魔法の適性、魔法道具の完成
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『えっと…では、始めます』
リンゼさんが宣言する。いざ試作品の実証実験。とは言ったものの魔力を込めてもらうだけなので俺たちは何もできないのだが
早速新しい発見、収穫があった
『エルゼ殿は魔力の放出が不得手なのでござるね』
聞くにエルゼさんは『無属性魔法』を使うとのことだった。魔力を『ブースト』と言う身体能力強化に充てるため、リンゼさんと違い大概に魔力を放出する感覚が掴めないんだと
教本に書いてあった『魔力操作』と言う分野だろうか。俺もその辺りが曖昧なのでなんとも言えないが───魔力は万物に宿るとされているので俺にも魔力があるのかも知れない。それでも『適性』の壁で『属性』なるものを有する魔法は使えないだろうけど
『そう言うあんたは魔力もろくに扱えないじゃない』
エルゼさんと九重さんがまた喧嘩を始めた。反りが合わないわけじゃないけどどこか余計な一言がくっついている双方。喧嘩の仕方がやや危なっかしい印象を受けるが怪我しなければ放置する
喧嘩をしないことが1番だが、喧嘩からしか得られない経験というものがある。当たり障りのない絆なんて竹の根のように浅いものだ
『え?あの、終わりました』
そんなやりとりを聞きながらリンゼさんを見ていると何やら困り顔でこちらに視線を送ってきていたので小走りで近づきスマホを取り出す
「どうしましたか」
『いえ、魔力の充填が終わりました』
「なるほど、疲れなどは?」
『いえ、ありません』
「では他の牙にもお願いします
疲れたら言ってくださいね」
『あ、はい』
◆
『これで最後』
「お疲れ様です」
魔力の回復には休息が必要とあり、運動後のケアを真似て、水を手渡す
「気分が悪くなったりしてないですか?」
『ありがとうございます。特には』
聞いていた話と全然違うが速い上に体調不良にならないのはいいことだ
『あ、あの』
「はい?」
『どうして牙に付与をしようと思ったんですか?』
どうして、どうしてか。シンプルに
「できるか気になったからですかね」
『変なの』
「そうですよ。俺は変わり者です」
『あ、その、変な意味じゃなくて、その
男性の冒険者は何処か威圧的?といいますか』
なるほど?でも物腰柔らかい人なんてそこら中にいるだろうし、恐らく指標があの男2人なのが原因かな
「ん〜そう言ったことをして俺に利益が
生まれないからですかね」
丁寧に対応すれば丁寧な返事が来る。仕事の場においても駆け引きはあるだろうけど、新人や交渉人がまず最初に差し出せる安価なカードが『礼節』だ。初手の印象が良ければ良いほど後々の行動にも信頼が生まれるというものだ───ザナックさん曰く
『なるほど』
◆
『おぉ、確かに硬いでござる』
強度増加の効果は素材となるものの元々の硬さを上げるとあったが改めて手に取った牙は削った時と比べ、再び削れと言われても道具の方が先にダメになりそうなほど硬くなっていた
『これ、何の役に立つの』
投擲か、ノミとして使えるか?そうなると予め形を整えておく必要がありそうだ。術式の抱き合わせであればもっと活用の幅が増えるかな
『ちょっと?』
『フジノミヤ殿』
九重さんに呼ばれ視線を上げるとエルゼさんが不機嫌な様子で俺を睨んでいた。何だ?スマホを取り出して聞いてみるか
「どうしました九重さん」
『この牙は何に役立つのかとエルゼ殿が』
「あ、すみません」
『あんたのそれ便利なのか不便なのか
分からないわね』
◆
強度を確認するためにエルゼさんに『ブースト』を使って貰い何度か攻撃を叩き込んでもらった。重撃の嵐───素早い足捌きと拳の引いて放つまでの動作の短さから繰り出されるラッシュが牙へと叩き込まれる
が、それでも牙は原型を止めており、響は入ることはなかった
『何かに使えそうでござるな』
『何ニヤついてんのよ』
『何のことでござるか?』
『あんたもやってみなさいよ』
『ふむ、フジノミヤ殿』
「ん?はいはい?」
エルゼさんと話していた九重さんに呼ばれた気がしたので視線を落とすと
『斬って、宜しいか』
手刀で空気を切る動作をした九重さんからいつもの覇気を感じたのでもしや喧嘩に刀を?と思いスマホを取り出す
「エルゼさんを斬ったらダメですよ」
『違うでござる!』




