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「てめえらに言う義理はねえ。が、この島まで来れたってことは、ただの人間じゃねぇことは確かだな」
値踏みするように男は、四人を見回し不敵な笑みを浮かべる。
「てめえらも大方、パンドラの箱狙いでスイフトまで来たんだろ?だが残念無念。箱はうちのボスが確保したからよぉ。完璧に無駄足だぜ。おまけにこの後、揃って殺されるんだから、てめえらも相当に不運だな」
「箱の守護者はどこじゃ?なぜ、おぬしは……無事で生きておる!」
「守護者?」
「キマエラのことじゃ!」
マリーが語気を荒げる。彼女の動揺がナツメにも伝わってきた。
「あぁ、あのデカブツか。そいつはとっくに俺のボスが殺しちまったよ」
「……な、に!?」
まるで予期せぬ事態に混乱しているのか、マリーは声をうわずらせる。
「さっきの黒い影。サーベラスですよね?あなたが飼ってるんですか?」
ミアの言葉に男の顔つきが変わる。
「ほぅ。てめぇ、大した動体視力してやがるな」
「サーベラス?」
ナツメがミアに尋ねる。
「以前、父の残した異形種に関する書物で見たことがあります。別名『地獄の番犬』と呼ばれるカテゴリー三の異形種です」
「ちっ。ガキのくせに博識だな」
銀髪の男は、指を口元にやると笛を吹いた。すると天窓から漆黒の影が、再び姿を現し男のかたわらに着地した。
『そいつ』の外見は、強いていうならドーベルマンに近い姿形していた。
体毛は黒く、細身だが全体的に筋肉質で、いかにも敏捷性に優れていそうだ。
眼窩周辺や鼻口部が、淡い茶色に染まり、地獄の番犬という異名に相応しい鋭利で長い牙を備えている。
「なるほど。おぬし、異形種使いか」
そう呟くマリーを一瞥しながら、ナツメはあることに気づいた。
——そうだ。俺とキャロの両親を殺し、故郷を奪った黒い影。そして、この銀髪野郎の声に聴き覚えがあったのだ。
「おい!」ナツメが怒声を上げた。
「なんだ、小僧」
「お前……シェルターを知ってるか?」
「シェルター?」
銀髪の男が訝しげにナツメを睨む。
「パラメリアより遥か東方にある地下施設だ。三年前、異形種の群に襲撃された。その中に黒い影を連れ添った男がパンドラの箱を探せと叫んでだよ。そいつの声が——」
ナツメは言葉を切り、エリュシオンの銃口を男に向ける。
「あんたのダミ声にそっくりなんだよ!」
男は顎に手を乗せ、思案気な表情を浮かべたのち、手を叩いた。
「あー、そういや思い出したわ。えらく辺境の遺跡だったから探すのに苦労したぜ。結局、箱は見つかんねぇし、無駄足もいいとこだったがな」
銀髪の男は悪びれた様子もなく、下卑た笑みを浮かべている。
「あなたが……僕の父さんと母さんを殺したの……?」
キャロルが虚ろな表情で、喉から乾いた声を絞りだす。




