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【本編完結】狐狂いのVRMMO ~理想の狐を作ったら最弱の幼狐になりました~  作者: かきのたね
番外編

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番外編3 お気楽プレイヤーの辺境滞在日誌(前編)

 教会の朝は早い……。ログインしてすぐに、俺はベッドで大きく背伸びをしてカーテンを開けた。

 ……うん、結構日が昇ってるな。絶対に朝のミサ終わってるわ……。少し焦りながらメニューを操作して借り物の服に着替え、急いで祭具室へと向かった。


「神父様、おはようございます!」


「おや、デボラさん。今日は起きられる日なのですね。朝食の時間は過ぎてしまいましたので、用意が出来なくて申し訳ございません」


「あはは……。いつも来れるわけではなくて、すんません……」


「いえ、冒険者の方は異なる世界での生活もあると聞いておりますので、気にしないでください。こちらとは、時の流れも異なるとのことですしね」


 結構若い感じの神父が眼鏡を指で押し上げながら、微笑みかけてくる。……すまん、男は趣味じゃないんだわ。そういうのは、普通の女子にやってくれ。


「では、デボラさん。今日は、まずは燭台にこびり付いた蝋の掃除をお願いしますね。こちらのヘラをお使いください」


「はい、了解っす……」


 雪で街に戻れなくなったので教会で世話になってる代価としての労働は、地味で面倒な作業が多い。ゲームなんだから、こう……がーとか、ばーっと一気に出来たりしないもんかね?

 せめて、ミニゲーム形式なら楽なんだが、こびり付いたのをがりがりと落としたり、布のほつれを縫ったり、金属の杯や皿を布でごしごし磨いたりと、運営はいったい何を目指してるんだ……?


 まあ、なんか微妙に能力も上がってるし、特に文句はないんだが……いや、やっぱあるわ。なんで俺、ゲームの中でこんな作業してんだか。

 あと、じわじわ上がってる金属磨きスキルってなんなんだ……? ここの作業以外の、どこで使うんだか……。ナイフとかにも効果があればいいんだが、今度試してみようかねー。


 いくつかの燭台の蝋を落として削れた蝋を一か所にまとめていると、隣の部屋……神父がいる書斎の方からドアがトントンと叩かれる音が聞こえてくる。


「おお、クズノハ様! いつもありがとうございます。これは……雑貨屋に頼んでいた磨き粉ですね。こちら、代金と私が焼いたクッキーです」


 あの神父、銀髪ちゃんが来るたびにクッキーあげてるんだよなー……。毎日渡すならまとめて焼けばいいのに、何故か毎日焼いてるんだけど……。

 教会の中が、(こう)の匂いじゃなくてバターの香りが充満してるってーの。


 というか、なんで毎日あげてるんだよ……普通におかしいだろ! 実は、何か重大な理由が……ってどんな理由だよ。その執着心は何なんだ……?

 そんなことを考えていると、祭具室の扉が叩かれる。


「デボラさん、私は村の巡回に出かけてきます。蝋を取り終えたら、次はそうですね……。昼食の準備をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「はーい、かしこまりましたー」


 昼食っつっても、パンとスープを用意しとけば、神父があちこちから貰ってくるお裾分けで何とかなるからな。

 まあ、楽でいいんだが俺が用意する意味あんまり無いよなー……。


 料理スキルの修練と割り切って、神父が戻るまでにスープを作るとするかね。野菜の皮を剥き、適当にザクザクっと切って鍋に放り込む。

 後、ベーコンでも入れて煮込めば良い感じになるだろう。多分。


 煮込みながらだらだらと掲示板を見ていると、王都組は何か情報を見つけたらしく、テンション高く話し合ってる。いいなー……俺、ここで発見したことは、削り取った蝋を溶かして、蝶番にかけたら滑りがよくなるとかだぞ? 何の役に立つんだよこれ……。

 クエストでこれが大活躍する状況とか、嫌すぎるぞ? 村中の扉を何とかしてくださいってか? ふっ……そうなれば、俺の蝋が火を噴くぜ! あ、うん。やっぱ火は噴いちゃだめだわ。燃やしてどうすんの。

 しばらくして、湯気で窓が曇ってきた頃に神父が帰ってくる。


「デボラさん、ただいま戻りました。いい匂いですね。こちら、ジョバンニさんから頂いた熊肉の燻製と、ベルナデッタさんから頂いたカブの煮付けです」


 なんで頻繁に熊肉をお裾分けでもらってこれるんだろうなー……この神父。この前クマに食われてたのに、今度は食う側に回ってるとか、リベンジに成功……なのか? あと、あっさり熊を狩ってくるジョバンニってどれだけ強いんだろう……。戦い方教えてもらえねーかなぁ……。


 とりあえず、ウッドボウルにスープを入れてから、熊肉を切り分けてパンと一緒に皿と並べる。煮付けは……まあいいや。適当に容器を真ん中に並べちゃえ。

 なんか苦笑されてるけど気にしない。食卓について、お祈りしてから食べ始める。


「デボラさん。貴女が今日は起きている事を子供達に伝えると、皆さん喜んでおりましたよ」


「あはは……遊び相手と思われてるだけっすよ」


「いえ、それでも懐かれるのは、貴女の人柄かと思いますよ」


 なんか、優しく微笑みながら褒められた……。ふ……ふん、そんな事をしても、俺は男に(なび)いたりしないんだからねっ!


「午後は自由とさせていただきます。子供達をよろしくお願いしますね」


「了解っす。ごちそうさまでした!」


 手早く食べ終えて食器を洗い、広場に向かう。今日の仕事終了! よっしゃ、今日も遊ぶぞー!

 そんな訳で広場に到着すると、子供達がすでに待機していた。


「よお、デボラねぇちゃん。今日は早いじゃん」


「なんだ? カイル。俺がいつも遅れてるって言いたいのか? んー?」


 目線を合わせて頭をぐりぐりと撫でると、露骨に目線を逸らしやがる。照れてんのか? 照れてんだな? うりうりー。


「あ、カイルくんが、また鼻の下伸ばしてるー」


「うるせぇ、リーシャ! 伸ばしてなんかねぇよ!!」


「きゃー! すけべーがうつるのー!」


「ああ、もう! イーシャまでうるせぇ!」


「うりうりー」


「デボラねぇちゃんも、いい加減やめてくれねぇか!?」


 へっ、仕方ねぇなぁ……。これぐらいで勘弁してやらぁ! にやにや。

 と、そんなことをしてると、広場を銀髪ちゃんが横切って行った。


「なあ、お前ら。あの子は誘ったりしないのか?」


「あー……あいつ、話しかけても無視してくるし、ちょっかいかけても反応しないし、なんか不気味なんだよなー」


「あの子は大人のお手伝いが楽しいみたいだし、放っておいていいんじゃないー? 表情変わらなくて、何考えてるかわかんないしねー?」


「ねー?」


 辛辣だなー……。なんか、こっち見てきてるし聞こえてるんじゃねーの? ……あ、尻尾下がってきた。心なしかとぼとぼと歩いて行った気がするけど、大丈夫かね?

 ……まぁ気にはなるけど、今はこいつらと遊ぶ時間だから気にしても仕方ねーし、別にいっか。そんなことよりも……


「よっしゃー! 追いかけっこするぞー」


「「「おー!」」」


 ふっ、俺の鍛え抜かれた強健な足腰スキルについてこれるかな? この華麗なフットワークを見よ!

 ぬ、回り込まれた……。そういえば、このスキルはスタミナが上がるだけぐえーっ! 我を倒すとはなかなかやるな……がくっ。

 ん……? おいこらエロガキ、人の胸を枕にすんな。あ、イーシャか。なら許す!

 それにしても、やっぱこれは逃走術スキルの修練に結構いいな……。追いかけっこではスキルの効果が出ねぇのに上がるとか、どうなってんだか。


「なー、デボラねぇちゃん。ちょっといいか?」


「あん? 俺の胸は貸さねーぞー?」


「ばっ! 違っ! そうじゃなくて、ねぇちゃんってこの大陸の外から来たんだよな?」


「おー、そうだぞー」


「なら、どんな冒険をしてきたんだ? ドラゴンとかいたのか?」


「ドラゴンは南の方にいるらしいけど、見たことはねーなー……。なんか、一騎討ちでドラゴンと刺し違えた伝説の傭兵が、十数年前にいたらしいけどなー」


「すげぇ! どんな奴だったんだ!?」


「俺も詳しくはしらねぇんだが……。傭兵団の団長をしていて、村を何個も潰してる悪いドラゴンがいるから、退治してほしいって依頼を受けたらしい。でも、メンバーには危険だからここにいろって言って、単身で山に行ったらしいぞ。で、帰ってこないので副団長達が様子を見に行ったら、団長の大剣が地面にぶっ刺さっていて、すぐそばでドラゴンが傷だらけで死んでたらしい」


「詳しく知らないって言ってるのに、結構詳しいねー?」


「ねー?」


「茶化すな茶化すな。まったく……確認した直後にドラゴンが霧散して、ドロップアイテムは副団長が獲得できたらしい。で、団長の大剣とドラゴンがドロップした剣がその傭兵団の象徴になったっていうのが、有名な話だなー」


「団長さんはどうなったのー?」


「んー? 団長は行方不明で、ブレスで消滅したとか実は生きてるとか色んな噂があるぞー。でも、それ以降見たやつがいねーから、刺し違えたって言うのが一般的かなー」


「すげぇ! かっけぇ! 俺もそんな英雄になれるかな!?」


「いや、かっけぇけど死なねぇ方が大事なんじゃねぇの?」


「うるせーなー……。ねぇちゃんは女だから、男のロマンってやつがわかんねぇんだよ」


「俺だってロマンはわかるわい! でも、実際冒険してると、クマに追いかけられたり、オオカミに囲まれたり、蛇に追いかけられたり、仲間に囮として放置されたりするんだぞ!」


「……なぁ、ねぇちゃん。最後の、本当に仲間なのか?」


「おねーちゃん、よく生きてたねー?」


「いのちがかるいのー」


 うるせぇ! 俺だって疑問に思ってるやい! あと、リーシャとイーシャもここぞとばかりに参加してんじゃねぇ!

 ……あ、そうだ。そういや冒険といえば、良いもん持ってたわ。


「なぁ、カイル。お前、ちょっと冒険してみたくねぇか?」


「えっ? そりゃしてみてぇけどさ……村の周囲を冒険しようたって、俺じゃ無理だぞ?」


「ふっふっふ……実は、安全に冒険して、魔物とも戦える良いもんがあるんだぜ? まあ、村の偉い人の許可は要るけどなー」


「ねぇちゃん……変なことしねぇよな?」


「しねぇよ! んじゃ、神父様に許可取ってくるわー。ちょっと待っててくれよー」


 思いついたが吉日ってな! へへっ……子供達に良いところ見せてやんよ!

 そんな訳で、教会の書斎の扉を叩く。


「神父様、すんません。今、少しいいっすか?」


「おや、デボラさん……。どういたしましたか?」


「いやー……村に遺跡を設置しても良いっすか?」


「……はい?」

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