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「キャロ、大丈夫か?」
「うん……。ナッちゃん。なんか見えない壁みたいなのに入り口が塞がれてるよ!」
キャロルが立ち上がり鼻をさすりながら指をさす。
見ると出入り口や窓といった外に通じる空間が紫煙によって完全に覆われていた。
「無駄じゃ、無駄。わらわのディオーネが生み出す〝変幻自在の紫煙〟は凝縮することで鋼鉄なみの硬さにすることも出来る。おぬしらに逃げ場はない」
くそ、ダメかと思った矢先にミアが「ナツメさん!」と叫び左手からニーベルルングの糸を繰り出す。
糸の放たれた先には、今まさにディオーネでナツメを殴りつけようとするマリーが居た。いち早く、気配に気づいたミアがマリーの攻撃より前に捕縛用の糸をまきつけようとする。が、糸に縛り付けられたマリーが煙になって霧散した。
「ダミー……?」
ミアは一瞬、呆然としたが直ぐに気を取り直す。
「ナツメさん、キャロルさん。背中を合わせて死角を消しましょう」
三人はすぐさま互いに背中を預け三角形に陣を張る。
——頼りになるよな。ミアって。いや俺がヘタレなだけなんだろうけど。
これまでのマリーの攻撃方法から考えて、煙を様々な形態に変化させ相手を撹乱させつつ刺してくると見て間違いない。この上なく厄介な能力だが、死角を消せばなんとか対応出来るかもしれない。
だがナツメの考えは甘かった。
「甘い、甘い。上がお留守じゃぞ」
頭上からマリーの声が響くと同時に回し蹴りが放たれ、ナツメ、キャロル、ミアが吹き飛ばされる。
「くっそーっ!」
キャロルはすぐさま態勢を立て直しマリーを睨んだ。ミアも機敏な動きで一回転し、ニーベルングを放つ構えをとっている。
どべで立ち上がったナツメは、マリーを見据えながら妙だ、と思った。
——なんでさっき頭上から攻撃してきた時、マリーはわざわざ声に出したのだろう?宣言などする必要はどこにも無いはずだ。不意打ちの意味もなくなる。
「口ほどにもないのお。もう少し骨があると思ったが」
マリーは紫煙に包まれながらディオーネをまるでバトントワリングのようにくるくる器用にまわす。
「全然、へっちゃらだもんね!マリリンには絶対に負けないから!」とキャロルは息巻いた、が急に咳き込み出した。
「キャロルさん?」
駆け寄ろうとしたミアも同様に咳き込みだし、その場にうずくまる。
「キャロ!ミア!」
マリーが「くふふ」と不気味な嘲笑をあげる。
「ようやく効いてきたか」
「……なに?」




