少年と少女
がんばって、完結目指します!
少年は走っていた。道すらない森の中を、ただひたすらに。少年の纏う服はあちこちが裂け、血が滲んでいる。
この世界では珍しい真っ黒な瞳には、何か絶対的なものへの怯えが浮かんでいる。
少年の首から下がる青い石に、木々の間から射す月光が反射し辺りに薄い輝きをばらまいた。その光さえも厭うかのように、石をぐっと押さえ付けた少年の耳に、数多の獣の鳴き声が聞こえてくる。
やがて、少年の目に映ったのは暗闇に溶け込み、襲う機会を伺う何対もの紅い目。
少年の唇が三日月形に歪み、その手の中で銀の光が煌めいた。
見張りの誰かがあげた声をきっかけに、にわかに辺りが騒がしくなる。
「おい、どうした。何があった?」
歴戦の老兵士は、ざわめきの理由を兵士にたずねるが、その兵士はどうやら新人だったようで、丁寧すぎる敬礼をしたまま固まってしまった。
(仕方ない・・・・)
「おい、そこのお前。一体どうした?」
「あっ、ええとですね・・・・どうやら人が倒れていたみたいでして」
「人・・・・? こんな夜更けにか? 夜の草原に出るなんて自殺行為じゃないか」
「は、はい。しかしですね・・・・それも子供のようなんです」
震え声で告げられる更なる事実に、老兵士は驚愕を覚えた。
草原は、夜になると昼より表情を一変し、魔物の巣窟と成り果てる。
「なんてことだ・・・・・・案内しろ」
「は、はい!」
兵士に囲まれ、その少年は倒れていた。10・・・・いや8歳ぐらいだろうか・・・・老兵士がその想像以上の幼さに目を見張ると、少年が小さく呻き、身じろぎしたのが窺えた。
「・・・・! おい、こいつまだ生きてるぞ! 早く救護班を寄越せ」
老兵士の声に、慌てて何人かの兵士が少年に駆け寄って行く。抱き上げられた少年がまた小さく呻き、手から何かを取り落とす。
(こいつは・・・・?)
老兵士が拾い上げたそれは、短い柄のついた血みどろのナイフで、刃はもはやボロボロ。使えそうになかった。
(しかし、あんなに小さな子供がどうして・・・・?)
老兵士が顔を上げると、そこには毎夜見慣れているはずの草原が広がっていて、ただ一つ違っていたのは、大小様々な塊があちらこちらに転がっている事だけだった。
それらは、急所を鋭いもので貫かれ絶命した、魔物の死骸であった。
少女は窓の外を眺めていた。その燃えるような赤い髪を落ち着かないように撫でながら。
少女はある人達を待っていた。
「すぐに帰るからな。いい子にして待ってろよ」
そう言って、彼女の頭をがしがしと力強く撫でて、少女の父親が出掛けたのは既に何時間も前のこと。いってらっしゃいのキスをした母親も未だ帰らない。
なんだか、お城の方が騒がしかったが、少女はそんなこと気にも留めず、ただ待ち続けた。
よろしくお願いします!




