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―――気が付くと、俺は固い石畳の上に倒れていた。


肌寒い風が頬を撫でる。

おかしいな。九月の暑さはどこに行った?

ていうか夜だったはずなのに、夕日が見えるんだが?


「あそこにもう一人召喚者がいるぞ!」


「おお、いつの間に!」


ざわざわと人が集まってくる。

鎧を着たコスプレ集団だ。

召喚者って、俺のことか?


辺りを見回す。

複雑な模様の白い石柱が等間隔に立ち並んでいる。

なんとも神殿っぽい造形だ・・・・・・。

どこだよここ。それ系のイベント会場とかだったりするのだろうか。


取りあえず膝を立てて起き上がる。

身体に痛みはなく、怪我もしていないようだ。


少し離れた場所で人だかりが出来て騒いでいる。

その中心には、あの列車にいた学生共がいた。


「本当にここが異世界なのか」


「おおマジでステータスが見えるじゃん!」


「綺麗な人だったね~」


「あそこにも日本人いるよ」


なにやら気になるワードが飛び交っている。

異世界?ステータス?

まるで連中は今の状況を把握しているかのようだ。


「あのーすいません。何が起きたか知りませんか?」


平静を装いつつ、明るい調子で近くにいたオールバックのサラリーマンに声をかけてみた。


「うん?君は精霊神に会わなかったのか?」


怪訝そうな顔で意味不明な答えが返ってくる

誰だよそれ・・・・・・。


しかも精霊って何だ。

カルト系の集まりか?

他に思い当たるとすれば、昨今流行りの異世界ファンタジーってやつか?


「ようこそ勇者様方。お待ちしておりました。わたくしは聖女のアルネーゼ。どうぞ


アルネとお呼びください」

一人混乱している俺の耳に、涼やかな声が飛び込んでくる。

神殿中央の祭壇に、二十代ほどの金髪の女性が立っていた。

リアルでは見たことがないような美女だ。


豪奢な刺繍が施されたローブを押し上げる胸の膨らみがすごい。

しかし、何よりも目を引いたのは、その傍らに浮いている娘だった。

周囲がほんのりと淡く輝いている、真っ白な髪の非現実的な美少女だ。

浮いてるし光ってるし、色々とおかしい。


「うっわ超美人」


「あの子も精霊?」


「超かわいいじゃん」



精霊って、あの光ってる娘のことを言ってるのか。


「アルネ。この世界にいる魔王を全て倒せば元の世界に帰れるんだな?」


学生の男子が真剣なトーンで金髪美人に問いかける。


「勇者様をこの世界に呼んだ偉大なる精霊神であれば、地球への帰還もまた可能でしょう」


勇者に魔王ときたか。

定番だよな。

しかしなんだろう、この置いてけぼり感は。

なんで俺だけ情報がないんだ。


「その役を一方的に押し付けられたこっちはたまったものじゃないんだが」


先ほど話しかけたオールバックのサラリーマンが皮肉の籠った声で呟く。


「我々も神託を受けてあなたたちのお世話をするよう命じられた立場に過ぎません。

何分このような事態は初めてのことでして」


「魔法がある世界なんでしょ?あんた達が私達を帰すことはできないの?」


OL風の女が食ってかかるようにアルネに詰め寄る。


「少なくとも我々には、世界を跨ぐ術は歴史上でも知りません」


俺そっちのけで、聖女アルネーゼと列車の乗客たちの対話が進んでいく。

まぁ、どうせ何も分からん俺とやり取りしたところで時間を無駄にするだけだ。しょうがない。

ていうか俺も、魔王とやらを倒さなきゃいけない流れなのだろうか。

スイーツ作る技能しか能のない中年に。


「皆様方には当面の間、この契約の塔で過ごしていただき、この世界の知識と精霊様の使役、精霊神から授けられた加護によるスキルの使い方を学んでいただきたく思います」


そんな俺の胸中など知ったことかと、段取りはズンズン進んでいく。


「それではこれから精霊様と契約していただきます。どうぞこちらへ」


聖女アルネーゼについていく列車客の集団。

その最後尾にトボトボとついていく俺。


上に階層があるようで、大掛かりな螺旋状の階段を上る。




ふうふう。

長い階段だな。エレベーターとかないのだろうな。

塔と言っていたが、かなり巨大な造りのようだ。


早くも太ももがビクビクと疲労を訴えてきているが、なんとか気合いで登りきる。

登りきった先は塔の屋上だった。


視界が一気に広がる。

眼下には西洋風の中世の街並みが、見渡す限りに広がっていた。

一瞬だが海外旅行をしているような錯覚に陥る。


海外旅行なんて人生で一度も行ったことはないが。

本場で修行とかしてみたかった。


遠くには高く分厚い長大な城壁が見える。

屋上には何十人もの騎士装束の集団が、俺たちの周囲を囲うように円状に整然と並んでいた。


そして、その中央には二メートルはある菱形の虹色の結晶が鎮座している。


「それでは皆様。一人ずつ、このクリスタルに触れ、精霊様との契約に臨んでください」

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