魔法使いと格闘家の姉妹
◆◇◆◇◆
『フジノミヤ殿、誰か来たでござる』
復習がてら魔法の手引きを読み直していると素振りをしていた九重さんから報告を受けた。宿屋の裏手は人の出入りが殆どないことを考えると依頼を受けてくれた人だろうか
「…(あの子たちは)」
容姿のよく似た2人が来た。姉妹だろうか。ザナックさんから聞いて知識が増えた今だから分かるコーデ、上半身は黒を基調にした上着と白いブラウスという姿で二人ともほぼ共通であったが、髪型がロングの子はキュロットに黒いニーソックス、ショートの子はフレアスカートに黒のタイツという差があった
『あなた達が依頼主?』
見覚えがある、路地裏で問答を繰り広げていた女の子2人だ。協会に登録したんだ
『お姉ちゃん、この人』
『光る箱の魔法道具持ってるし』
「それじゃあ、仕事の内容を…」
『あ!あの!』
『フジノミヤ殿、呼ばれてるでござるよ』
「え?なんだろ?」
報酬の交渉かな?手持ちはあるし別に無茶じゃなければ別途成功報酬を渡してもいいけど、俺はスマホを取り出して話し始める
「なんでしょう?」
『あの時仲裁してくれた人ですよね
あの時はありがとうございました』
『フジノミヤ殿?何かしたでござるか』
「多分」
律儀な子だ。おじさんこういう丁寧な子には好感が持てる民なんだよな。是非任せたいが何やら困った様子を見せている
『えっと…それで』
「2人とも依頼を受けてくれた感じかな?」
『え、あ、その』
『そうよ。あたしはエルゼ・シルエスカ
こっちは双子の妹、リンゼ・シルエスカよ』
「エルゼさんにリンゼさんですね」
家名での判別が効かないので仕方なし、名前で呼ぶことにした
「立ち話もなんですので
食事でもしながら依頼の詳細について
説明しますね」
『分かったわ、リンゼもそれでいい?』
『うん』
◆
宿屋『銀月』に戻り、食事を注文しつつ、試作品への魔力供給を依頼内容としている旨を話した。リンゼさんもエルゼさんも魔法が使えるとのことなので問題はなさそうだ
そんな依頼の話がひと段落するとあの日の夜に何をしていたのかについてエルゼさんが話だし、九重さんと俺は食事をとりつつ、しばしば耳を傾けることになった
『私たちあいつらの依頼でこの町に
水晶鹿の角を届けにきたんだけどね
なーんか胡散臭いなーとは
思っていたんだけどさ
ちょっとしたツテで水晶鹿を倒して
その角を手に入れてたから
欲しいって聞いて、ちょうどいいやって…』
『私は反対したのに
お姉ちゃん、言うこときいてくれないから』
目の前で謗りあう姉妹に家族の面影を感じつつ話を整理する
◆
・聞くに何かしらで水晶鹿の角を入手
・処分に困っていた
・2人組の男が角を必要とした
・依頼の交渉場にリフレットの路地裏を指定され
・リフレットの町であの夜に至る
◆
あの男2人も協会所属なのだろうか、採取依頼を二重依頼した可能性も考えられるな。狡いことを考える
『不用心でござるな』
『…そう言うあんたはどう言った経緯で
その男と居るのよ』
咽せる九重さんにタオルと水を渡す。痛いところを疲れたな
『それは〜アレでござる。用心棒として』
「(露骨に避けたな)」
『大方、空腹で倒れていたところを
助けられたんでしょうけど』
『なっ、何故分かったでござるか!』
『あんたの食い意地見てたら分かるわよ』
『むっ、その口の悪さ、リンゼ殿の
心労お察しするでござる』
『何を…』
『なんでござるかぁ』
売り言葉に買い言葉、険悪な雰囲気になりつつある。武器を抜いてないからまだ問題ないが宿屋に迷惑をかけるものじゃない。俺は匙を置いた
「2人とも程々にね」
『お姉ちゃんも』
『…分かったでござる』
『はいはい』
理性的で助かる。エルゼさんのストッパー役がリンゼさんなのだろうか、構えていた盾をおき食事に戻る
◆
『あんたよく食べるわね』
『腹が減っては戦はできぬでござる』
『名前の響きといいその変な言い回しといい
八重はイーシェン出身かしら』
『いかにも。イーシェンのオエドから来たでござる』
先までの険悪な雰囲気はどこへやら、早めの昼食を終え、雑談に移った。頃合いを見て仕事に移るとしよう。相手方も依頼の達成がメインだろうし、あまり引き留めては酷だ
『フジノミヤさんもイーシェンですか?』
「いや、似ているけど違う国から来たよ」
『そうなんでござるか!』
『なんであんたも驚いてんのよ』
あまり詳細を明かしてなかったなと思いつつ、深くは話さなかった。話したところで意味はないし、何より俺がそれをあまり覚えていないと言うのもある




