とある時間軸
「はぁ~。なんでわざわざ制服なんて用意しないといけないのかしら」
乱暴に着せられたそれはサイズが大きかったが、文句を告げたら食事が抜かれるので何も言わない。
いや、何か言える環境でも、言葉は出ないのだろう。
言葉は聞こえるが、意味が理解できないのだ。
闇属性だから。
気味が悪い存在だから。
だから、しょうがない。
生きていてはいけない存在。だから、この扱いは仕方ないのだから。
与えられた制服に身を包んで、学園と呼ばれる場所に通う。
だけど、そこで何をすればいいのか分からない。
教科書を読めと言われたが、どれが教科書でどれがノートでどれが辞書か分からない。
分からないでいるとこれだから闇属性はと言われる。
何とか教科書を見付けても何が書いてあるのか分からないし、どこを読めばいいのか分からない。
ページって何?
何行目ってどういう意味?
尋ねても誰も教えてくれない。
これだから闇属性は。
そう言われるだけ。
制服もみんなのものと違う。型落ちと言われる。
食堂は自由に使っていいと聞いたが、食堂って何?
料理は食べていい物なの?
どう食べればいい?
どんな道具を使えばいい?
分からない。分からない。
困っていても誰も助けてくれない。
これだから闇属性は。
同じ言葉を返される。
何がおかしいのか。
何が間違っているのか。
誰も教えてくれない。
真似をすればいいの?
真似をするためにじっと人を見ていると叩かれた。
闇属性がこっちを見るな。
そう告げられた。
真似をするために見てもいけない。
ふと、途方に暮れた時に綺麗な髪質の少女とその少女を囲む男性たちの姿が見えた。
確か、【光属性】というものを持った少女だった。
自分と違う生き物。
あの子はたくさんの人に好かれて、自分のように分からないことはないのだろう。
分からなくてもきっと、教えてもらえる。
いいな。
羨ましいな。
そんな風に思っていたらふと、その少女を見ている人の存在に気付いた。
この人もあの少女が羨ましいのだろうか。
もしかしたら、この人なら分からない自分に教えてくれるかも……。
どうやって、近付けばいいのだろう。
声を掛ければいいのだろう。
どんな声を。
何を言えばいい?
どうすればいいのか分からないでそっと近づいて、
「あっ……」
声を掛ける。
「君は……確か、アゼリア・バルセローゼ嬢。だったね」
初めて呼ばれた名前。いや、初めてではないが呼ばれるたびに悪意が込められていたので悪意を感じない呼ばれ方は初めてだった。
「君は闇属性だって聞いたよ。――何故努力をしない」
「………?」
どういう意味? 努力?
「闇属性だからという理由で好き勝手していいものではない。認めてもらいたいならそれ相応の努力をするべきだろう。なのに君は学業も疎かにして………」
声が聞こえる。
努力?
何それ?
どうやって?
知らないことを教えてもらいたいけど、教えてもらえない。
せめて、真似をすればいいのかと思ったら見るなと言われる。
文字って何?
教科書って何?
ノートの書き方も知らない。
どんな道具で字を書けばいいの?
そもそも字を書く道具ってどうやって手に入れるの?
ああ。この方は。努力をして認めてもらえるという実績があるのだ。だから努力をすればいいと言えるのだ。
努力をすることも出来ない環境にいる存在を知らないのだ。
思い浮かぶのは【光属性】と自分と真逆の存在。
努力をすることも出来、分からないことを教えてもらえる場所にいて、人が集まる存在。
何が間違っているのか。
何がおかしいのか。
ああ。そうか。
私がいることが間違いだという世界が【間違っている】のだ。
ならば、壊してしまおう。
壊れてしまえば、誰かが……。
(私を見てくれる)
それは起こらなかった未来――。
この場合の最適解。前世の記憶とかチートの誰かに闇属性が悪ではない世界に連れて行ってもらうこと(子供の足で国は越えれないでしょう)




