社交界に潜む影の存在
◆◇◆◇◆
『ショウタ、今宵お主らを呼んだのはな』
スゥ嬢の後ろをついて回る途中、彼女の雰囲気が変わった。今話してるのは公爵家のスゥシィその人だった。いつもの人懐っこい仕草とは違う、何処か視線の先が未来を見据えているそんな雰囲気を纏った少女が俺に言った
『国王の護衛を頼みたくて呼んだんじゃ』
「何故私達なんでしょうか?城の兵士の者は」
『今、国王が抱えている問題は
かなり複雑化してるのじゃ、国王直下の兵で
あっても一枚岩ではないのじゃ』
「それは中々厄介ですね」
『長年無視されていた問題の解決や
新しい流通網の確立、ひとつでも
ことを荒立てるのに十分すぎる話題なのじゃ』
「(優秀なのもまた敵を作る要因になる、か)」
◆
『フジノミヤ殿!』
歩き続けていると九重さんが視界に入ってきた。普段のイーシェンの装いをそのままに羽織りが一枚追加されており、シンプルながらに色の纏まりと強調が一際増していると感じた
『ショウタ、くれぐれも頼むぞ』
「できる範囲で全力を尽くします」
別れ際、スゥ嬢が俺に言った。何を期待しているのかわからない。俺は別に優秀ではない、天才でもなければ、努力家でもない、ほんの少しだけ知識の幅が広く、早熟なだけ───五万といる中の凡人中の凡人
「スゥ様」
『なんじゃ?』
「もしもの時は不遜な私めにどうかご助力を」
しかし、期待されたのであれば答えるのが常だ。足りない部分は他人に補って貰う。俺は公爵然としたスゥ嬢に頭を下げた
『うむ、頼むぞ』
◆
『フジノミヤ殿?スゥ殿と何を
話していたでござるか?』
「今日の祝い事はかなり複雑な事情があるみたいです」
九重さんに腰の刀が重要になるかもしれないという意味を込めて俺は自分の腰を二、三度叩いた。九重さんは柄を持ち、やや上げてそれに応えた
『なれば拙者も不届きものを
切って伏せるのみでござるな』
「できるだけ相手が喋れるようにね」
『承知』
◆
『馬子にも衣装ってやつね』
『何をぉ〜』
エルゼさんとも合流した。エルゼさんは持ち前の銀の頭髪とドレスの銀での統一感があり、普段の攻撃面を前面に押し出した装いと比べ、意外な一面という感想が出る程に美しさがあった
髪型も普段の流しではなく束ねているのも普段とのギャップも魅力のひとつだと個人的に思う
2人が仲良く喧嘩している間に通された会場を一周───それとなく確認し、隠れられそうな箇所、死角になる場所に目星をつけておく
『何をやってるのよフジノミヤ』
「少し頼まれごとを受けたので」
俺のそんな様子を不審に思ったのか九重さんと取っ組み合いになっていたエルゼさんが俺の行動を指摘した
『頼まれごとねぇ、さっきの公爵様から?』
「そうなりますね」
『こんな時にまで大変ね』




