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「あら、珍しい。今日は旅館のお客様ではなさそうね。飛び入りの方いらっしゃらなかったものね。」

「そうだね。でもまぁ変わらないね。」


突然、《おもいでや》に呼ばれたのは藤嶋誠一郎様である。

「ここは?あんたらは?」


藤嶋様に説明をすると、思い当たることかあったようだ。

亡き奥様は新婚旅行の時の写真を常に持っていたらしい。ただ、最期の時には持っていなかった。そして、亡くなる数日前、笑顔が戻っていた。「ありがとう」と言ったのが最後の言葉だった。


亡くなった後、藤嶋様も同じように写真を持ち歩くようになった。昔、持ち歩くといいことが起こるかもしれない、と奥様がおっしゃっていたようだ。


妻に会いたい、最後笑顔が戻った理由が写真なら、自分も持ち歩こう、そう思うようになった。そして、向こうで出会えたら、写真を持ち歩いて思い出をかみしめていたよ、と伝えたいと。


「藤嶋様。体調は大丈夫ですか?不調を感じたら強制帰還になります。ご承知おきくださいね。それでも向かわれますか?」


「もし、妻も同じ体験ができるなら、行ったでしょう。たとえ短時間でも妻に会えるなら顔を見たいです。」


「承知しました。では」

「「では、藤嶋誠一郎様。いってらっしゃいませ。お気をつけて。お戻りをお待ちしております。」」



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