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「ゴースト……あいつがカテゴリー『一』」

 ナツメは絶句した。俺やキャロルが手も足も出なかったゴーストより二段階も上の化け物。

 ジェフが言うように、ナツメ達がどうにかできる相手ではない。

「ナッちゃん!」

 キャロルが、つんざくような声でナツメに叫ぶ。

「あれ、見てよ!フライスネークに向かって飛んでく外套の子。僕たちがこの村に来た時にイジメられてた、ミアって女の子だよ?あの子一人で、あんな化け物倒せるわけないよ!私たちも加勢してあげなきゃ!」

 キャロルはナツメやジェフ、アゲハに向かって嘆願たんがんする。

 彼女の言うことも一理ある。あのミアという少女が何故、フライスネークに立ち向かおうとしているのか解らない。

 だが、彼女一人であんな強大な相手が倒せるとは到底思えない。ナツメは震える拳に爪を立てて、恐怖を押し殺す。

「キャロ、お前のなんとかブローが通じるかだけ確かめる。一撃食らわして、もし無駄なようなら即、撤退する。いいな?」

「ナッちゃん!」

 キャロルは涙目でナツメを見ながら「彗星の一撃(アストラルブロー)だよ!」と付け加えた。

「ナツメ。だめだ。危険すぎる!」

 ジェフが珍しく声を荒げて、ナツメ達を制止する。

「そうよ!カテゴリー『三』の異形種相手に、あなた達が敵うわけないでしょう?」

「ジェフ、アゲハ。済まない……。でも、あの子をどうしてもほっとけないんだ」

 ナツメはキャロルに目配せして、同時に走り出した。

「おい!ナツメ!キャロル!」

 背後からジェフの声が聞こえる。——解ってる。俺とキャロルがどうにか出来る相手じゃないことくらい。

 だけどあの目を見てしまったから。あのミアという少女の絶望に満ちた瞳を。だから無碍むげに見過ごすことは出来ない。

 俺の心がそう叫んでいるから——。

「キャロ、先に行け!ただし絶対に無茶な行動は取るなよ。俺が着くまで、あの子の援護にまわるんだ」

 キャロルは頷き、十メートルはある小島を繋ぐ橋を飛び越えていった。

 相変わらずキャロルの宝具『ヘリオス』は凄いなと思いつつ、ナツメはリュックを地面に下ろす。

 そしてボトルアクションライフルを肩に下げると足早に橋を渡り、キャロルの後を追う。

 上空を見ると、フライスネークは胴体をくねらせながら、ポトラ村の周りを旋回していた。ナツメは立ち止まり、双眼鏡を覗き込む。

 外套を羽織った少女は、左手から糸状の物質を放ち、村の中で最も高く隆起した小島に昇りつめていた。

 ミアはニーベルングの指輪が生み出す糸を小島の岩壁に突き刺し、糸を収斂しゅうれんすることで、強靭きょうじんなゴムのように自身を空中に飛翔ひしょうさせた。

 村の中で一番高くそそり立つ小島に辿り着いた彼女は、燃えるような視線をフライスネークに向ける。

 この位置からだと、フライスネークは目と鼻の先と言って良いくらいの距離になる。

「待ってたよ。お前が来るのを」

 ミアは低く唸るような声をあげた。

 ——今日、ここで決着をつける。フライスネークは彼女の姿を視界に捉えると、赤々とたぎる眼を向け雄叫びを放つ。

 ミアは臆することなく、フライスネークの方へ駆け出す。フライスネークも彼女がいる小島に姿勢を向け、巨大な牙の生えた口元を開けながら飛来する。が、牙の覗く口が途端に閉じられた。 

 ミアが指輪から放った糸が、フライスネークの口を縛りつけるように巻きついている。

 糸は異形種の口を塞いだ後、どんどん短くなりミアをフライスネークの元へたぐり寄せた。ミアは小さな身体を軽やかに空中でひるがえし、フライスネークの頭上に降り立った。

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