『お前』は誰だ
◆◇◆◇◆
穏やかな馬の上、やや遠方を眺める様に背中に座し、引くにも早く張るにも早くといった辺りで手綱を持ち、心を落ち着け馬にやや身を任せる帰り道中、いつの間にか身についた馬術は荒削りながら九重から問題ないと判断を受け現在に至るわけながら依然として穏やかさが途切れることなく囀りを運んでくる
「土よ来たれ…ダメか」
『魔法の適性なしでござるな』
「なんとなく分かってたけども
こう突きつけられるとくるものがあるな…」
『そう落ち込むものでもないでござるよ』
「まぁ魔法道具でなんとか大体できるし、うん」
『使い過ぎに要注意でござるよ』
この数日帰る道中で魔法の手引きと共に買った『魔石』なる小道具に対して、手順通りに魔法を使う試みをしたもののうんともすんともいうことはなかった
火、水、土、風、光、闇の6つの属性は適性なし。残るはガラス片と見間違い兼ねない無色魔石を残すだけだった。こんな状態では恐らく無属性も適性はないのだろう
「えっと何々…無属性魔法は個人魔法とも呼ばれ
特定の呪文は存在しない
確認方法は2つ、1つは神域からの付与
呪文の使い方や名前を詳細に知れる
個人魔法の典型的な取得方法、なんじゃそりゃ」
「『ブースト』により魔石がちょっと光る
もしくは少し震えるなどの
なにかしらの変化が発生する。か」
ちゃっちゃかやるか、後半の『魔法道具』についても読み進めたいしね。何故か頭の中に無数に広がるアイデアの数々、これはあの◾️◾️◾️の影響だろ、う?…あれ?
「(何だ、この感覚)」
『フジノミヤ殿?』
何か、致命的な状態だと自覚できた。それでも不確かな───そう不確かで、荒唐無稽で輪郭のない不安感の自覚だった。記憶の大部分に欠落が生じていた。記憶喪失なら何で俺は発話ができて、俺は何で
「『スマホ』を使えるんだ?」
『あ!フジノミヤ殿』
震え出した無色の魔石の振動の周波数に寒気を感じた。これは『携帯電話のバイブレーション』の周期だ
『無色の適性はありそうでござるな…って
フジノミヤ殿!?』
「え?」
揺れる視界で九重を見る。彼女は九重八重で俺は、俺はフジノミヤだ。確かにフジノミヤで日本人で現代日本に居た唯の社会人で?
『顔が真っ青でござる!疲れが出たでござるか?』
「そう、だね。うん」
休もう。そう言おうとした瞬間。肩に斜めにかけたウエストポーチが揺れ出した。無色の魔石と同じ周期だった
「はぁ…はぁ…」
『どうどう』
ポーチから取り出したスマホを揺れる視界に収める───そこには『神様』と映し出されていた
「もしもし」
『ようやく繋がった』
電話口から聞こえてきたのはいつぞやの老人の声だった。聞きたいことができていた身としては願ったりな状況に問いただそうとした時
『お主は誰じゃ?』
「…え?」
神様とやらはとんでもないことを言い始めた




