俺ができる最善手・2/2
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「(ダメだ…打つ手があっても時間がない)」
王様に飲ませている最後の解毒薬の水面が床へと近づいていく様を見せつけられる。俺が何したってんだ?有頂天で活躍したツケが回ってきたとでも?
「(ミスした。ミスした。ミスした。)」
何か決定的な見落としをしている。一度ミスしたことで何か決定的な引っ掛かりを自覚した。しかし、それを調べる時間がない、整理する時間がない。薬の調合にも、本薬の調合も根本的に時間がたりない
「ふざけんな…」
俺は『禁忌』紛いの行為に手を伸ばそうとした。患者の生命を危険に晒しかねない行為に手を伸ばした。袋から取り出していたそれの栓を抜いた
それを王様に飲ませるべく解毒薬の代わりに咥えさせる準備を始めた。賭けに勝てば状態が安定し『特効調合』までの余裕が生まれる
「(このままなら、どっちみち死ぬんだ)」
揺れる解毒薬の水面が残り僅か
『フジノミヤさん!』
名前を呼ばれハッとして視線を移す。そこにはリンゼさんがいた。傍にはレイムさんがおり、彼が彼女を連れてきてくれたことが分かった
「リンゼ、さん」
『私、何をすれば良いですか?』
装いを若干乱し、肩で息をしながら仕切りに杖を握り変えている。不安の表れだ
「(スゥ嬢には頭が上がらないな)」
俺は薬に栓を差し、袋から薬の素材を取り出した
◆
スゥ嬢に現場の保存をお願いしつつ、王様を担ぎ上げ、彼の寝室に向けて走り出す。事態の収拾は九重さんとエルゼさんが行ってくれた。万が一にでも亜人の方々を殺せば問題になる
『フジノミヤさん、私、アンチドートは使えません
それに…毒には、毒には回復魔法は逆効果です』
「理解してます。俺がリンゼさんに頼みたいのは
俺の今からすることの後始末です」
レイムさんに道案内をして貰いつつ、王様の寝室へと到着した。俺は紳士服を脱ぎ捨て、王様の衣服をできるだけはだけさせ、腹部を露出させる
感染症のリスク以上に今解決すべきこの状況への俺の最善手は───考えうる抗菌を部屋に施していく、薬の素材の中でも特に抗菌能力を持つ種類を燻したり、吊るしたり、部屋を抗菌仕様にしていく、ないよりはマシだろう
止血薬を袋から取り出して、ナイフで徐に王様腹を突き刺した
『フジノミヤ様!何をなさっているのですか!!』
レイムさんに掴み掛かられそうになったものの、もう説明してる余裕はなかった。胃に溜まった解毒薬と毒薬の排出、これを早急に行わなければ王様の体内で毒が全身に回る
レイムさんを九重さん、リンゼさんが抑えてくれているうちに胃の中から先の祝賀会で王様が飲み食いした物や胃液を掻き出す
『うぅ…』
「リンゼさん、『水』を」
『は、はい!』
胃の中の物を掻き出し、内部を水で洗い流す。ワイン、食事、胃液、血液でドロドロのシーツを裁断し、金属桶の中に移す
指が焼けるように痛い、見れば指が赤くなっている。洗い流さなければもっと酷くなるだろう
「(解毒薬で手と傷口の洗浄)」
残っていた手持ち全てを動員して王様の傷口を閉じていく、裁縫道具が特に役に立った
「リンゼさん、回復魔法を」
『は、はい』
針を引っ張り、傷口をできる限り近づけその隙にリンゼさんの回復魔法でこれを閉じていく、これで体内に残った毒の排出と解毒ができれば峠を越えられる
『フジノミヤ殿!』
安堵しているとレイムさんに取り押さえられた、もはや抵抗する余力なんてない。しかも王様に剣を突き立てたんだ受け入れよう
『お嬢様からの信頼を踏み躙るおつもりか!』
「リンゼさん、『炭』と『給水』を」
弁解に割く余力はない。身体に残った毒素を排出しなければと残った意識でリンゼさんにその想いを託した。指の痛みでさえ訪れる睡魔に勝てる気がしなかった
『フジノミヤ殿!』
『フジノミヤ!』
『フジノミヤさん…』
三者三様の呼び方を受けつつ、意識はそのまま水泥みへと沈んでいった




