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陣形を保ちつつ、ナツメ達は噴水から大聖堂に続く石畳を歩き出した。
もう、いつキマエラが出てきてもおかしくない領域。
正直な話、生きた心地がしない。だが、恐怖で足がすくむということは無い。
それは、後方でナツメ達を援護してくれるというマリーの存在が大きいかもしれない。
四人は、アンテナを張り巡らしながら、聖堂にどんどん近づいていく。
まだ、キマエラが出てくる気配はない。先陣を切るキャロルが大聖堂の朽ちかけたドアに到達する。
彼女は聖堂内を覗き見した。
「大丈夫、誰もいないよ」
室内の天井は、色鮮やかなステンドグラスが張られていたが、その殆どがひび割れ植物のツルに侵食されていた。
壁には聖人らしき人物や、見たこともない生物や文字、幾何学的な模様が、所狭しと描かれている。
「……妙じゃな」とマリーが呟く。
「なにがですか?」ミアが尋ねた。
「キマエラじゃ。奴の気配が全くせん。わらわも犬の異人種じゃから普通の人間よりは鼻が利く。しかし、テリトリー内じゃというのに奴の匂いの残滓すら感じられん……」
「それって……。つまりどういうこと?」
キャロルの言葉に、マリーは首を横に振る。
「……分からぬ。分からぬが、警戒は決して怠るでないぞ」
マリーの言葉に、三人は頷いて返す。
「パンドラの箱は、ここから近いのか?」とナツメ。
「うむ、もう少し奥に進んだ場所にある」
彼女が言い終わった瞬間、天井のステンドグラスが豪快な音を立てて割れた。
同時に、物凄いスピードで黒い影が聖堂内に侵入してくる。
「——何?あれ?」
キャロルの動揺をよそに、漆黒の影は縦横無尽に聖堂内を駆け回る。
ミアがニーベルングの糸をすかさず放つが、影は束縛を逃れる。
「マリー!あいつが、例の異形種なのか?」
「いや……違う。キマエラはもっと巨大じゃ」
黒い影が忽然と姿を消した。直後、頭上から甲高い男の声が響く。
「なんだぁ?てめえら」
銀髪の髪に褐色の肌。狼のように鋭い目つきをした男が、天窓から降り立ちナツメ達を睨みつける。
異国の衣装だろうか。幅のあるゆったりとした白いシャツとズボンにカーキ色のスカーフを巻いている。
「あんたこそ誰よっ!」
キャロルが右腕で虚空を切りながら、負けじと民族衣装の男に食ってかかった。




