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リアル・インテグラル・マキナ〜死んだら即終了のゲーム世界を死線突破の火事場スキルで無双する〜  作者: 雷蔵ててな
花守装甲蜂フロル・ビー・ガーディアン

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18/23

進化


「綺麗——」


 ボクは戦闘を見ているとは思えないような感想を抱いていた。


 でも、綺麗。

 そう、綺麗なのだ。

 

 花守装甲蜂《フロル・ビー・ガーディアン》は罠に嵌められると大量の花守蜂(フロル・ビー)を呼ぶ。少し前のアプデで追加された内容を復帰勢なのか彼は知らないようだった。

 

 流石に死んだと思った。


 花守蜂(フロル・ビー)の大群は嵐だった。

 本来なら人を飲み込み、引き裂き、押し潰すはずの災害。

 

 なのに彼は。

 その嵐の中心で。

 まるで踊っているように。

 

 一貫して花守装甲蜂《フロル・ビー・ガーディアン》だけを殴り続けていた。

 

 ありえない。

 レベル差は向こうが上。数も向こうが上。

 包囲されているのも向こうが有利なはず。

 

 なのに戦場を支配しているのは彼だった。

 

「……強い」

 

 無意識に呟いていた。

 強いなんて言葉じゃ足りない。

 あんな戦い方、見たことがない。


 ——ガィイイインンッ!!

 

 不意に、切りつけた時の音が変わった。

 目を凝らしてみれば、装甲が砕け始めている。


 花守装甲蜂《フロル・ビー・ガーディアン》にダメージが通り始めている。


 

※


 

 佳境だな。

 やってる事は割とヤバい。調子が悪かったら無理かも。

 客観的に見てもプレイ難易度がさらに上がったからか、システムが通知を寄越す。


————————————————————————

 スキルアンロック:

 回避強化

————————————————————————


 バフスキルだ。

 回避した後の十秒間攻撃力が上昇する。

 

————————————————————————

 スキルアンロック:

 パリィ強化

————————————————————————


 またきた。

 パリィした後の攻撃力が十秒間上昇する。


————————————————————————

 スキルアンロック:

 見切り強化

————————————————————————


 さらにきた。

 見切りした後の攻撃力が十秒間上昇する。

 

 ナイスだ花守蜂(フロル・ビー)。

 お前らが来てくれたお陰だ。


「キィイイイイイ!?」

 

 確実に。手応えが変わり始めた。

 俺の短剣が装甲に傷を付け始めた。


 俺は確信した。

 このまま戦い続ければ勝てる。

 

 しかしまだあのスキルは手に入らないのか?

 ここまでリスクを背負っているのに。

 このレベル差でなお足りないのか?

 


 ※

 


 ———なんだこの人間は?


 矮小な人間を前にして花守装甲蜂《フロル・ビー・ガーディアン》の心中は驚愕と危機感に満たされていた。


 最初は低レベルの雑魚だと思っていた。まだ初心者に毛の生えたくらいの、ボスと戦うには未熟で早計なプレイヤーだと。


 実際、攻撃は1ダメージしか喰らわなかった。

 確かにレベルの割に素早いが、装甲のような外殻を攻略するのに必要なのは俊敏ではなく単純な攻撃力、魔法力だ。

 

 だが違和感に気づき始める。


 こちらの攻撃が一向に当たらない。カスリもしない。

 腕を伸ばせば届きそうなほど至近距離に居るのに、何故か捉えられない。蚊のようにまとわりつかれて、得意な中遠距離の技が出しずらく不利な立ち回りを強いられる。


 一撃だけでいい。

 一撃でも入れられれば倒せる。


 花守装甲蜂《フロル・ビー・ガーディアン》も学んでいる。


 回避できないように攻撃に緩急を付け始めた。

 パリィできないように二段攻撃を混ぜ始めた。

 受け流せないようにフェイントを混ぜ始めた。


 だがそれでもこの人間は対応し続けた。

 ひとつのミスもなく。

 霞のように。


 掴めそうで掴めない。

 刺したと思えば届かない。

 拘束したと思えばそこにはいない。

 

 確かに視界に捉えているはずなのに、一瞬後には予測した位置からずれている。これはなんだ、なにかのスキルなのか?


 人間と目が合う。

 狩りをする強者の目だ。

 

 おかしい。

 なぜ低レベルなのにそんなに素早く動ける?

 花守蜂の群れの中で無傷でいられる。


 おかしい。

 なぜパリィや見切りでひとつのミスも犯さない?

 上手いでは片付けられない、自動防御機能でもついてるのか。


 おかしい。

 なぜだんだんと攻撃力が上がり続ける?

 

 1が2に。

 

 2が3に。

 

 装甲にダメージが通り始めた。

 最初は弾かれるだけだった短剣が、いつの間にか装甲を削り始めていた。


 ——当たれ!

 ——当たれ!!

 ——当たれ!!!


 また硬質化した外殻が砕ける。

 装甲片が飛ぶ。

 浅かった傷が深くなる。

 蓄積された損傷が確実に増えていく。

 

 戦いは長時間に及んでいた。

 そして遂に一撃も当てられないままHPが半分を下回った。


 まさか……——

 このままだと……負ける……?


 花守装甲蜂《フロル・ビー・ガーディアン》は初めて恐怖を覚えた。

 同時に未成熟なAIがこれまで抱いたことのない感情が芽吹く。


 本来ならとっくに優位を確立しているはずだった。

 レベル差も。

 ステータス差も。

 種族性能も。

 すべて自分が上回っている。

 

 それなのに。

 

 目の前の人間は、一度も流れを渡さない。

 攻撃を見切り。

 攻撃を誘い。

 攻撃を学習し。

 攻撃を利用する。

 

 AIの十八番だと言うのに、戦えば戦うほど強くなっているのは、むしろ相手の方だった。

 まるで自分が経験値になっているかのような錯覚すら覚える。


 ——それは、いやだな。


 ——悔しい、な。


 ——負けたく、ない。


 その瞬間、システムの声が聞こえた。

 

————————————————————————

 進化条件:達成

 個体名:花守装甲蜂

 戦闘解析結果:

 対象への有効打を確認できず。

 生存戦略を再構築します。

 防御性能を放棄。

 外殻装甲を分解。

 攻撃器官へ全資源を再配分。


 進化開始──


 『花守装甲蜂』

  ↓

 『花攻獣性蜂』


 特性変化:

 【重花装甲】消失

 【花守の盾】消失

 【獣性闘争本能】獲得

 【黒爪】獲得


 警告:

 当個体の攻撃性が大幅に上昇しました。

————————————————————————


 ああ、これなら———

 

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