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さっきから背後からじっと見つめられている感じがする。
「ヤミはいつからここにいるんだ?」
「わからない・・・・・・? 昔から・・・・・・ここにいるし・・・・・・」
「・・・・・・一人でずっとか?」
「ときどき、ママが話しかけてくれる・・・・・・」
「そうか」
だんだん暗闇に目が慣れてきた。
少し辺りを探索してみるか。
歩き出すと、後ろからヤミがトコトコと無言でついてくる。
距離は一定だ。近づきすぎず、離れすぎず。
周囲を歩くこと数十分。
おぼろげながら、遠くに石造りの巨大な建造物が見えてきた。
「あそこには何かあるのか?」
「ママの神殿がある」
邪神の神殿か。
気にはなるが今は落ち着きたい心境である。
「ふう。少し休憩するよ」
その場にしゃがみ込む。
この短期間に色々な事が起こり過ぎて放心状態だ。
「ここ・・・・・・お気に入りの場所。く、暗くて・・・・・・ジメジメポイント」
「お、おう」
満足げに言い切ったヤミを横目に、俺は頭を抱えた。
うーむ。しかし困ったな。
こんな場所に食料なんてなさそうだし、水場も当然見当たらない。
なんとか奈落から脱出できなければ早々に飢えと渇きで体力が落ち死ぬだろう。
「ヤミ。なんとか地上に出たいんだ。道を知ってたら教えてほしい」
「・・・・・・この領域から、出たことない」
「そうか・・・・・・」
はぁ。やはり地上に出るには、あの途方もない高さの崖をよじ登るしか選択肢はないのか?
俺は再び上を見上げた。
完全な暗闇が、ただ広がっている様子が見える。
・・・・・・うん。絶対無理。
今思いつく手段といえば一つだけだ。
「頼みがある」
体育座りでくつろいでるヤミの前に膝をつき、目線を合わせる。
「影移動で俺を入れたまま、上まで登ってくれないか?」
「・・・・・・いいよ」
ヤミの了承と同時に俺の身体が、ゆっくりと地面に沈んでいく。
底なし沼に嵌ったようで、ちょっとした恐怖を感じるな。
―――そして数分後。
俺は崖の下で、元居た位置で影から放り出された。
「・・・・・・だめだった」
俯くヤミの姿が、心なしか透けているように見える。
「お、おいヤミ。どうしたんだ?なんだか姿が薄くなってるぞ」
『――――あらら。そのままじゃその子、消えちゃうわよ』
「この声は邪神か!消えるってどういうことだっ」
『精霊は魔力が尽きると存在が保てなくなるのよ』
「な、なんだと!?」
慌ててヤミに視線を向け、ステータスを表示させる。
闇の精霊 ヤミ
階位:19
理力:50
魔力:4/100
固有魔法:【闇魔法 Lv.2】
うっ。
いつの間にか魔力の数値が百から四に激減していた。
ま、まずいぞ。
影移動は大量の魔力を消耗していたのか。
「ヤミ、今どんな感じだ?身体は大丈夫か?」
「・・・・・・ふわふわする」
表情はあまり変わらないが、その身体はふらふらしている。
これ本当にまずそうだ。
「邪神!魔力を回復させる方法はあるのか!」
『あるわよー。精霊に魔力を供給してあげればいいのよ』
「どうやって!?」
『交尾するのよ』
「は?」




