九重との屋台巡り
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すっかり陽の落ちた日のこと。眠気に伴ってベッドに横になり、スマホで調べ物をしていると借宿の扉が勢いよく開いた。徐々に増していた眠気による意識の沈みが徐に引き上げられた
『フジノミヤ殿〜♪夜市!夜市でござる』
「…」
『スマホを頭の上に置いてどうしたでござるか?』
鼻が"ツーン"とする痛みを飲み込みつつ、スマホを翻訳にして九重さんの話を聞くことにした
◆
「なるほど、祝賀祭ですか」
『そうでござる、外の景色がそれはもう見事な
屋台立ち並び、昼が如き盛況で!』
「では、周りますか」
『本当でござるか!』
◆
「(料金が良心的だ)」
『〜♪』
行き交う人に極力ぶつからないように彼女の後ろをついて歩く、思い出す───幼い家族を後ろから見守り、時折宝物を見つけた時の様に駆け寄ってくる。そんな光景を
『フジノミヤ殿』
「(何というか、懐かしいな)」
食事の出店中心の中でも宝飾品の類いもちらほらとあるもので少し良さげなものが目に留まるものの九重さんはどちらかといえば出店の食事に興味津々で走り回っていた
『フジノミヤ殿!』
両手に串焼きを掲げる九重さんは戦闘時と比べて幾分が幼く見え、そして薄れゆく記憶のカケラに僅かな照り返しを生じさせてくれた
「両手に、持っても口はひとつですよ」
『そうでござるよ。はい』
「え?」
『フジノミヤ殿の分でござる』
「そっか、なるほどね」
差し出された串焼きを受け取り口にする。タレの独特な甘味と塩味の塩梅がふと、口悲しさを思い起こさせる。米を練り潰した物にとても合いそうだった
「(名前、思い出せないな)」
『フジノミヤ殿?美味しくなかったでござるか?』
「いえ、とても美味です。もうひとつ買いましょう」




