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「あんたらこそ何なのよ!ミアちゃんはこの村に巣食っていたフライスネークを倒そうと必死だったんだよ?あんたらは何してたの?ただ家に閉じこもって、ビクビク怯えてるだけの奴より、ミアちゃんの方が遥かに健気で誠実だよ!お前らこそ、みんな地獄に落ちろ!」

 キャロルの亜麻色の髪から、犬耳が生えていた。もちろん尻尾も。

 怒りで、今まで引っ込めていたものが出てきたのだ。

 キャロルの鬼気迫る訴えに、住民達が野次を止め静まり返る。

「キャロ、よせ」

 ナツメが制するように、彼女の肩に手を乗せる。

「でも……」

 言い掛けたキャロルは、やがて諦念ていねんしたように俯いた。

「ミア、よかったら家まで送るよ」

 ミアは黙ったまま、こくりと頷く。

「そこ、どいてもらえます?」

 ナツメは道を塞いでいた村の男を睨みつける。

 男は何か言いたげだったが、ナツメの顔を見ると、おずおずと脇に寄り道をあけた。

 村人に対するキャロルの怒りは、ナツメも痛いほど分かっていた。

 もう一発、エリュシオンを撃てたならポトラ村をぶっ壊してやりたいくらいに——。

 だが、そんなことをミアは望まないだろう。だから何も言い返さない。

 ナツメは握りしめていたエリュシオンを、ホルスターにしまった。

 ミアを自宅まで送った後、ナツメとキャロルはポトラの宿に戻った。チェックアウトする旨を伝えると、宿の主人は露骨にほっとした表情を露わにする。

 きっと、フライスネークの一件で、村人達といざこざがあったことが既に聞き及んでいたのだろう。

 どのみちナツメも、この村から早々と離れたかったし今更、気分を害しはしない。

「でも、ナッちゃん!エリュシオンが発動してマジに助かったね。」

 キャロルは今日でお別れとなる宿のベッドにお尻を預けながら、ナツメのホルスターに目をやる。

「まぁ……な。今回に関しては撃てるって確信があったから、さ」

「怒りのボルテージが溜まると発動できるってやつ?」

「ああ」とナツメは答えたが、胸中には疑念が渦巻いていた。

 そもそもエリュシオンを発動させるトリガーが怒りの感情だと思う根拠は、過去の出来事に起因する。

 ——まだ俺たちがパラメリアに流れ着く前。荒れ果てた街で盗賊団に襲われた時だ。

 不意に襲いかかってきた男達にキャロルが切りつけられ、その拍子に首に着けているヘリオスが外れた。

 能力が使えない状態になったキャロルが、男に押し倒される。ナツメも二、三発、腹部にボディーブローを入れられ、地面に這いつくばっていた。

 泣きながら俺の名前を呼ぶキャロルを見たとき——何かが切れた。

 気づくと、腰に下げていたエリュシオンが青光りしていた。俺は咄嗟とっさに銃を抜き、引き金を引く。

 銃口から漆黒の光波が撃ち放たれ、建ち並んだ煉瓦造りの家屋を、跡形もなく『消しとばした』。

 盗賊たちは恐れをなして、我先に逃げていった。

 エリュシオンが発動したのは、その時だけだ。

 後にナツメが宝具をいじくりまわし、何とかエリュシオンを発動させようとしたが一向に反応しない。

 そんな訳でナツメ自身、エリュシオンは『自分か自分の大切な者が危機にさらされ、そのことに激しい怒りが湧いた時のみ発動できる』という解釈かいしゃくをとっていた。 

 今回のフライスネークの件でいえば、ミアが自分と妙にダブったこと。

 他人事とは思えず、彼女の気持ちに共感し激情を抱いたことが、『撃てる』というナツメの確信に至った理由だ。

「その銃、ナッちゃんがもっとコントロール出来たら便利なのにな」

 鋭い意見をキャロルが口走った。

 全くもってその通りだ。だが、それが出来るならとっくにしている。

「エリュシオンは俺と同じく出来損ないなんだよ」

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