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二話 後編

その夜、三人は城下町で夕食を取ることにた。

同じ試験者から「美味い店がある」と聞き、その店へ向かう。


 白い外壁の四階建ての建物は、町の景観に自然と溶け込んでいた。

 一階が飲食店。二階が店主の住居、三階と四階は宿泊施設になっているらしい。


 店を切り盛りしているのは、貫禄ある主人と、活発の妻。料理のほとんどは二人が作っているという。

 そしてーー看板娘は、その二人の娘だった。

 


 「んー!!!セクシー&キューティー♡

 空いてる日ないかなぁ…」


 鼻の下をこれでもかと伸ばすヴァルタを、デラフトとシオンは呆れた目で見ていた。


 店内は活気に満ちている。

 看板娘のーーロザリアは、ひっきりなしに客から名前を呼ばれていた。


「ロザリアちゃん!こっちにビールちょうだーい♡」

「ロザリアちゃん!!こっち来て一緒に飯食おうぜ!奢るぞ〜♡」


 街の住人だけでなく、外から来たか客にも人気があるようだ。

 ほかにも給仕の女性はいるが、客の視線はほとんど彼女に集まっていた。


 整った容姿に、よく通る声。

 だがーー”綺麗な花には棘がる”という言葉通りだった。


「やかましいわね。

 アンタらなんか相手にする暇ないの。食べたらさっさと帰りな!」


 ぴしゃりと言い放つ。

 その強気な態度に、一瞬だけ空気が止まる。


 ーーだが。



「ロザリアちゃ〜ん♡綺麗だよ〜♡」

「俺と結婚しよう!!」

「いや彼女は俺のだぞ!」

「んだと!?」

「なんだゴラァ!?」


 むしろ火に油だった。


 酔った男たちが立ち上がり、店内は一気に騒然とする。

 今にも乱闘が始まりそうな空気だった。

 


「ひぇ…な、なんだよこの飲食店…こわ……」

「都会はこんなもんだろ。」

「止めるの、あの店主か……?」



 三人が様子を伺っているとーー


 店の隅で静かに食事をしていた男の一人が立ち上がった。


 騒ぎの中心へ歩み寄ると、揉み合っていた二人の腕を掴む。

 次の瞬間、無駄の動きで体勢を崩し、床へ転ばせた。


 一瞬で、場が静まり返る。

 

 「ここは食事を楽しむ場所だ。騒ぐのなら街の外でやりたまえ。」


 低く、よく通る声。


「それとーー一人の女性に夢中になるのは構わない。

 だが、迷惑をかけていい理由にはならないだろう。」


 その一言に、誰も口を挟めなかった。


 男は周囲を一瞥すると、何事もなかったかのように席へ戻る。

 やがて店内には、元の賑わいが戻っていった。


 デラフトが、ぽつりと呟く。

 

 「かっけぇな…俺もあんなふうに言えたらな…。」

 「無理だろ!ビビりだしな!」

 「すぐに謝るしな。」

 「悪かったなぁ!」


 軽口を叩き合いながら、三人は料理を口に運ぶ。


 その時、背後の席から会話が聞こえてきた。

 

 「今の、騎士団の奴だよな?」

 「あぁ、確か数年前に出来た師団の兄ちゃんじゃなかったか?」

 「第六師団のか。」

 「まだ新しい師団だけど、精鋭揃いらしいぞ。」


 三人は思わず耳を傾ける。

 

 「そういっや昨日見たぞ。あの噂の子!」

 「あの嬢ちゃんか?」

 「そうそう。街のこと聞いて回ってた。」


「すげぇよな。

 この前、業者が壁壊した件、すぐ手配してくれてよ。」


「パン屋の煙突の修理もだろ?」

「今までの騎士様とは違うよなぁ。」

「俺としてはかなり嬉しいね!胡散臭い男相手より女の子が断然いいってもんよ!」


 笑い声が上がる。


 その話を聞きながら、デラフトはまた顔を緩ませた。

 

 「可愛い師団長かぁ…気になるなぁ…」

 「簡単に会える立場じゃないだろう。」

 「そもそも第六師団なんて載ってなかったよな?」

 「俺も第六師団については知らない。数年前って言ってたからもしかしたら本当にそんな年月経ってないのかもな。」


 シオンは静かに考える。


「……どのみち、簡単な場所じゃなさそうだな。」

「でも面白そうじゃね?」とデラフトが笑う。

「どんな仕事か知らないけどな!」とヴァルタも続く。


 食事を終え、三人は店を後にした。


 騎士団の仮宿舎へ戻る道すがら、自然と口数は減っていく。

 明日は、最終試験。


 落ちれば終わり。

 受かれば、新しい道が開ける。


 部屋に入り、ベッドに倒れ込む。

 天井を見つめながら、シオンは静かに目を閉じた。


 ーー必ず、受かる。


 そう自分に言い聞かせながら、眠りへと落ちていった。

 

 その夜の夢

 眠りに落ちたはずなのにーー

 シオンは、どこかに立っていた。


 視界は白い。

 空も、大地も、境界が曖昧な世界。


 ただ、風だけが吹いている。


 静かで、それでいて確かに、”何かを運んでくる風”だった。


「ーー」


 誰かの声がした気がした。


 振り向く。

 だが、そこには誰もいない。


 ふと、自分の手を見る。


 その瞬間ーー

 指先から、淡い光が風に溶けて散った。

 

「……なんだ、これ」


 触れようとした瞬間、風が一際強く吹き抜ける。


 その風はまるで、導くようにーー

 どこか一点へと流れていた。


 次の瞬間、視界が歪む。


 ーー落ちる。

 そう感じた瞬間、シオンは目を覚ました。


 

 目覚める間際に

 

「ーー見つけて」

 

 そう聞こえた気がした。


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