初めての魔法道具の作成
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「…」
タイガーベアは虎模様をしている大きな熊だった
構えた盾に噛みつかれ湾曲した円錐状の牙───更新世末期に存在していたとされるサーベルタイガーと呼ばれる生物のそれによく似ている形状のそれが手首付近まで迫ってきたのには冷や汗が止まらなかった
『はぁ!』
体格差による一挙手一投足が致命的な威力を放ってくるのを身一つで抑えるなんて無理だ。その反面、タイガーベアの噛みつきは受け止めさえすれば、本来高い位置にあり手の出しづらい首を下ろさせることができる
盾を新しくしておいてよかったと本当に思う
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いきなり襲いかかってきたときは驚いたが、岩場に生息している以上模様の持つ迷彩効果が死んでいるも同然だった。俺が『衝撃吸収』で受け止めしな、九重さんがその首を斬り飛ばした
「(牙だけなんだよな)」
飛んでいった首から倒した証として、討伐証である牙を2本1対で取り、指定数までこれを続けた
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「どうぞ九重さん」
『ありがとうでござる』
取り出した非常食を九重さんに渡しつつ町まで帰る徒歩の道すがら馬を飼うのも良さそうだと考えた。しかしながらやはり生物を飼うことの大変さが出てくるため踏み切れずにいる
食費はその日仕事をするだけでも稼げるためそれ程苦にはならないがどうしたものか
『難しい顔をしているでござるな』
「うん?あぁ、大丈夫、ただの考え事だから」
九重さんが顔を覗き込んできた。彼女がいれば馬の世話は問題ないだろうから一考の余地はありそうだが、う〜ん
◆
協会に着く頃には夜になっており、牙を提出し、依頼完了。銀貨12枚を手に宿屋へと戻る
このどんちゃん騒ぎも懐かしい。一階の酒場で軽めの食事と飲み物を手に祝賀会をした。位が上がったこと、出会い、そして今日生きているということに対して
「乾杯」
『か、乾杯!』
ビールの良い香りが強かったが明日も何か依頼を受けようかと思うので飲酒は控えて就寝へと至った
◆
「…うん?」
俺は癖のせいでいつも太陽より早く起きてしまう。台所はないというのに仕事前に朝食と弁当を作ろうとする体の癖は何というか。唯一残された向こうの世界の名残のように思えてモヤっとした
「(そうだ)」
気晴らしに魔法道具の作成に手を出してみた。魔法の手引きの後半部分にある内容を読み進め、その内容を復唱する様に手を動かす
「…」
ツールボックスから針や木槌を取り出し、換金しなかったあぶれ物のタイガーベアの牙の加工を始める。柔らかいとも硬いともつかない感触に型抜きを連想させる
『フジノミヤ殿、いつまで…って起きてたでござるか』
危うく手を滑らせるところだった。彫刻道具が指に当たりかける寸前で停止が間に合い安堵する
「ノック、しようね九重さん」
『ご、ごめんでござる』
俺は扉を全力で開けて入ってきた九重さんをじっと眺めた
◆
本を参考に牙に術式を模写していたのだがこれが中々難しいのなんの、術式なるものを道具に書き込む上で物理的なものと魔法による術式の付与があり、俺は当然ながら魔法が使えないため物理的に刻んでいるのだ
牙の独特な強度と形状に四苦八苦しながら彫り終えた。さて、これどうしようか
「そういえば」
スマホを起動し、九重さんに聞く
「九重さんは魔法って使える?」
『全く使えないでござる』
マジか、これが成功しているのかの確認ができないのかぁ。仕方ない
「依頼、出してみるか」
『依頼を出す?受けるのではないでこざるか?』
俺は牙を見せながら言った
「うん、これが成功していれば
後々役に立つかもしれないからね」
『なるほど、それにしても
丁寧に彫ってあるでござるな』
「こういうものじゃないの?」
九重さんに牙を手渡し、聞いてみた
『詳細は知らないでござるが
基本に忠実なのは中々見ないでござる』
そういうものなのか
『一本、欲しいでござる』
「う〜ん、じゃあそれあげるよ
試作品だけどお守りとしてね」
『本当でござるか!』
『強度増加』の術式を彫ったタイガーベアの牙を宝物の様に掲げてはしゃぐ九重さんを見てもう少し良いものを作れるようにならないとなと思った
「幾つか作ってから協会に行こうか」
『分かったでござる』
◆
試作品を幾つか彫り終えた昼頃に第1号の牙に穴を入れ、そこから紐を通し九重さんの首に掛けた。九重さんは飛び跳ねて喜んでくれた




