残酷な妖精は今日も楽しそう
今日も俺の妖精は朝から楽しそうで、花のような笑顔で柔らかく俺に微笑んでくれる
手に持っている双眼鏡については、触れないでおこう
「城山様、これで一緒に2階の資料室からこっそりと覗きましょうね」
…聞きたくなかった
花の妖精は覗きなんかしないと思いたかったよ…
「今日の編入生様との出会いはまず、クール副会長様なのです」
うん、だから聞いてないよ?
「チャラ男会計様の出番はまだ先なので、お待ちくださいませね」
うん、だから聞いてないってば
そしてやっぱり、俺はチャラ男会計なんだね?
出番は先って出番あるんだね?
待ってないよ、待ちたくないよ?
出番は無しでお願いしたいですが…
ダメだ、ワクワクしているのが伝わりすぎて、断れない…
亜里沙は資料室に入るとすぐに華奢な体を資料が詰め込まれている
本棚に預けて小さな明り取りの窓枠へとよじ登ろうとしている
ん?何故そんな小さな窓から覗くんだい?
危ないよ?
と、声をかけようとしたが、それは遅く、直ぐに亜里沙は
小さな悲鳴をあげた
よじ登っていた場所から足を滑らせたのだ
ふわっと空間に体が舞う
その体を難なくキャッチし、顔を覗き込んだ
亜里沙は自分の失敗を恥ずかしがっているのか
顔を赤くしてぴるぴると震えていた
「大丈夫かい?お転婆はダメだよ、僕のお姫様?」
震える姿が、あまりにも可愛かったので、
そう言っておでこに軽くキスを落とした
「本当は唇にキスを落としたいんだけど…まだ我慢するね」
「…………っ!」
つい本音も言葉として出てしまったが、その言葉を聞いた途端
さらに亜里沙は顔を赤くして、俺の腕からするっと逃げてしまった
…残念
逃げてしまった俺の妖精を目で追う
亜里沙は小窓から覗くのを諦め、素直に普通の窓から覗くことを決めたようだ
最初からそうすれば良かったのにね
どうしてあんな場所から覗こうとしたのかな?
まぁ役得もあったから、口には出さないけどね
「…城山様…さすがのチャラ男会計様っぷりですわ…その甘い囁きを是非編入生様へ送って頂きたいですわ…」
双眼鏡を握りしめ、校門付近を見つめながらつぶやく亜里沙の言葉は
聞こえなかったが、きっと俺にとって残酷な事を思っているんだろうなと
感じたが、それでもいいや
こうして傍に居れる間は
君の楽しそうな笑顔が間近で見られるのなら
俺の好きな妖精は今日も残酷でとても楽しそうな笑顔を振りまく




