スゥと祝賀会まで
◆◇◆◇◆
昼になり、リンゼさんは体調が優れないとのことで別行動となった。街の手伝い(黒依頼)をしながら傷の痛みが和らいだ頃、協会から呼び出しを受けた
何かやらかしたかと思い記憶を遡っても詰められる箇所が思い浮かばないものの取り敢えず足早に向かうことにした
『何やらかしたのよフジノミヤ』
「いや全く身に覚えが…」
『恐らく、あの方でござる』
「…あ〜なるほど」
『何よ2人だけで納得して』
◆
『九重!フジノミヤ!』
「スゥ様…」
『スゥ殿ぉ!』
協会に着くとそこにはレイムさんとスゥ嬢が居た。真っ先に駆け寄りスゥ嬢を抱き上げる九重さんは度胸があるというか、随分と仲良くなっていることに驚きが隠せない
『元気にしていたでござるか?』
『うむ、九重も元気そうじゃな』
「お元気そうで何よりです」
『フジノミヤもな』
スゥ嬢と挨拶をしているとエルゼさんが気まずそうな表情で俺を見ていた
『フジノミヤ、この人は?』
「この方はスゥシィ・エルネア・オルトリンデ様」
『お、オルトリンデって』
『そこなものは初顔じゃな。フジノミヤと九重の
友人とあらばわらわの友人、よろしく頼むぞ』
「公爵家、オルトリンデ公爵の令嬢様です」
腰に手を当て真っ直ぐとこちらを見るスゥ嬢は年相応の笑みとそれに似合わない肩書き、肩書き通りであれば厳かな立ち居振る舞いを想像していたのだろうエルゼさんは唖然としていた
『なんであんた達はそんなに平然としてるのよ!』
『スゥ殿にそう言われたでござる』
「スゥ様たってのお願いだからとしか」
◆
スゥ嬢が用意してくれた馬車に乗り込み、俺達は揺られながら貴族の居住区まで強制連行されつつ、あの時同様にお伽話を話すことになった
『フジノミヤ、冒険者引退後は
詩人として雇われる気はないかの?』
「それもいいかもしれませんね」
『本当か!』
俺が今すぐにでも辞める様な喜びっぷり喜べばいいのか、否か
『…』
「エルゼさんどうしましたか?」
『平然と膝の上に公爵の令嬢座らせて
どうしたもこうしたもないでしょ』
馬車に最初に乗ったスゥ嬢とレイムさん、俺、九重さん、エルゼさんと座った直後に俺の膝の上にスゥ嬢が座り直したのだが、何故
この状況に一番疑問符を持ってるのは俺だと思ったものの、この世界でもこの行為は非常識に分類される様で全員同率タイで疑問に思うこと間違いなしな時間であった
『スゥ殿、何故フジノミヤ殿の膝に?』
『話を聞く時に対面であると声が届き辛いのじゃ
前のめりになるのは淑女としては下品故
父上と話す時を真似したと言ったところじゃな』
何故レイムさんが止めないのか疑問ばかりなものの次の話をせがまれたので話は有耶無耶になり空中分解した
◆
冒険者としての装いはあまり好ましくないとのことでスゥ嬢に招かれ公爵邸にて俺たちはドレスコードを整えていた───正装はスーツではなく紳士服と呼ばれるものだった
『フジノミヤ?』
着替えを終えた直後、ノックの後、扉の先からスゥ嬢の声が聞こえた
「はい、なんでしょうか」
『フジノミヤは家名を持ってないのか?』
藪から棒になんだろうか
「フジノミヤが私の家名ですよ」
『そうなのか?何故名前を伏せるのじゃ?』
ん〜伏せているというより
「名乗り方がイーシェン由来なので
名前と誤解されているんですよ」
『名前…』
「はい?」
『名前を教えてくれぬか』
スマホを取り出し、作法をサッと確認し、扉を開けた。そこには普段の色合いよりやや明暗のハッキリ分かれた少しばかり背伸びをした色合いのドレスを優雅に着こなすスゥ嬢が居た
俺は片膝をつき、スゥ嬢に手を差し出した。スゥ嬢はそれの意味するところを理解している所作でそれを受け入れてくれたので手の甲に触れるか触れぬかの口付けをして、俺は名乗った
「名乗り遅れて申し訳ございません
私の名前はショウタ。ショウタ フジノミヤ
と申します」
◆
『相変わらず、堅っ苦しいのじゃ』
はにかんだ様な呆れた様な様子のスゥ嬢がそう言った。俺はスゥ嬢が手を引いた後に立ち上がり言った
「性分ですので」




