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リアル・インテグラル・マキナ〜死んだら即終了のゲーム世界を死線突破の火事場スキルで無双する〜  作者: 雷蔵ててな
プロゲーミングチーム所属

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6/25

初配信


「これを持っておゆき」


 ひしゃげた声に振り返る。

 ローブを被った怪しげな老婆がくれた餞別は、ミントの香りが微かに香る薬草だった。


「ありがとう、世話になった」


 寂れた薬屋を後にする。


 木の蔓を編んでできた橋を渡ってメイン通りに出ると、少し歩いてから広場のベンチに腰を下ろす。


「よし」


 俺はステータスを見て満足気に頷いた。


————————————————————————

【ステータス】

 烏我 科戸

 Lv:1

 体力:20

 魔力:20

 筋力:5

 知力:5

 器用:5

 敏捷:5

 耐久:5

 精神:5

 幸運:5

【スキル】

 敵刃不滅/修復/工作/調合/食いしばり

【称号】

 なし

【装備】

 武器:なし

 頭:なし

 胴:なし

 腕:なし

 腰:なし

 足:なし

 装飾:なし

 装飾:なし

————————————————————————


 俺はこの3日間で、普通はNPCにやらせればいいや、となる生産スキルである、修復、調合、工作の3つのスキルを手に入れていた。


 取得条件は簡単だ。何処でもいいので鍛冶屋、薬屋、道具屋で半日ずつ働くこと。賃金としてそれぞれ一万円と餞別で砥石、薬草、罠芯をもらったぞ。


 そしていつの間にかスキル食いしばりを覚えていた。

 これは死にゲーと言われるRimをプレイする上で欠かせない必須スキルとされている。


 取得条件は何パターンか判明してるが、俺は意図して何かやった訳ではない。

 そういえばフランリッテにボコられたあと回復してなかったから、HP1のまま三日間過ごしたことになる。

 多分これかな。


 ポーチから薬草を使ってHPを回復しておく。


 この三日間で家に本國さんがきて正式に契約を結び、高性能なPCやカメラを始めとする配信機材が届けられた。


 公においてもすでにプロゲーミングチームRe:GENESIS ORDER通称リジェへの正式加入も完了している。

 Twitterでリジェの公式アカウントから加入のお知らせが出ていたが、結構話題になっているらしい。


 というかこの短時間であんな豪華なPVをよく作れたものだ。

 加入前提で用意してたわけでもあるまいし。


 ……いや、まさかな。


 LINEでリジェのグループにも加入したぞ。


 烏我:どうも

 Neneca:よろしく〜!

 Sera:よろしくお願いしますね

 たかし:すげえ!本物!?

 BURNOUT:誰だお前!

 HaloX:事前連絡あったでしょ、新メンバーだよ

 コンプラ:うちのRim部門のプロもこれで5人そろったね

 Sera:元世界一位なのだとか

 刀祢屋:へー、ふーん、そう

 たかし:ビックウェーブきちゃー!

 BURNOUT:強いのか!俺と戦おう!

 Neneca:ファンです!またRim始めるんですね!嬉しい!

 HaloX:よろしく!今度コラボしてよ!

 刀祢屋:いい気にならないことね

 BURNOUT:おい!俺と戦ってくれ!

 たかし:これでレガリアに勝てる!

 烏我:うるさい

 BURNOUT:なっ!?

 Sera:何か面白い話して烏我くん

 本國:君たち仲良くしてくださいね


 翌日。いよいよ初配信を迎えた。

 事前にTwitterで告知を出して十五時。

 配信をつけたらあっという間に三万人が集まった。


〈待機〉

〈待機中〉

〈ほんもの?〉

〈待機画面すごい手が込んでんな〉

〈ちびキャラ可愛い〉

〈待機〉

〈はよ〉

〈まじなの?〉


 Now Loadingの待機画面はリジェからもらったものだ。

 俺の担当になったらしいマネージャーから配信の一通りの流れは教えて貰っている。


 カメラをONにする。マイクをONにする。

 よし、始めよう。Now Loadingの待機画面を閉じると、これまた凝った演出をしてからページが閉じる。


 これで配信に俺が写ってることだろう。


「あー、あー、聞こえてる? ますか?」


〈写った!〉

〈何このイケメン〉

〈聞こえてる!〉

〈聞こえてるぞー〉

〈いい声〉

〈本物だ!〉

〈マジすげえ〉


「あー、リジェに加入しました。烏我 科戸です。どうせRimで名前バレするんで本名です。今後はリジェのRim部門のプロゲーマーとして活動していきます。よろしく」


〈よろしく!〉

〈Rimのプロゲーマーは本名多いよね〉

〈クール系だ〉

〈ニュースになってたもんなw〉

〈リジェを頼んだぞ!〉

〈かっこいい〉

〈よろしくなー!〉


「知ってる人は知ってると思うけど、実績で言えば元世界一位です。まあ俺のアカウント消えちゃったんで、ゼロからゲーム始めることになるけどね」


〈つよw〉

〈実績やばすぎ〉

〈元世界一位パワーワードすぎるw〉

〈運が良かっただけじゃね〉

〈スゴすぎる〉

〈期待してるぞ!〉


「ストリーマーじゃないんで面白いこととか言えないけど、多分?需要あるみたいなんで、基本的には配信の枠とってプレイするようにします」


〈需要ありすぎるだろ〉

〈いきなり死んだらカッコ悪いぞ〉

〈プロゲーマーにトークスキルなんて求めてない〉

〈どんなプレイするのか気になりすぎる〉

〈はよRimやってくれ〉


「まあ……なんだ。飽きるまで見てってくれ。以上」


 初配信の導入はそれくらいにして、早速Rimにログインしようと思ったが、そのタイミングで本國さんからチャットが入った。


「あー、忘れてた、はいはい、気になること多いと思うので、今から少しだけ質問コーナーやります」


 ただでさえ早かったコメントの流れがさらに加速する。そこから適当につまんでいく。


「なぜリジェに加入したのか? 本國さんの勧誘がしつこくて」


〈國ちゃんww〉

〈しつこい言われてるぞw〉

〈頑張ってたんだな!よっ、社畜の鏡!〉

〈國ちゃんのおかげなんだ〉


「コラボしたい人はいますか? すまん、この業界詳しくないから全然わからん。強いて言うなら同じチームの人かな。俺と戦いたいって言ってる人いたし」


〈絶対BURNOUTじゃんw〉

〈早すぎw〉

〈戦闘狂〉

〈レベル追いつくまでは対戦出来ないだろ〉

〈アホかな?〉


「半年前なにがあった? さあね、いろいろだよ」


〈教えてくれんのかいw〉

〈いつか聞かせてくれ〉

〈気になりすぎる〉


「ステータスってみせてくれますか? いいよ、でもこのゲームPvPあるから、ユニークスキル以外ね」


〈通常スキルはいいんだ〉

〈それはそう〉

〈死んだら終わりだもんな〉

〈めっちゃ狙われるだろーしね〉

〈ユニークスキル取れる前提ね〉

〈PK怖いね〉


 よし。こんなところかな。


「じゃあRim始めます。一旦カメラ切るよ」


 ああ、最後にひとつだけ、と言いながらカメラに顔をちかづける。これだけは言っとかないとな。


「今の世界一位の雲類鷲 蓮(うるわし れん)、お前まだ生きてるんだってな。半年前はお前だけ殺しそびれたが、必ず殺しに行く。必ずだ。腹括ってまってろや」


〈!?〉

〈!?!?〉

〈ええええええええ!?〉

〈やばw〉

〈大丈夫かこれ〉

〈國ちゃんこれ気絶してるだろ〉

〈やからで草〉

〈お前じゃ勝てねーよ〉

〈こわいこわい〉

〈いいぞもっとやれ〉

〈頼むレガリアに勝ってくれ〉


 コメントが阿鼻叫喚しているが、無視してカメラをOFFにした。ベッドに寝転がりヘッドギアを起動する。自分でも意外だが気分が高揚していた。


 さあ、Rimを始めよう。



 ※



「ぶぁっ!?」


 リアルタイムで烏我くんの初配信を見守っていた私は不意打ちにコーヒーを吹き出してしまった。


 秘書の朝霧くんも慌てて社長室に入ってきた。


「蓮くんはレガリアの看板選手ですよ!?」


「はは、ははは……」


 扉が空いたことで、事務所内のざわめきも伝わってきた。ぷるるるると電話が重複して鳴っており、オペレーターが対応に勤しんでいる。


 キリキリと痛む胃を手で抑える。


「だ、大丈夫、何とかするよ」


 レガリアとは、うちのライバルプロゲーミングチームの‘’Fallen Regaria‘’のことだ。この業界のナンバーワンの会社であり、ライバルとは言っているが近年飛躍が著しく、悔しいが差が広がる一方だ。


 胃薬を飲む。プラシーボで少し落ち着く。

 私は誰にも聞かれないように小声で呟いた。


「やってしまってくれ、烏我くん」


 とはいえすぐに各方面への対応を始めた。

 

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