アンサー
俺が前のアカウント喪失を受けて、今アカウントでは改善しなければならないと思っている課題がいくつかある。
一つ目はPPの振り方。
これは既に俊敏極振りでアンサーが出た。
二つ目は継続戦闘。
この課題のアンサーとして用意したのが調合、修正、工作の生産系スキルだった。これらを戦闘に取り込み成長させていけば解決できる……気がしている。
「試してみるか」
生産系スキルは商売のためにNPCが覚えている。
普通はNPC任せで、プレイヤーが覚えることはあまりない。
理由は保持スキルが多いほどスキル習熟速度が落ちるのが仕様として前提にあり、スキルはある程度剪定することが推奨されているためそもそも候補に入らないのと、大抵は戦闘中に使うには重すぎるデメリットがあるからだ。
スキル‘’調合‘’においては、鈍足とスキル使用不可。
戦闘中に使用するとまず死ぬと言われている。
だが俺は思う。
回避できないなら攻撃を全て弾けばいいのでは?
もちろんパリィなどのスキルが使えないから素の技量でだ。
使う材料は花守の蜜×火精茸。
「調合」
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スキルアクティベート:
調合
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途端、足が泥沼に嵌ったように重くなる。
この組み合わせの調合時間は五秒くらいだ。
〈え?〉
〈は?〉
〈なにしてんの!?〉
「キィイイッ」
毒針が唸った。花守装甲蜂の尾部が残像を引く。弾幕のような連続攻撃が来る。
キィン!
鋭い金属音。
右手の短剣が最初の毒針を弾く。
〈え〉
だが、それは始まりに過ぎなかった。
花守装甲蜂は巨大な複眼で獲物の挙動を分析し、わずかに軌道を変えながら毒針を撃ち込んでくる。
キィン!
二撃。
キィン!!
三撃。
キィイン!!
四撃。
スキルによる補正も、時間感覚の加速もない。
俺は視線は毒針を追っていない。
追えば遅れる。
見ているのは蜂そのもの。
翅の震え。
腹部のわずかな捻り。
装甲の隙間で収縮する筋肉。
発射の予兆だけを読む。
キンキンキンキキキキキン!!
加速した毒針の猛攻を捌き切る。
コツは針先が刃に触れる瞬間だけ角度を合わせること。
ほんの数度。
ほんの数ミリ。
タイミングが早ければ衝撃を殺せず、遅ければ毒針が肉を裂く。
完全なジャストパリィ。
しかも連続で。
〈全部スキルなしで弾けばいい(脳筋)〉
〈うん……w〉
〈なんでもありかよ〉
毒針の方が勝手に逸れているようですらあった。
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調合失敗:
ゴミ
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調合は作業台でやらないと成功確率が半減する。
将来的にはアイテムで緩和できるが今は仕方がない。
「もう一回だ」
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スキルアクティベート:
調合
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調合を発動させた直後、次に来たのは拘束攻撃だった。
回避必須。前衛殺しの防御やパリィができない類のそれ。
花守装甲蜂なりのアンサーなのかもしれない。
「キィイイッ」
俺は素早く後ろに後退して回避した。
どうやったのか、簡単だ。
花の潜伏者がドロップした脚装備‘’潜伏糸迅脚‘’で事前に張っていた糸を巻きとって、素早い動きの補助を行ったのだ。
〈糸きた〉
〈無理やり避けた〉
体感維持はかなりキツイが。
検証した甲斐があって転倒は免れた。
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調合成功:
火精薬
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よし。今度は成功だ。
だが思たよりも離れすぎたか。
空いた距離をすぐに詰めなければいけない。
「悠長に飲んでる暇はないか」
俺は完成した火精薬を花守装甲蜂に向かって投げつけると、追いかけるように駆けた。
火精薬は花守装甲蜂の頭部に当たって跳ねる。
「くれてやるよ」
火精薬の上から花守装甲蜂にスキル‘’ダガースラッシュ‘’をぶち込む。
当然、火精薬が割れて中身が飛散する。
被った俺と花守装甲蜂は攻撃力が上昇した。
〈何してんだ!〉
〈その体力なら関係ないけどさ〉
〈パーティでやられたら追放もの始まるぞw〉
どの道、俺のHPは1。
相手の攻撃力アップなんて関係ない。
それよりも火力が上がったことで、手応えがマシになってきた。特に難易度は高いが、装甲と装甲の隙間を狙った時にある程度のダメージは入っていると思われる。
〈でもまだ足りない〉
〈あ……武器が〉
〈壊れる〉
一段階ギアの上がった攻防。
先に音をあげたのは俺の短剣の方だった。
「限界だな」
刃は欠け峰には亀裂が走り始めている。
硬い外殻を容赦なく斬りつけているからか、武器の消耗度がもうレッドゾーンに突入した。このままだと破損する。
普通は別の武器に持ち帰るところだが生憎変えはない。
武器を失えば花守装甲蜂を倒すすべはない。
そこで役に立つのがスキル‘’修復‘’だ。
鍛冶屋で半日働くと習得できる生産系の基礎スキル。
このスキルはプレイヤーでも持ってるやつはたまにいる。
「修復」
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スキルアクティベート:
修復
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ポーチから砥石が一つ消費される。
調合と違いスキル行使は一瞬で終わった。
ただ短剣が修復中の淡い光に包まれている。
亀裂がゆっくりと閉じ始めている。即時ではなく修復は三十秒かけてゆっくり効果が進行する継続型スキルだ。
デメリットは三十秒間の武器使用不可。
正確には物理的に振るうことは可能だが、修復中に少しでも武器の消耗が進行すると修復がファンブルするのだ。
これがあるから普通のプレイヤーはスペア武器を持ってるものだ。たまに居る修復を覚えてるプレイヤーも戦闘が終わった後に落ち着いて修復する。
だが調合と違いスキルは使える。
パリィも見切りも使えないので、回避スキルで逃げ回る——だけじゃ当然、俺も視聴者もつまらないよな?
「おらァ!」
花守装甲蜂の近接攻撃を霞回避で対処すると、俺は短剣を握る拳で警告色の腹部を殴りつけた。
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スキルアクティベート:
ポイントストライク
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