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私が父からこの《おもいでや》を引き継いだのは主人と結婚してからすぐだった。
ゆっくり過ごしていたところ、気付けば不思議空間に主人といた。そして、そこに父たちもいた。
父からここの説明をされた。
不思議空間に選ばれた以上、ここを継ぐことになる。
ここは《おもいでや》と呼ばれる場所である。
自ら来ることは叶わない、誰かが招かれるとわれわれも呼ばれる。
そして、ここのルール、自分たちの在り方を教えられた。
管理者となる自分たちだけ、ここでの飲食が可能であること、そして、引き継ぎが完了する時、4人で飲食をした。
そうして、初めて呼ばれたのは藤嶋かなえ様だった。
藤嶋かなえ様はご主人との思い出の品を常に持ち歩いているのだ、と、そうおっしゃっていた。そして、主人にも言ってるのよ、でも持たないのよ、と笑っておられた。
辛い時、その思い出の品が支えてくれたのだと。
藤嶋かなえ様に残された時間があとわずかだから、思い出の品を無くしたとしても行きたい、と願われた。
無事にお戻りになり、笑顔が見えたことに安堵した。
私たちはそのあと藤嶋かなえ様に会うことはなかった。
藤嶋かなえ様の元に《おもいでや》が開かれたのだから。それは、朝を迎えてもご本人にお会いできないことを意味する。
当然知らせが届くこともない。
この《おもいでや》のことは誰にも知られることはない。そもそもどこにあるのか分からないのだから。
藤嶋誠一郎様に藤嶋かなえ様もご利用なさったことは伝えていない。伝えてはいけない、ということも理由の一つではあるが、伝えずともお二人とも思い出の品は同じだったからだ。
そしてまた、私たちが藤嶋誠一郎様にお会いすることもまたない。
お二人が同じ品を持ち《おもいでや》に訪れたことを私たちは忘れないだろうと思う。そして《おもいでや》もまた忘れないだろう。
取り込まれたものは《おもいでや》によって、当人をその場へ連れていくために、そして空間の維持に使われている。戻るための座標は私たちの居る場所になるため動けない。
だからこそ願う。招かれた人々がこの先笑顔で過ごせることを。




