穏便に行こうぜ、俺は寝たい
『痴話喧嘩』───眠らない花街夜通し灯りがついた深夜や明け方まで営業が続くきらびやかな歓楽街や遊郭。そんなところでは男女の絡れなんてよくあること。それを揶揄った言い方の方
◆◇◆◇◆
「あ?」
下の階のどんちゃん騒ぎかと思い、目が覚めた
しかし、そうではなかった。この騒ぎ方───真っ暗な部屋の中、人がぐっすり寝てるっていうのに言い合う男女特有の騒がしさだ
起こされた。その一点だけで俺はとても不機嫌になれる。無条件で心が安らぐ時間を邪魔した。この騒がしさは地元の繁華街での「あれ」を思わせる煩さだ
「痴話喧嘩か?」
◆
「ふぁ〜あ、っとと」
階段を踏み締めつつ、一階の食堂兼酒場はまだ火が消えていない様子だった
「さて」
痴話喧嘩の末に刺殺事件なんてのを見逃せる程、薄情に成れず、町を散策に出る
こういう時、大抵警察が周辺の聞き込みにやってくる。そうなればアレやコレやと聞かれてせっかくの眠気が明後日、明々後日へと伸びに伸びてしまう。それだけは絶対に避けたい
◆
「(寒いな)」
番組支給の服も着心地は問題ない。しかし、如何せん半袖というのがこの環境に合っていない。服屋に行かざるを得ない状況を演出したいのか知らないもののかなり意地悪さが垣間見える
「(お?花街)」
既視感のあるそれに興味を引かれるが、痴話喧嘩の信憑性がグッと増した視線を彷徨わせればこちらを見る視線が視界をチラつく
不審に思ったのか?お前のことなんざ見てねぇよ。自意識過剰も大概にしろっての
◆
「(にしても物騒だな)」
暗い町に歩く人を見ていれば、物騒なものをこれ見よがしに携帯している人が大半をしめていた
剣や斧、短剣に鞭まで様々だった。凝ってるなぁおい、物騒ではあるが何製だろ、俺も買いたい。でも日本じゃ銃刀法に引っかかるなと思いつつもふと通り過ぎた鞭に思わず振り返ってしまった
「(鞭はねぇだろ、中世を何だと思ってんだ)」
そんなことを考えながらも歩き続けると騒がしい小道を見つけた。大通りの外れながらも大声の反響する、裏路地、悪いことをするなら絶好の薄暗さ
まさか、薬の売買で揉めてるとか、なにかかと考えたものの言い争うような声が途切れ途切れに聞こえてくるため好奇心が刺激された
「(行ってみるか)」
そうして俺は裏路地へと足を踏み入れた。クスリなら止めるべきだし、事件なら止めなきゃ安眠妨害待ったなしだ




