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「嘘というのは否定せん。もっとも騙される方も騙される方じゃと思うがな。パンドラの箱という稀代《きだい》の宝がそんな簡単に見つかるとおもうたか?」

 —くそ!ナツメは歯ぎしりした。やっぱりこいつは最初から俺を騙してたのか。だが、腑に落ちない点がある。

「なぜ、わらわがありもせん場所までおぬしらをつれてきたのか?と思っとるじゃろ?」

 マリーはナツメの心を見透かしたように言う。そして、ビー玉サイズのディオーネを巨大化させた。

「単純な話じゃ。パンドラの箱を嗅ぎつける輩をおびき寄せて始末する」

 ナツメの背筋が凍りつく。薄々、予想はついていたが、いざ『殺す』と言われたことに対する戦慄。

 つい先刻まで普通に会話していた相手が豹変《ひょうへん》すると、こんなにも戦慄を覚えるものなのか。

「言い残すことがあれば聞いてやってもよいぞ」

 マリーはディオーネをくるくると回転させる。ロッドの先端、渦巻き状の真ん中にはめ込まれた宝玉が光を放ち、紫の煙を吐き出し始めた。

「ねぇ!マリリン。やめてよ!せっかく僕たち仲良くなれそうだったのに……」

「お願いです。こんなことやめて下さい!」

 キャロルとミアの願いも虚しく、マリーは室内に広がる煙の中に消えた。

「くそ!やるしか無いのか……」

 ナツメはスティレットを構える。

「キャロル、ミア。油断するなよ!」

 叫んだ——その直後、ナツメの後頭部に激しい衝撃が走った。痛みのあまり、ナツメはその場に倒れ込む。

「ナッちゃん!」

「ナツメさん、大丈夫ですか!」

 キャロルとミアが口々に叫びながら、ナツメの傍に駆け寄ってくる。

「きゃっ!」

 ミアが悲鳴をあげた。煙からいきなりディオーネが出現しミアの足を払ったのだ。

「ミーちゃん!」

 キャロルがミアを抱きかかえる。

「だ、大丈夫です……」

 室内に響き渡るようにマリーの声がする。

「くふふ、どうした。視界が遮られては、手も足も出せぬか?」

 この煙はマリーの宝具『ディオーネ』が発生させている。ならば室内に漂うこの煙に、どんな特殊効果を付加しているか分からない。

「キャロ、ミア。ここは一旦引くぞ!出口まで走れ!」

 三人は即座に、別邸の扉に向かって駆け出した。

「痛ったあぁっ!」

 先頭を走っていたキャロルが何かにぶつかった様に、跳ね飛ばられる。


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