7
ポトラ村に着いた途端、視界に巨大な影が入りこむ。
「なんだ。あいつは……」
ナツメの目に映った『それ』は灰色の鱗に、毒々しい真紅の瞳をした全長五十メートルはあろう『空を飛ぶヘビ』だった。
——あいつも異形種なのか?こんな馬鹿でかいモンスターが存在するなんて。ナツメは呆然自失の状態に陥る。
「フライスネーク……」
ジェフが、愕然とした口調で呟いた。
「フライスネーク?ジェフ、あの異形種のこと知っているの?」
アゲハの声に、ジェフが反応しない。
その時、雄叫びが湖面に震わせた。ナツメ達が村の上空を旋回するフライスネークの方に目をやると、奴と同じく空中を飛ぶように、上空を昇っていく影が見えた。
ナツメはリュックから双眼鏡を取り出し、レンズを覗き込む。
影は、この村に来た時に出会った異人種の少女。ミアだった。
彼女は左手に着けた金の指輪から、糸のようなものを放出し、湖にそそり立つ小島の岩壁に突き刺していた。
糸はワイヤーのようにミアを引き上げ、高さのある小島を経由しながら、フライスネークに向かって距離を縮めていく。
「あの指輪……。宝具なのか?」
なぜミアが、あの空飛ぶ蛇に向かっていくのか分からないが、いずれにせよ俺たちも無関係ではない。
この村の宿を拠点に、これからヤギウの遺跡を発掘するという矢先だからだ。
「ジェフ!あのフライスネークって異形種、何とかならないのか?」
ナツメの詰問に、ジェフは暗い表情を浮かべながら、首を横に振る。
「無理だ。残念だが俺たちの手に負える相手じゃない。まさかあんな異形種が出るなんて……。完全に俺のリサーチ不足だ。みんな、本当に済まない……」
「何それ!ここまできて。——まさか発掘調査まで止めるつもり?」
アゲハは、苛立ちを隠しきれない様子だ。
「フライスネークは……異形種危険カテゴリー『三』だ」
ジェフの発言を聞いた、アゲハの表情が一変した。
「カテゴリー『三』?」
ナツメがジェフに聞き返す。
「あなた、そんなことも知らないの?カテゴリー『三』っていったら、一級のトレジャーハンター、もしくはパラメリア兵団一個中隊で倒せるレベルの異形種よ!」
ジェフに代わって、アゲハが声を張り上げた。そういえばハンター養成所で、異形種の危険度について講義を受けた記憶がある。
しかし、トレジャーハンターにとって異形種は避けるべき危険生物であってお宝や調査対象ではない。
ハンターになって幾許も無いナツメが、それを認識出来ていないのも無理のない話だ。
「ちなみに、ヴィエジャの森で俺たちが倒したゴーストは、危険カテゴリーでいえば『一』だ。ここまでいえばナツメにも、フライスネークのヤバさがわかるよな?」
ジェフは強張った顔でナツメを見つめる。




