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「ナツメ……さん」

 すぐ傍で倒れていたミアがヨロヨロと立ち上がる。

「ミア、平気か?」

「面目ありません。急に身体の自由が効かなくなって……でも、もう大丈夫です」

 彼女も毒で死に瀕しているといった様子では無い。ナツメの頭の中が疑問符で埋めつくされる。

 その時、波動砲で破壊された出入り口の瓦礫がれきから物音がした。音した方を見ると、瓦礫を押しのけてマリーがうめきながら這い出てくる。全身は泥にまみれていた。

「てめぇ!!」

 ナツメは怒鳴りながらマリーに突進し、スティレットをマリーの喉元に当てた。

「待て待て……。そう慌てるでないわ」

 彼女はどこから出したのか白旗をパタパタ振っている。

「降参じゃ、ふふふ……。おぬしもやれば出来るではないか」

 ——何言ってんだこいつ?さっきまで俺たちを殺そうとしておいて今更。

 しかも、こいつは俺に打ち破られたことを嬉々《きき》として喜んでいる。ますます訳が分からない。

「おぬしの頭は、ただいまカオス真っ盛りじゃろうの。ただ、どうしてもおぬしたちの力量を試す必要があったんじゃ。あぁ、そうそう。わらわのディオーネが発した紫煙には毒など含まれておらん。安心して良いぞ」

「なにがなんだか訳分かんねぇよっ!ちゃんと説明しろ!」

 俺はマリーに向かって怒声をあげた。

 マリーはローブに付いたほこりを手で払い終わると、青い瞳をナツメに向ける。

「パンドラの箱にはな、守護者がおるんじゃ。無論、人間ではなく異形種じゃ。そやつの力はおぬしら、トレジャーハンターが区分しとるカテゴリーだと四じゃな」

「——守護者?カテゴリー四……?」

 ナツメはマリーの言葉を反復する。箱を守護する異形種がいるとは想像もしていなかった。いや、よく考えてみれば、そんな奴が居ても一向におかしくはない。

 ——だがよりによってカテゴリー四の異形種とは。ナツメとキャロルがミアと協力して奇跡的に討伐した異形種『フライスネーク』はカテゴリー三だ。あれを上回る化け物ってことかよ。

「……それは本当なんですか?」

 後ろからミアがマリーに向かって尋ねた。もう身体の方は平気なようだ。

「今更、嘘はつかん」

 マリーは毅然きぜんとした態度でミアの質問に答えた。

「最初からそう言ってくれたらいいじゃん!なんで僕たちを殺すとか、おっかない脅しかけて攻撃してきたんだよ」

 キャロルが不服そうにマリーに噛み付いた。

「実際に殺す気など毛頭なかったわ。ただ、わらわを倒せんようでは話にならんのでな。箱を守護する異形種はおぬしらの想像を遥か超えた猛獣なのじゃ」

 マリーの説明にキャロルは「そっか……」と呟きながら肩をすくめた。

 ——相変わらず切り替えはえーな、とナツメは胸中でつぶやく。

「事情は分かった。マリーのことを百パーセント信じた訳じゃ無いけどさ。とにかく、パンドラの在り方は間違いなく知ってるんだな?」

 ナツメの言葉にマリーは呆れた表情を浮かべる。

「疑り深い奴じゃのうー。心配せんでもわらわが案内してやる。ただし……」

 マリーが一旦、言葉を止めた。

「ただし……なんだよ?」

「案内しても箱にたどり着く前に、ほぼ間違いなくおぬしらは死ぬ。と、いうか『詰む』。——その覚悟はあるか?」



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