431.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
テンコは無我夢中で熱々のステーキを頬張っていた。
サクッ、ジュワァッという小気味良い音がキッチンに響き渡る。焦げた上質な脂の暴力的なまでに香ばしい匂いが空間を完全に支配し、私の鼻腔を強烈に刺激した。
「おいちー! おいちー!」
目をキラキラと輝かせ、小さな口の周りを肉汁でテカテカにしながら、頬をぱんぱんに膨らませて肉を噛み砕くテンコ。
サクッとした表面の食感と、噛むたびに溢れ出す濃厚な旨味のハーモニーに、すっかり夢中になっているようだ。
その愛らしい仕草に、私は完全に骨抜きにされ、大きくのけぞって身悶えしていた。
「いっぱい食べるんだよ。育ち盛りの子狐には、美味しいお肉が一番だからね」
「あぐっ、もぐもぐ! はふっ!」
テンコは木皿を直接舐め回すようにして、あっという間に大きな霜降り肉を平らげてしまった。
満足そうにぽんぽんと丸く膨らんだお腹を小さな前足で叩き、ふう、と熱い息を吐き出す。
「ごちそうさまでちた!」
「よしよし、いい子だね。まだお代わりもあるよ」
私が優しくその頭を撫でようと手を伸ばした、その時だった。
カッ!
テンコの小さな体から、突如として真夏の太陽のように強烈な光が放たれた。
鼓膜を劈くような轟音と共に、凄まじい密度の魔力が暴風となって部屋の中に吹き荒れる。
「えっ?」
私は目を丸くし、強風に煽られて床を勢いよく転がった。
テンコの体を包む光はさらに激しさを増し、黄金色のオーラとなって天高く燃え上がっていく。
ふわふわだった一本の尻尾が、ボフッという破裂音と共に鮮やかに分裂し、一気に三本に増えた。
「きゅわぁぁぁぁっ!」
テンコが元気いっぱいに天に向かって吠えると、その小さな口の前に幾重もの複雑な魔法陣が展開し、極太のレーザーのような光線が発射された。
ズドォォォォォンッ!
まばゆい光線はキッチンの壁を容易く消し飛ばし、はるか彼方の山を一つ、綺麗に丸く削り取ってしまった。
さらにそのまま上空へと伸び、分厚い雲海を真っ二つに割って天空へと消えていく。
焦げた建材の刺激的な匂いと、もうもうと舞い上がる土埃が辺りを覆い尽くした。
「な、なにが起きたの!?」
私は地面に倒れ伏したまま、ぽかんと間抜けに口を開けた。
すると、土埃の向こうから凄まじい形相の吹雪が飛び出してきた。
「美香! お主、一体テンコに何を食わせたのじゃ!」
「え? いや、アイテムボックスに入ってた、ただの普通の霜降り肉だけど」
「ただの肉であんな規格外の魔力爆発が起きるわけなかろう! ちょっと見せてみい!」
吹雪は私がさきほどまで使っていた鉄のフライパンに残った、わずかな肉汁の匂いをクンクンと嗅ぎ、その成分を鑑定した。
次の瞬間、吹雪の顔色が見る見るうちに青ざめていく。
「な、なんじゃこれは……! これはただの肉ではない! 神の気と絶大な権能を帯びた『神饌』になっておるではないか!」
「しんせん?」
「神の食べ物じゃ! 美香、お主、調理の時に何か念じなかったか!?」
「ええと……『美味しくなーれ』とか、『テンコが元気に育ちますように』って、愛情を込めて焼いただけだけど……」
「それじゃあぁぁっ!」
吹雪が頭を抱えて絶叫した。
「お主が持つ神の規格外の力が、その無自覚な願いに反応してフライパンに宿ったのじゃ! ただの肉が、お主の神業の調理によって究極の霊薬へと昇華してしまった! それを食べたテンコは、その莫大な神気に当てられて、強制的に上位の神獣へと進化を促されたということじゃ!」
「や、やらかしたぁぁぁぁっ!」
私は絶望のあまり膝から崩れ落ちて床に激しく突っ伏した。
可愛いからといって、ただ無自覚に愛情を込めて料理を振る舞った結果、世界にただ一つの神の奇跡を起こしてしまったのだ。
「美香、お主、頭ないんか!? 一歩間違えれば、テンコの小さな体が強大な神気に耐えきれず、風船のように破裂しておったかもしれんのじゃぞ!」
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい! 猛省してます!」
吹雪の容赦ない激怒の説教が頭上から降り注ぎ、私はガックリと項垂れて地面に額を擦りつけるように平謝りするしかない。
そんな私の深刻な反省をよそに、当のテンコは増えた三本の尻尾をパタパタと楽しそうに振り回している。
「なんか、ちからがみなぎってくるー!」
テンコは目をキラキラと輝かせ、近くにあった私の鋼鉄の盾を前足でちょんと突いた。
グシャァッ!
たったそれだけの軽い接触で、どんな魔物の攻撃も防ぐはずの頑丈な盾が紙くずのように圧縮され、小さな金属のボールに成り果ててしまった。
あまりのデタラメな腕力に、私は言葉を失う。
「わーい! てんこ、強くなった! みか、あそぼー!」
テンコはその場でぴょんぴょんと無邪気に飛び跳ねた。
着地するたびに、ドスン、ドスンと家全体が地震のように激しく揺れる。
物理攻撃力も魔力も、明らかに規格外の領域へと跳ね上がっていた。
「ええと、テンコちゃん。力加減というものをだね」
「えーい!」
こちらの制止も聞かず、テンコがじゃれつくように私のお腹に元気よくダイブしてくる。
「ぐふぅっ!」
まるで大型ダンプカーに正面衝突されたような凄まじい衝撃が全身を貫き、私の体は一直線に吹き飛んだ。
さきほど光線で消し飛んだ壁の穴から、そのまま大空へと打ち上げられる。
「たーまやー!」
眼下で無邪気に手を振るテンコの姿が、みるみるうちに小さくなっていく。
「壁の修理代どころか、私の治療費もバカにならないぃぃぃぃっ!」
私は抜けるような青空に向かって絶叫しながら、白目を剥いて完全に意識を飛ばすのだった。
【おしらせ】
※4/20
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