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君が世界を救うと言うならば  作者: 菜々
第一章 南の街の物語
2/5

1.

説明多いです。飽きずについてきてくれれば嬉しいです!

 見渡す限りの大草原で、一羽の兎によく似た獣系モンスター「ザリスラビット」がもそもそと草をはんでいる。普通の兎と違って、長い耳の代わりに、長い足を持つザリスラビットは、逃げ足がとてつもなく速いことで有名だ。ちなみに、名前の由来は、この草原のかつての名前ザリス平野からきている。

 と、ふいに風切音がして、小さな矢がストッと小気味いい音をたてて突き刺さる

―――ザリスラビットのすぐ横の地面に。

 突然の矢の飛来に、驚いたザリスラビットは一瞬の後、消え去った。

 何も居なくなった草原で、しばらくして俯せていた人影がそっと立ち上がった。

「ちっ、また外したか・・・・」

その青年は、体に着いた葉っぱや土を払い落としながら、毒づいた。

 どうやら、先程の矢はこの青年が放った物のようだ。

 青年は近くに降ろしておいた矢筒を背負うと、矢を回収すべく歩きだす。


 ルーク•シュナイダーは狩人である。この世界では極めて珍しくなってしまった、黒い瞳と髪の持ち主で、無造作に髪を伸ばしている。

 木綿のシャツにズボン、背中に矢筒を背負う姿は狩人に見えなくもないが、はっきり言って弓の腕は素人――いや、それ以下である。

 今日とて、既に日は頭上高くに輝いているのに、捕縛した獲物は先程のザリスラビットよりもさらに一回り小さな、人の頭程度の兎一羽のみ。

 狩人業界の平均獲物数が一日6匹なので、半日でやっと一匹捕らえるルークの腕の悲惨さは酷いものだった。

 ルークの父親が、名のある狩人だったのは、二年前までの話。当時、16歳だった彼を残し父親は流行り病であっさりと死んでしまった。

 母親をとっくの昔に亡くしていたルークは天涯孤独の身となった。だが、それはこの世界では珍しい事ではない。

 大草原を必死に生きるモンスターたちが、時折《帝国》の壁を乗り越えやって来ては人間たちの殺戮を開始する日々。

 原因不明の流行病は、なんの前触れもなく襲来し人々の命を刈り取っていく。

 ここは、そんな世界。全ては、200年前のあの出来事から変わってしまった。


 かつて、この世界には200の大陸があった。海があった。人間たちの確かな営みが生み出す活気があった。笑顔があった。悲しいことも、辛いこともたくさんあったが、それでも生き物たちは健気に生きていたのだ。

 それは、ある日突然に終わりを迎える。

 一体、最初にその姿を見つけたのは誰だったのだろう。

 白い雲が浮かぶ真っ青な空に、現れたのは真っ黒な影。それは雲よりも、山よりも大きななにか。それは、大きな口を開き、世界に終焉を吐き出した。

 その神話上の生き物、ドラゴンはその息吹を持って世界を滅ぼし尽くした。

 大陸はそこにいた生き物もろともに崩れ去り、海は消え、あとにはたった一つの大陸と、広大な灰の海だけが残った

 その大陸が残ったのは、偶然でも奇跡でもない。ドラゴンはすべてを消した後、その大陸にある火山へと舞い戻ったと言われている。誰だって、自分の家を壊そうとする奴なんていない。つまりはそういうことだ。

 2660億人いた人間たちは、わずか500万人となり、唯一残った大陸で身を寄せ合って暮らしていた。いつか、再びドラゴンが目覚めることに怯えながら。



 ドラゴンが破壊したこの世界の生き物は、その息吹の影響で生態系が変化した。

 ある生き物は、長い爪や鋭い牙を持つようになり人々を襲うようになった。

 ある生き物は、その知恵で人々を惑わすようになった。

 そして、人間には一つの希望が生まれた。

 それは、《才能》。ある一部の人間たちはそれを神からの贈り物として、《ギフト》と呼ぶ。生き残った人間たちは、ほぼ全ての者が何らかの異能をその身に宿した。ほとんどの能力は、せいぜい日常生活で生きていくには役立つ程度のものだったが、ごく希に強力な異能を持つ者が存在した。彼らは、いつか人間が世界に返り咲くための希望となった。


 やがて、人々の恐れは現実となる。


 最初のドラゴンの襲撃から、172年後、今からたった28年前のこと。長い時をかけてもなお、人々の心に深く刻み込まれた恐怖を、煽るかのように奴は再び空を舞った。

 今度こそ、もう終わりだ・・・・誰かが言ったその言葉は現実に――ならなかった。

 ドラゴンは殺された。一人の青年の手によって。彼はその手にドラゴンの瞳だという青い石を携えて現れた。そして、ドラゴンは消えてしまった。人類は、その青年を畏怖と驚喜を込めて、こう呼んだ「竜殺し」と。



 矢を無事回収したルークは、少し休もうと水辺へと向かっていた。

 この世界には、川がひとつだけ流れている。名前はない。そもそも名前というのは、他の物と区別するために存在するものであって、たった一つしかないのなら必要のないものだ。

 その水辺には、ルークよりも先に一人の・・・・いや、一匹の先客がいた。そいつは、川のそばに生えている一本の木の上に潜んでいるつもりのようだった。

 「デビルモンキー」名前のとおり悪魔のような奇声を発し、油断している狩人たちを殺してはその荷を奪っていく、猿によく似たモンスターである。

 デビルモンキーのその特徴は、なんといってもその赤毛。なんでも一説では、仲間同士で争い合い血に染まったのだとか。その赤毛が木々の間から、ちょっこりと覗いている。

 バレバレなんだよ・・・・ルークは、腰についた革袋から、一つのある実を取り出した。

 ルトルトの実と呼ばれるそれは、狩人たちがデビルモンキー対策として、必ず持っている代物で、直接的なダメージは与えないが、割るとものすごい異臭のする果汁を辺に撒き散らすのだ。

 ルークは腕を振りかぶり・・・・投げた。実は確実に、木の幹へと命中するはずだった。幹まであと数十センチというそのとき。

 木が大きく揺れたかと思うと、ひゅんという鋭い風切り音が響き渡り、ルークの視界に映っていた赤毛が消える。


 すべてが収まった時、ルークの目の前には、一人の女性が立っていた。

――その美しい赤毛を、異臭を放つ液体に塗れさせて。

 女性の背後で、真っ二つに切られたルトルトの実が、ぽとりと落下する。

 草原中に、甲高い悲鳴が轟いた。


竜殺しメインではないです。

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