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「クワイエット侯爵子息」
いきなり後ろから呼び止められたのは次の授業の移動中だった。
「なんでしょうか?」
移動時間が減るから用件は早く述べてほしいなと後ろを振り向くと、一人の男子生徒。
確か、一つ上の学年の……。
「アゼリア・バルセローゼ令嬢を無理やり囲い込んでいいように使っているというのは本当なのかっ!!」
「いや、なんで?」
「彼女を解放しろ!!」
こっちの言い分を聞かずにそんなことを言い出してくる先輩に、少し離れた場所でにやにやと見ている数人の影。
その見ている人物らが敵対派閥の貴族令息たちだったので、
(ああ。アゼリアが注目されていることでこっちの権力が強まるのが不快な輩に唆されたのか)
冷めた目で先輩を見るが、先輩は全く気付かずにアゼリアの魅力を次々と語っている。いや、知っている内容だし、出会った頃のアゼリアがそこまで成長してと感極まっているのは我が家にいる者たち全員だが。
「貴様のように、金で物を言わせて彼女の翼を手折るのは許せない」
「…………」
うち侯爵家なんだけどな~。この先輩見たところ子爵家とかだよな。義憤に駆られて……後、恋心に踊らされて、身分とかを気にせずに突進してきたのだろうけど、きちんと情報を吟味して真相を確かめてから凝ればいいのに。
(というか。このパターンって、少女漫画で主人公がされる代物ではないだろうか)
王道だとここでアゼリアが助けに入るパターンだけど……。
「自分の都合のいい情報しか入手できない時点で足がすくわれるな」
くだらないと告げて、さっさとこの件に関わる気はないと冷たい視線を向ける。
「えっ?」
「………今回は踊らされただけなので、見逃しますが。――次はない」
家に抗議することも可能だぞと脅しを込める。
「ひっ!!」
それに怯えたように後退りするのならこっちに喧嘩吹っ掛けるなと呆れる。
唆されたというのも加味しても救いようがない。………が、もしかしたら、高位貴族に脅された場合もあるから見逃しておこう。
だけど、
「…………あちらの家には抗議しておくか」
問題は唆した方だ。
あいつらは放置できない。
僕の髪が白いのを魔力無しだと嘲笑って、子供の頃に嫌がらせをしてきたのだ。まあ、魔力無しではなく、全属性持ちだったのだが、その際あいつらはろくに魔力のコントロールが出来ないくせに人に向かって魔力を放ってくるし、それで周りが巻き込まれて大怪我どころではすまない事態になったのにろくに反省しないで逆恨みをしているのだ。
そろそろ堪忍袋の緒が切れてもおかしくないだろう。
こっちは家同士の繋がりとか今排除したら国にどう影響を与えるかとを考えてあえて手出ししなかったのだが、自分から処分してくださいと来たのだからそれに応えてあげるのも貴族の務めだろう。
「リュカスさま」
そんなことを考えていたら別行動をしていたアゼリアがこちらに向かって歩いてくる。
「何をしているのですか。授業が始まりますよ」
「ああ。――うん」
アゼリアに声を掛けられた瞬間にそいつらがアゼリアにみとれるような視線を向けたのが見えた。
(ああ。なるほど)
「リュカスさま?」
「いや、僕の婚約者は魅力的なんだなと思って」
どうやら、アゼリアに想いを寄せているのもあっての今回のことだろう。人の婚約者に横恋慕して、身分の低い先輩を唆して…………。
それで、先輩が道を踏み外しても自分達には関係ないって考えか。
僕に嫌がらせしていた子供の頃から成長していないな。
まあ、正式に家に抗議して手を回すけど。それよりも。
「リュカスさま。あの、今は……」
魅力的と告げたから嬉しいけど恥ずかしいと顔を赤らめるアゼリア。その様に可愛いなとつい見とれつつ、
「移動時間がぎりぎりだったね。迎えに来てくれてありがとう」
「い、いえ……当然です」
「なら、行こうか」
エスコートをするように手をつないで歩きだす。アゼリアは恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに頬を緩ませて歩くのを羨ましそうに見ている気配が背後からする。
取り合えず、仕返しはしておく。
まあ、これだけでは終わらせないが。
本題が進まない




