うような目つきだった。


「明日の8時にまたここに来てね」

「…!!」

「合格よ。でもすぐに調査には同行させないし、まだ一員にはしないよ。今住んでる冒険者の宿の退去の準備とかも必要だしね。…出来るだけ早く使えるようにするわ。」

「…はいっ!ありがとうございます!」

「よろしくね、アキラ君」


跳ね上がる気持ち、しかしその足取りはしっかりと重くこの場所を去った。外はすっかり暗くなっていた。


「困ったな…流石に病院は閉まってるよね」


ケビンにこのことを報告したいが…その時間はない。

せめて手紙でも書いて郵送するか。


翌日、時間通りに自然管理課の事務所へ足を運んだ。


「あらためてようこそ!自然管理課の生態系調査員へ!!」

「よろしくお願いします!」

「では早速だけど…これをやってもらうわ」


目の前に広がるのは大量の紙の山だった

「そっちの覚悟は足りなかった…って顔してるでしょ、調査だけが私達の仕事じゃないからね」

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