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サムライ/再びFullTinといざこざ

◆◇◆◇◆


「もう朝か」


 二度寝をかまそうとする意識を無理やり覚醒へと導き、背伸び混じりに上半身を起こす、特大の欠伸は起きようとする意志の表れだ


 軽く身体を拭き取り、寝汗やら何やらをタオルへと移す。まだ臭っていないものの、装備と身体を洗いたい気持ちが強くなる



「(朝は抜くか)」


 1日2食、1日の大半をストレスや運動、勉学に使っているからこその学生時代の3食。就職してから過度な運動もストレスも軽減された今、それ程の食事を摂っても意味がないことに気づいてから改善した食事のリズムだ


「(さてと)」


 ふと、それが目に入った。薄紅色の着物に紺の袴、白い足袋に黒鼻緒の草履と一瞬コスプレに見えたが違った


 黒い髪。前髪を眉の上で切り揃えられ、後ろは一纏めに結わえられており、それだけで見てくれではなく刀を振るうことを常とした姿見であることを理解できた

 

 足運びの所作も捻るのではなく、倒す様に歩いており、着崩れを起こさない育ちが見て取れた。それを示す様に腰には大小の刀を携えていた


「(イーシェンの人か)」


 一目で分かった。察したとでもいうべきだろうか。その姿はまさしく女侍だった


 俺はその娘とばったり目が合った


「(会釈しとこ)」


 こういう時視線どこ置いときゃいいか分からんので無難に会釈をして、廃墟に向かった



 廃墟につきまして、散策を始めて、そこで気がついた。協会の受付さんが念押しした理由、これがクソ依頼な理由を


 何がクソってコイツ(メガスライム)、人体には無害なくせに装備という装備を溶かし食ってくれやがる。装備洗わなくて済むねってか?喧しいわ


「死に腐れダボが!」


 幸い攻撃は有効ながら"ブヨブヨ""ネバネバ"した見た目通りの耐久性と粘着性をこれでもかと発揮してくる


 これは一回せっつかれたら装備はお陀仏だ。なのに袈裟懸けウエストポーチは無傷とかなんなんそれ、訳分からんww(笑うしかない)


「一貫性持たせろや!」


 半流動体のそれも弱点がないわけではなかった。恐らくアニマトロニクス系列で磁力で操作してるとかそんなんだろう(ヤケクソ)。半流動体の大凡中心で浮かんでいる球体をおもっくそ"ドツケ"ば止まる


 取り敢えず、メガスライムを叩き潰して周った



 日の傾きが目に入り、我に返った。怒り任せにした結果。隅から隅まで探し回って発見できるメガスライムを1匹残らず叩き潰して状況は終了、終わった。全身に浴びた不快感マックスのブヨブヨ、ネバネバに毒がないとも限らないので解毒薬で全身を洗う


 地面にボトボト落ちていく半流動体を前に虚しさが襲ってきた


「俺の1.5金貨ぁ!!」


 汚くなったとか"どうでもええねん"割と新品に近い装備全部溶かし壊された。これが1番心にくるわ


「赤字だわ!クソッタレ!!」


 これで満足かよ。運営!クソが



 薬袋に紛れていたパンツだけが袋の献身によって無傷だった。解毒薬1本目の残りを使い『球体』を洗っていく、ネバブヨが残ってたら装備みたいに溶かされかねない。これが討伐証になるらしい


 てかさ、ウエストポーチだけ無事でMAPPAにされるってどういうこと?何その無駄に凄い謎技術、一周回って尊敬できるわ


「…」


 俺は空き瓶を眺めて少しばかり放心していた。ウエストポーチから取り出した時計は既に夕方に差し掛かろうとしていた



 あぁ、クソ寒い


 服諸共溶かされのを見るに俺が書簡を入れた袋を宿屋に置いて来て正解だった。そのことを心底褒めたい。解毒薬を買い足して回収できなかった討伐証の回収にも行きたい


 願わくば宿屋に戻って着替えたい、足早に草原を掛け抜ける。俺を見る兵士の目が警戒から、困惑、察した一連の動きを見て無性に腹が立った



 町に入って早々騒がしさが出迎えてきた


『昼間は世話になったな

 姉ちゃん。お礼に来てやったぜ』

『…はて?拙者、世話など

 した覚えはないのでござるが』


『すっとぼけやがって…!俺らの仲間を

 ぶちのめしときながら、無事で

 帰れると思うなよ』

『ああ、昼間警備兵に突き出した奴らの

 仲間でござるか。あれはお主たちが悪い

 昼間っから酒に酔い、乱暴狼藉を

 働くからでござる』


『やかましい!やっちまえ!』

「え?時代劇?」


 もうめちゃくちゃだよ。ガキ使か?


 朝に見かけた侍を取り囲むように、十人近い男たちが、剣やナイフを抜き放っている者もいた


 てか往来の"ど真ん中"ですんなや、邪魔くさい



 男たちが一斉に襲いかかる


 侍はひらりひらりとそれを躱し、男の腕を取ると体制を丸め様、軽い感じでくるりと投げた。背中から叩きつけられた男は悶絶して動けなくなる───一連の動作の何と美しいことか


 相手の勢いを流し、体勢を崩して、投げる。合気道や柔術の類いだった。侍はそのまま続けざまに2人3人と投げ飛ばしていったが、1人目の時と違い動きにぎこちなさが目立ち始めた


「(何なんだかな)」

『っぐ、卑怯者』


 侍の顔色が優れない。体調不良かと見ていると、【彼女は背中をざっくり斬られた】


「(は?演出…だよな?)」


 息がヒュっとなった。薄紅色の着物が見る見る内に紅く染まり、鮮血が床に垂れていく、本来そんな量が出ていたら重症だ。人死にが出るぞ


 いや、そういう、もんなんだろう。そうに違いない。そう考えている間にも剣を持った男は侍を取り囲んでいく、多勢に無勢だ


 リアルな、演出だな。町の警備兵を連れてくるか、間に合わないだろうな。そう、脚本通…


『ぐっ、あぁ』

「…」


 上がる悲鳴、湧く笑い声と見て見ぬふりの観衆に俺の中の何かが切れた。考えるな走れ


 俺は薬瓶だけを手に走り出した。脚本?知らん。ひとりを取り囲んで嬲るのが演出?クソ喰らえ。んな胸糞悪いことすんなら俺にだって考えがあんだよ


 ここ数日お前らゴミの脚本に沿って大人しくしてればつけ上がりやがって


「おいゴラ!」

『あ?…っ目が!!』


 男の顔面目掛けて殴りつける様に瓶を全力で振り下ろす。ゴリュっと、頭蓋に触れた瓶が割れて中身が溢れでる。血液と混ざったそれはメガスライムだ。男の頭部から垂れるそれを両手にそれぞれ取り、2人目、3人目へと投げつける


「死にさらせボケ」

『何だテメェ』


『おい!これメガスライムじゃねぇか』


 途端に周囲は大混乱となった。その隙に俺は侍の腕を掴み、引っ張り起こす


『き、貴殿は?』

「うるせぇ言葉分かんなくても走れ!」


 町の警備兵が騒ぎを聞きつけやってきたので、後を任せ、俺は侍を連れて現場から離れた

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