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実は藤嶋様の奥様も利用者だ。

私たちが初めて請け負った方で、ご主人の若い頃を見て辛い痛みから逃げる勇気をもらったとおっしゃっていた。そして、ご主人には感謝しかないのだ、と。

《おもいでや》は痛みをあまり感じなかったようで話が出来ることに感動されていた。ここからでると痛みがひどくなるだろうから、笑って主人の顔をみたいのよ、とおっしゃっていた。

ただ、利用者がだれなのか、答えることはしない。私たちも初めて請け負った方だったが故、覚えていたに過ぎない。


「「おかえりなさいませ。藤嶋誠一郎様。お疲れ様でございました。」」


「体調はお変わりございませんか?ご無理なさっていませんか?」

「妻に会えました。随分久しぶりに顔を見て嬉しくなりました。残された時間も笑顔で過ごせそうです。ありがとうございました。」


「藤嶋誠一郎様。この空間に来られた時より少しお元気になられたようです。この体験はそのうち忘れます。ですが、今回みたこと、感じたことがなくなることはありません。ご安心ください。この空間からお出になった後はどうぞ、ごゆっくりお身体をお休めください。」


藤嶋誠一郎様の思い出の品は無事に《おもいでや》に取り込まれた。


私たちは旅館に戻り久しぶりの反動にしばらく動けなかった。


そして、初めて請け負った時のことに想いを馳せていた。



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