詰め将棋 それも御膳立てされた
◆◇◆◇◆
「(でも、中々難しい話だなぁ)」
俺や王様周辺の人間は王女の持つ『何か』で言葉への信頼性は保証された。それは逆を返せば王女が居なければ言葉への信頼性は可変する。当たり前ながら今の一瞬だけでも忘れていたことだ
「(情報に飲まれそうになった…)」
自分にないものを切れるカードとするのは些か危ういな
『へ、陛下!お身体の方はもうなんとも!?』
『おう、バルサ伯爵
この通りなんともない。心配かけたようだな』
陛下も中々役者だな。体力を消耗しているはずなのにその気を全く感じさせない演技をしている。これ見よがしに胸を叩いて見せたがおそらく傷口に障ったのか肩が一瞬跳ねた
『そう…ですか。ははは
それはそれは。何よりでございます…』
あの挙動不審でさえ、上司には媚びへつらう人間の行動として辻褄が合ってしまう。例えどれだけ怪しく、危うく映ろうとも、前提知識がなければ周囲の者が味方につきかねないこの状況がかなり恐ろしい
『一時はもうダメかと思ったがな
フジノミヤ殿が機転を効かせ
たちまち毒を消してくれたのだ
いや、余は運がいい。危ないところだった』
バルサ伯爵が王様の発言を聞き、俺の方を憎々しげに睨みつけてくる。この表情も手柄の横取りを受けての嫉妬の表情に見えてくる
◆
『ショウタ…』
「スゥ様、ありがとうございました」
『手から血が…』
「手?」
『固まっておるが』
「これは治療のあとですね」
服の袖口が血。これは俺のものではない。王様のものだ
「後で洗わないと(公爵様方からの借り物なのに)」
『痛くはないのか?』
「僕のではないので大丈夫ですよ」
しまったな、寝ている間に固まってしまったか。後でお湯でふやかしてシミになってたら抜かないと
◆
「スゥ様、現場の保存ありがとうございます」
『ワイングラスは別のものに
取り替えてしまっておるが問題ないかの?』
「王様にも確認して貰っているので大丈夫ですよ」
しかし、グラスが玉座からなくなっているとなると方法が…って、玉座を見てみると、しれっとした顔で代わりのワイングラスが鎮座していた
「(え?どういう…)」
『リンゼという者にワイングラスを渡す時』
リンゼさんに振り返るとキョトン顔をしていたのでもしや、と思い辺りを見回しスゥ嬢を視界に収めた。彼女をただ静かにアイツを見ていた
『代わりの物を置いておいた』
「!」
公爵の血筋はどうしてこうも最適解を出してくれるのか。口角が上がって仕方がない───犯人自ら罪を語って貰おう




