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「ナツメよ、おぬしが仲間を想う気持ちはよう分かる。だからこそ、その大切な仲間を守る為に不必要な甘さは捨てよ」
マリーは咳払いをして言葉を一旦切った後、更にこう続けた。
「なに、もし絶体絶命の状態に陥った場合、わらわの威信にかけておぬしらを逃してやるわい。だから、そう気負いすぎなさんな」
かくしてミアの提案した陣形を展開しながら、ナツメ達は大聖堂に続く森林地帯を進んでいった。
聖堂が近づくにつれ、否応なく緊張感が走る。
森は一切、舗装されておらずナツメ達は木の枝を切り開きながら獣道を進んで行く。左前方の草むらがガサガサと音を立てて揺れた。
ギョッとして音のした場所に神経を集中させたが、草むらから飛び出したのは野鳥だった。
「小鳥ちゃんかぁ……。驚かせないでよ」
キャロルがホッと胸を撫で下ろした。
「お前でもビビることあるんだな」
ナツメは冗談交じりにキャロルをからかう。
「当たり前じゃん!ナツメのバカ。そんなだから女子にモテないんだよ!」
「モテないは余計だって言っただろ!」
ナツメとキャロルの口論をマリーが「うるさい!」と制する。
「気を抜くでない!もうすぐキマエラのテリトリーじゃぞ」
その言葉にナツメとキャロルは、一斉に口を閉じた。
一行が歩を進めて数分後、鬱蒼とした森林の先にコケに覆われた大聖堂が姿を現した。
「マリー」とナツメが声を上げた。
「大丈夫じゃ。まだ奴のテリトリーではない」
「了解」
聖堂と森林の間には、元は噴水であったであろう残骸がなんとか風化せず形を残していた。
噴水に近づいていくと、周辺の瓦礫に錆びたロングソードや焦げ付いた盾などが散乱しているのに気づいた。
武具のそばには白骨化した骸が転がっている。この屍はもしかして昔、マリーが案内したという戦士達なんじゃ、とナツメはふと思った。「すまんが、少し時間をくれ」と声がした。マリーだ。
彼女は戦士の骸に歩み寄り、顔を俯ける。
「わらわのせいじゃ……。誠に無念じゃったろう。許してくれとは言わぬ。せめて安らかに眠っておくれ」
マリーはディオーネを巨大化させ、祈るようにロッドを握りしめた。
三人はその様子を黙って見守る。
彼女は気が済んだのか、ディオーネを小型化させ振り返ると「待たせたな」とナツメ達に声を掛けた。
「あのね……」
キャロルが少し遠慮がちにマリーに話しかける。
「この人達はマリリンの事、そこまで恨んでないと思うよ。多かれ少なかれ、死の危険が伴うのは承知の上でスイフトに来たと思うし……さ」
「ふふ、小娘に慰められては千年の魔女も落ちたものじゃ」
「なんだよ!僕はマリリンを想って……」
「冗談じゃ、キャロルの気持ちは有り難く受け取っておくわい」
マリーは慈愛に満ちた表情でキャロルを見つめる。
「うん!」
キャロルもつられて笑顔になった。




