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マリーの顔は今まで見たことが無いほど険しかった。
その時、ミアが「……あの」と声をあげた。
彼女が言うには、ここから先は陣形を組んだ方がより迅速に対応出来るので無いか、というものだった。
先頭はキャロル、五メートル離れて右後方にナツメ、左後方にミア、俺の十メートル後ろにマリーが立つ。
互いを常にカバーすることを意識しながら、全方位に注意を払う。
ミアの案は中々に見事だとナツメは思った。マリーも感心した様子でミアを見つめている。
「ミアといったか。まだ幼いのに良い戦術眼をしておるの。場数を踏んでいる猛者のようじゃ」
「……いえ、違います!父が家に残していった書物にそうした戦術指南の本があって、良く読んでいただけです!」
ミアは褒められたことが余程、恥ずかしいのか両手を左右に振りながら顔を赤くしていた。
ミアの境遇を考えれば無理もない反応だとナツメは感じた。《《褒められる》》という経験がほとんど皆無で、虐げられる環境で育った人間が自尊心を持つことは容易いことではない。
「マリーの言う通り、良い案だと思う。思うんだけど、先頭はキャロルじゃなくて俺が立つよ」
ナツメが交代を希望したのは、いわばインペリアル(菱形・ダイヤモンド)の陣形だと先頭に立つ人間が真っ先に狙われるからに他ならない。キャロルを危険な目に遭わせたくなかったのだ。
「何言ってんの?ナッちゃん。先頭は僕以外あり得ないよ」
「いや……。でも、それじゃキャロが」
「キャロルの言う通りじゃ。ピエスコ宮殿で皆の動きを観察しておったが、身体能力を飛躍向上させるヘリオスを持つキャロルが先頭に立つのが最も適任じゃ」
マリーの言葉にナツメは返す言葉が無かった。
「ナッちゃんが先頭に立ったら逆に邪魔になるだけだよ。打撃系で近距離じゃないと能力が発動できない僕が真ん前に立つ。ナツメはエリュシオンを確実にキマエラに当てることに集中する。そうじゃないの?」
キャロルの意見にぐうの音も出ない。
正論だ。ナツメは「分かったよ……」とキャロルとマリーに同意の視線を送る。
「だけどな、キャロ。絶対に無理はするな。これからやり合う敵は今まで出逢った異形種とは桁違いなんだ。ミアとマリーの能力で補助が入ってから動くこと。約束出来るな?」
ナツメは語気を多少荒げて、キャロルに念押しする。
キャロルは笑みを浮かべながら「わかったよ。ナッちゃん」と答えた。




