表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

五話 後編

ある程度分類してから、一息つくために伸びをするユキに向かってユアンが口を開く。


「まったく、あの場にいないからこうなったんだよ?

毎回気をつけてって言ってるだろ?フォローするこちら側も疲れるんだから。」

「ごめんなさい。以後気をつけます。」

「ほんとに??」

「本当に気をつけます…。」

「ならいいよ。この話はここまでにしよう。

 それよりドラゴン討伐ありがとう。しかしよく気がついたね?」

「気配と…感で。」

「それでも、あんな早くに対処出来たんだ。

流石、ユキだね!よくやった。」


 そう言いながら彼女の頭を優しく撫でる。

ユアンはいつもユキのフォローをしたりとお節介を焼いている。甘やかすことがほとんどな為叱ることが滅多にない。

 それを呆れながらロイがユアンへ睨みながら言う。


「お前はもう少し、ユキに強く言ったらどうだ?」

「え?ロイなら言えるの強く?」

「当たり前だ。お前とは違う!」

「なら、はい!おまかせするよ!」


そうキラキラした笑顔でロイへに催促する。

咳払いをしてユキに真っ直ぐ向き、口を開く。


「今回は何も無かったとはいえ、

今後また、こんな事があればフォローは難しくなるかもしれん。もっと自分の立場を弁え、きちんとした態度で挑むんだ。

いいか、何かある度に逃げたりするのは良くない。

人付き合いも慣れなければ師団長としてますます周りからグチグチ言われるぞ。

そうなりたくなければ、少しでも人の目につく所で仕事をしてくれ。頼むから。」

「それ、お願いになってない?強く言ってないじゃないか?」

「うっ…お、お前よりマシだ!」

「いやぁ、やっぱり言えないよね〜」


 どちらにしても甘い人達なのだと、ユキは呆れながらアリシアから手渡される書類を黙々と振り分けていく。


「でも、人付き合いは大事な事だからね?

今後たくさんの人と触れ合ってーー」


 そこまでは、まだよかった。


「そして!幸せな家庭を持つんだ!!」


(来た)


 ユキは無言で書類を一枚めくる。


そう言うユアンの周りがキラキラしだし話の向きがおかしくなってきた。

何かあれば、いい人、結婚、子供、家庭。

これはこれで別の意味で疲れるようで耳を防ぎたい気持ちを押しとどめて右から左へ流す。


「もうすぐ十八歳だ!いい伴侶と巡り会いーー」


 ペンを走らせる音だけが、やけに響く。


「暖かな家庭で、可愛い子供に囲まれてーー」


(長い)


「ユキほど可愛い子なら男は選り取りみどり!!」


 書類の束が、ひとつ片付く。


「包容力があって、少し過保護なくらいがいいね!

 料理もできてーー」


 ユキは静かに立ち上がる。

 書類を整え、椅子を戻す。


 ユアンはまだ語っている。


「ーー愛があれば地位なんて関係ないんだ!!」


(まだ言ってる)


 そのまま、扉へ向かう。


「あぁ、君の子供はきっとーー」



 ーーガチャ。


 誰も止めに入らない。


 なにかのスイッチが入ったユアンはよく舌が回る。その姿をアリシアもロイも止めに入らない。

 こうなったからには喋らせるだけ喋らせ、放っておくのが一番いいと、少し放っておくもなかなか止まらない彼に、呆れたロイがやっと声かける。

 

「ユアン」


 ロイが低く呼ぶ。

「まだ条件があるんだ。几帳面でーー」


「ユアン」

 

 「君を命がけで守れる勇敢な男でーー」


「ユアン」


「君を命がけで守れる勇敢な男でーー」


「ユアン!!」

 

「何?ロイ」


「長い」


 振り返りロイを見るユアンはとても機嫌がいいのか先程の冷たい瞳はしておらずキラキラと輝いていた。

 

「一人でよくべらべら喋ってないで仕事してくれ。」

「ん?あれ?ユキは?」

「ユキ様ならもうご退室されましたよ。貴方がお見合い相手について語り出そうとした時にはもう振り分け作業を完璧に終わらせてしまわれました。」

「え?」


 アリシアをぽかんとした顔で見つめ、ユキの座っていた所の書類の束に視線を移し、そしてまたアリシアを見つめ返す。


「え?……あの子、もう終わらせたの?」

「ええ、慣れた手つきでササッとされました。」

「……なんで止めてくれなかったの。」

「元々あんまりご機嫌ではなかったので、呼び止めても貴方の話は聞いてくれなかったかと?」

「悲しい…………。」

「ふん。日頃の行いだな。」

「その言葉は君にも当てはまるからねロイ。」

「お二人ともですよ…全く困った方々です。」

「けど、今年から何か変わる気がする…あの子にとっても、僕らにとっても。」

「どういう事ですか?」

「そんな気がするんだ…神様からのお告げかな?」


 ユアンは窓の外、青く澄んでいる空を見上げながら言う。その口元は穏やかに弧を描いていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 シオンたち最終試験組は助けられた後、下宿先へもどされた。

 各自休むよう通達され、その場は解散となる。

 そして翌日ーー翼竜を倒したメンバーだけで集まる約束を交わしていた。

 試験にて怪我をした者は第四師団が運営する病院へと移され、怪我の手当を受けているとの事。

死者が出なかったのは幸いだった。

火傷の方も腕のいいヒーラーがいたお陰で重症の者も数週間で良くなると話があった。

本来なら、明日の午後には合否の報告がある予定だったが、最後の翼竜の件で上の人達は対応に回らなければ行けないとの事で、ずらされ一日余裕が出来た為助けて貰った少女へお礼をしようとなった。

 そしてゆっくり休んだシオンは集合場所に向かい、倒したメンバーと話し合いをしていた。


「で、何をする?いい案あるか?」

「普通に花を渡すのは?」

「受け取ってくれるのかな…?」

「どうだろうな…接点ないし、そもそも近づけるのか?」

「というかあの人どこの部隊の人なんだろう。」

「確かに…わかんないよね……。」


 助けてもらったのは言いけれども、どこの部隊で誰なのかも分からない。全員頭を悩ませている中、シオンの隣にいたカンナと名乗った女性が手を挙げた。


「合否の時にもし見当たらなかったら、その場にいる誰かに聞くとかは?そしたらあの場にいた幹部の人ならわかると思うし!」


 その提案なら、とその場にいた者たちが賛成と声を上げていく。その方が確かに早いとシオンも賛成する。

 だが、渡す物は何にするか……と次に頭を悩ませる。

 そこに遅れてやってきたライオスが加わった。


「お疲れ様です。」

「おお!貢献者その2だ!」

「貢献者?なんの事かな?」

「あの翼竜を倒したさ!」

「あぁ…。僕だけの力じゃないよ。」

「まぁまぁ、そう言わず!それであの助けてくれた女の人へのプレゼントは何にするか今話し合ってたんだが、何がいいと思う?」

「助けてくれた…?

 あぁ、ユキレスティアへの感謝か…。」

「「ユキレスティア?」」

「最後に助けてくれた彼女だよ。」

「お前知ってるの?」

「知ってるも何も…幼馴染だから。」

「「「えええぇ!?」」」


 その場にいた全員が驚いた。ライオスはと言うと何に驚いてるのか分からず、驚いていた。


「まじか!?」

「じゃあ!あの人へのプレゼントとか何がいいか一番わかるじゃん!!」


 そう言われて彼は躊躇いながら口をひらく。


「幼馴染と言ってもここ数年まともに話してないし、顔も合わせてないから!」

「でも知ってるなら!」

「何がいいと思う!?」


 そう聞いたライオスは少し考えて、なにか閃いたような顔をして皆を見た。

 

「花はどうかな?一番準備しやすいし。」

「花かぁ…皆どうかな?」

「いいと思うけど。」

「今日は時間があるわけだし街見るついでに買ってくる?」

「金は?」

「そりゃ割り勘だろう!」

「それで、誰が渡す??」


 そこで沈黙したあと何故か視線がシオンとライオスに集まる。シオンは自分の後ろに何かあるのかと後ろを見るが何もいない。それでまた前に視線を戻す。

 


「…なにか」

「最後倒したよな。」

「え?」

「うん、シオンやったな。」

「まさか?」

「よし、任せた」

「ライオスは一番よく動いたって事で。」

「え……。でも。」

「何かあるのか?」


 口ごもるライオスにヴァルタが気になって聞く。少し困った表情で言う。

 

「僕、親から接近禁止令出されてるんだ。彼女に。」

「「「接近禁止令?」」」

「なんだそれ?」

「詳しくは話せないけど、騎士になるまで話しかけるのはダメだって父に言われてるんだ。だから、すまないが僕は渡せそうにない。」

「意味わかんねぇけどそれなら仕方ないな。」


 そうデラフトが諦めた声色で言うも、すぐにシオンを見てニヤリと笑う。

 感ずくシオンは諦めた感じで仕方ないと言わんばかりに、声を絞り出した。

 

「そうなるよな…」

「覚えられてるの君しかいないよ!」

「バッチリ!!」

「なんでそうなるんだよ……俺かよ。」

 


 いつも以上に目付きが悪くなるシオンを見て、ヴァルタが肩を叩いて鎮めようとしてくる。

 元々、無表情な為か顔が怖いと言われる自分より、ヴァルタやデラフトのような優しい顔したヤツの方が好印象だろうと意味合いを込めて2人を睨む。

 

「落ち着けってシオン!怖いぞ顔!」

「俺1人で倒したわけじゃない。」

「それはそうだけど、硬いこと言うなよぉ、シオーン!」

「良かったな!出世!」

「まだ入隊してない。」

「お願いしますよ〜!花渡すだけだから!ね?」

「男から花なんか渡されても、

 認識のある人じゃないと嫌だろ。相手は女性だぞ?」

「助けられた中、男も女も関係ない!!」

「彼女は基本無表情だけど、花は好きだからきっと嫌な顔しないよ。」

「だってさ!」


 全員、まったく引かない。

 なぜかシオンだけが、ぐいぐい押しやられていく。


「はぁ…わかったよ…。」

「よっし!これで渡す人は決まりな!」

「んじゃ渡す花だけど〜」


 わーわーと渡す本人を抜いて話が進められ、いつの間にか全て話がついていた。

 話し合いが終わり解散し、街を見て回るか下宿場所でゆっくり過ごすか悩んだ末何もしていないのに精神的に疲れたシオンは部屋でゆっくり過ごす方を選んだ。

 同室のヴァルタ、デラフトとその他に数人は街を見て回るとの事で、貴重な静かに過ごせる時間を謳歌しようとベッドに寝転んだ。

 家では家族がひっきりなしに話しかけて来るため、こういった時間が無いに等しい。


「久々に一人。…………花か。」


 正直目の前で見て思ったのが、とても綺麗な人だった。

他人にあまりに興味を示さない、恋愛感情を持つなんてもってのほかな自分がまさかの一番に思った事がそれだった。だけどそれと同時に瞳だけを見たら哀しそうだった。


「綺麗な青色だった。空みたいな色。」


 明日また会えると思うと少しザワつく心になんとも言えない感情が込み上げてくる。

 落ち着かせようとするがなかなか難しい。

 印象の強い容姿だったからかはたまた何処かであった事があるのか…。


「何処かであってるなら忘れるはずがない。あんなにも可愛い人は……って……ん?」


 可愛い人……自分からそんな言葉が出てくることに驚いたシオンは起き上がって頭を抱える。

 とても混乱しているのか、疲れているのか?と悩ませていた。


「………落ち着かない!」


 そう呟き、シオンは身体を起こした。

 ーーなぜか、あの瞳が離れなかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ