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宿屋の"とこ"の上、ぐっすり満喫

マブいとは、主に1970年代から80年代で使われていた若者言葉。「容姿が美しい」「可愛い」「魅力的」という意味で使われる俗語。漢字で書くと「まぶい」となる。業界用語がルーツなのだとか

◆◇◆◇◆


「(先ずは寝床探さないと)」


 やらないといけないことリストを仕上げ、まず最初に食事処か宿屋を探すべく歩き始めた


 裸足で外を歩くのはいつぶりか、慣れない感覚を受けつつ『検索』して最も近い宿屋に向かった


 名前は『銀月』と言う宿屋だ。食事処兼任らしく、三日月の看板が目印っていうのもわかりやすく覚えやすいため即決した



「(耐震構造?中世に?

 設定むちゃくちゃだな)」


 見た目は三階建ての建物で、けっこうがっしりとした作りに見える、建物の構造、柱の位置から地震がある設定なのかと勘ぐったが設定止まりなら気にするだけ野暮ってものだと割り切った


 崩れなければいいし、何より料金はそこそこでも寝具が良く、美味い飯が食えれば文句もない。意気揚々と両開きの扉をくぐった



「『聞きなれない言語』」


 一階は食堂兼酒場の様で入ってすぐの喧しさと言ったら重機の駆動音を彷彿とさせるものだった


 バーカウンターに上階への階段が見えた


『いらっしゃいませ

 食事を希望ですか

 それとも宿泊を希望ですか?』

「宿泊をお願いします」



 バーカウンターにいた女性に応対をして貰いつつ宿泊の手続きを進めていく、スマホを向けると不思議そうな顔をされたが俺の続く行動に驚きつつも対応を続けてくれた


「一泊いくらですかね?」

『この宿屋は一泊

 朝昼の食事付きで銅貨二枚です

 前払いです」


「金貨から」

『50泊を希望ですか?』


 赤毛のポニーテールがよく似合う、溌剌とした女性が確認を兼ねて聞き返されたので取り敢えずひと月を希望した


 金貨1枚を渡し、お釣りに銅貨で40枚返してきた



『ここに署名をお願いします』


 何気にスマホに助けられて草も生えない。これがなかったらと考えると途方に暮れていたこと間違いなしだった


『フジノミヤ ショウタですね

 荷物の保管は保証していませんので

 気をつけて下さい

 食事は直ぐに提供できます』


 そう言って裏に回った従業員の目を盗んで、帳簿の俺の名前とその隣に書かれた物を『写真』に収めた



『どうぞ』


 食堂の席に着くとロールパンに肉入りのスープ、そしてサラダの様なものが運ばれてきた


「(なんか朝食みたいな献立だな)」


 しかし、口に運べばそんなことは気になることはなく初めて食べる味ながら香辛料での誤魔化しや量だけの食事ではなく一安心だった


 何処かの郷土料理なのだろうかと考えながら食べる内に皿の中身は悉く空になっていた


「(追加でなんか頼も)」



 食事を終え、鍵を受け取り、階段を上ると鍵の番号と照らし合わせ、3階の一番奥の部屋の扉を開けた


 六畳くらいの部屋にベッドと机、椅子とクローゼットが備え付けられており、窓を開けると、宿の前の大通りから少し脇道に逸れた場所が眺められた


「金貨が後9枚か」


 夜の静けさに耳を傾けつつ、所持金の確認を始める。あの後続けて食事をした結果、銅貨の下に錫貨があることを知った


「(この番組中の財布は分厚くなるだろうな)」


 スマホでこの番組が放送されているのかは確認できなかった。それでも時計も情報も確認できたことが幸いだった───制作前なのか、はたまた情報統制がしっかりしているのか定かではないもののこのクソみたいな茶番がいつまで続くのか、とてもじゃないが測りかねる


「(それでも食事はできるし

 寝床もあるしなぁ)」


 財布やカードを取り上げられ、挙げ句の果てに身ぐるみ全部剥がされた時はどうしようかと思ったものの、ザナックさんの計らいにより金銭には余裕がある


 しかし、問題なのはアプリの大半が使用不可になっていたことだ。完全ダウンロード版ならいざ知らず、ソシャゲーなんかはうんともすんとも言わなかった


「(連続ログインボーナス完全に終わったな)」


 番組の意図するところが分からない以上、こちらはのらりくらりと躱し続けようと思った



「金貨9枚を全部使えば450日

 一年と少しでも食っちゃ寝できるんだ

 相手の予算いっぱい後悔させてやる」


 建物や規模を見るに相当な金額が使われていることは明白だった。ならこんな非常識なことをしたツケを予算に刻みつけてやろうと思い硬貨をポケットに突っ込みベットに入った


 反発性は低いものの畳で寝むるのに困らない性分なため固さは気にならなかった。何なら本当に1年ここで寝るのもアリだった


「(てか、ゆっくり休めるのっていつ以来だろ)」


 今日一日で起きたことに比べれば日々の暮らしの何とも凪なことか、心地よく、今夜はぐっすりと休めそうだと目を閉じた

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