6
謎の少女の声と同時に落下中に感じていた風圧が止まった。
・・・・・・今度はどういう状況だよ?
取り合えず落下は完全に止まったようだが真っ暗だ。
自分の手足すら見えないほどに。
ふと、なんとなく、背後から視線を感じて振り向いた。
「うわっ」
「ひゃっ」
そこには中学生くらいの背丈の女の子がいた。
俺と同じく動揺している。
完全な闇の中だというのになぜか姿が見えるのは、少女の輪郭が淡く光っているからだ。
目が覚めるような美少女だ。
白銀の髪に褐色の肌、黒いワンピースらしきものを纏っている。
その瞳は大きく、ひどく澄んでいた。
互いに無言で見つめ合う。
すると突然、少女のそばに見覚えのあるウィンドウが浮かび上がった。
闇の精霊 ヤミ
階位:19
理力:50
魔力:80/100
固有魔法:【闇魔法 Lv.2】
おぉっ!?
こいつ、精霊だったのか!
「こ、こんにちは」
とりあえずこんな状況だが、一端の社会人として挨拶から始めてみる。
「あ・・・・・・ぅ・・・・・・」
「お、俺は獄寺悪路だ。君は・・・・・・?」
もうステータスで名前は知っているが、コミュニケーションを取りたいので聞いてみた。
「・・・・・・やみ」
結構な沈黙の後、ヤミという精霊」から返事が返ってきた。
声が小さい。消え入りそうなほどに小さい。
うーむ。
なんというか、随分なコミュ障のようだな。
それと、恐らくこの子が邪神の言っていた救援というやつなのだろう。
「助けてくれてありがとうな。ヤミは命の恩人だ」
「・・・・・・ママに、頼まれたから」
え?
ママって邪神のことだよな?
色々と思うところはあるが今は置いておこう。
「えっと。落下は止まってるみたいだが、今どんな状況か分かるかい?」
「こ、ここは・・・・・・私の、影の中」
少女は視線を落としたまま、ぽつりと答える。
・・・・・・ふーん。そういう感じね。
影の中に人を収納できる精霊か。
異世界精霊恐るべし。
「それで、この影の中からどうやって出るんだ?」
「ん。もう・・・・・・地面に着いた」
暗闇の中で、俺の身体がふわりと浮上する。
次に、まるで水面から出るような、膜の境界を抜ける感覚。
そして、生暖かい淀んだ空気が俺の肌を撫でた。
辺りを見回す。
ここは大穴の底ってことでいいのか・・・・・・?
周囲は完全な暗闇というわけではなかった。
岩肌に張り付いた苔がほんのりと青白く発光していて、わずかな光源になっている。
落ちてきた崖上を見上げる。
真っ暗だ。
一体どれほどの高さがあったのか、全く先が窺えない。
しばし呆けた状態で一歩踏み出そうとすると、何かを踏み砕く感触がした。
わずかな光源の中、目を凝らす。
それは骨だった。
しかも数が尋常じゃない。
あたり一面に、無数の骨が積み重なっている。
ヤミに助けられなければ、俺もこうなっていたわけか。




