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【1部完結】クズの婚約者は金ヅルにしますのでどうぞお構いなく  作者: いか人参
2部

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29.ミミの止まらぬ妄想



「夜会には嘘の愛が蔓延ってる。だから、その嘘を見抜いて、適切な相手と結ばれるように手伝ってあげればいい。俺たちが不慣れなことをするより、ずっと確実だと思わない?」


(出来れば俺は、不慣れを慣れさせたいけどね。)


本音を心の内に留めて、アレクスティードが隣のシャルロッテと向かい側のヘルテルに順に視線を向ける。優しく諭すように。



「いいわ。それでいきましょう。私が片っ端から嘘つきを見抜いてあげるから、そのあとはアレクが何とかしてよね。」

「ちょっと、姉さんっ」


やけに自信たっぷりで身勝手なシャルロッテの発言に、ヘルテルが焦った声を出した。脊髄反射でアレクスティードの顔色を窺う。



「もちろん。シャルの頼みなら喜んで。」


身体ごと真横を向いたアレクスティードがシャルロッテに微笑む。そして彼女の手を取り、自身の口元に近づけた。軽く触れるだけの口付けを落とす。



「なっ………」


唇が触れた瞬間、焼け付くような熱を感じた。その熱が全身に回る前に、シャルロッテが自分の手を勢いよく引っ込める。まるで宿った熱を鎮火させるかのように、もう片方の手で握りしめた。



「なにするのよっ!!!」

「何って…なんだろ?強いて言うなら、求愛行動とか…?」

「もう結婚してるのに、意味ないでしょ!!」

「ああ、それもそうか。」


激しく動揺するシャルロッテを前に、アレクスティードが嬉しそうに余裕の笑みを浮かべる。彼女の感情をかき乱す瞬間が堪らなく至福であった。



「なら、もっと先のことをしてもいいのかな?」

「!!!!」


不意に耳元で囁かれ、さすがのシャルロッテも耐えられなくなってしまった。赤い顔のまま無言で席を立ち、ヘルテルの椅子の後ろにしゃがみ込んで耳を塞ぎ隠れてしまう。



「はぁ…俺の奥さんが一々可愛くて困る。早く連れ去りたい。」


小動物のように逃げ込んだシャルロッテがあまりに可愛く、アレクスティードが目元を手で覆い天を仰ぐ。



「今は作戦会議の時間でしょ!冗談を言ってる暇はないわよ!」

「姉さん、アレク義兄様、終わったら教えてください。僕目も耳も塞いでますから。」

「気が効くね。うん、分かった。」

「ヘルテルまで何訳の分からないことを言ってんのよ!」


気を利かせた弟に、ニョキっと背後から顔を出したシャルロッテがぎゃあぎゃあと喚き散らす。


アレクスティードはその様子を眺めながら可愛いなと思いつつ、彼女と身体的距離を詰めるのはまだまだ先だろうなと、心の中で一人ため息をついて嘆いていた。



***



「私はラブラブを見せつけるに一票です!」


脇を締めて姿勢を正し、ピシッと勢いよく手を上げたミミ。そのせいで脇に抱えていた衣類が床に散乱したが、気に止めることはない。



「ミミも大概人の話聞いてないわよね…」


珍しくシャルロッテがボヤく側に回った。

まぁいいわとあくびをしながらベッドに腰掛け、ミミに寝支度の続きをお願いする。



湯浴み後自室で今日の出来事を話すと、ミミの瞳が急に煌めき出したのだ。

そしてまたいつものようにロマンス脚色を加え、彼女の脳内では薔薇の花びらが吹き荒れていた。無論、食用ではなく観賞用のものだ。



「お嬢様はアレクスティード様に見初められて嬉しくないのです?あんな何拍子も揃ったお方に愛されるなんて、令嬢全員の憧れだと思いますよ。」


「恋だの愛だのって、よく分からないわ。」


「それはキスや同衾をしてみればいいのでは?世界一愛されてるって実感してヒロイン真っしぐらですよ!」


「そんな顔で親指を立てられても…」


色恋ごとになるとミミの目の色が変わり、シャルロッテでさえも毎度圧倒されてしまうのだ。


どこか悩んでいるような顔をしたまま、シャルロッテがパタリと後ろに倒れてベッドに仰向けになる。見慣れた天井のシミを数えながら口を開いた。



「私、愛はお金で買えるって思ってるのよ。だって、普通好きでもない相手に自分のお金を使おうなんて思わないでしょ?私なら絶対に嫌よ。だからこんな私のために大金を使ってくれるってきっと…」


シャルロッテの頭に思い浮かんだいつもの笑顔。


彼のことを思うと、心がポカポカしてくる不思議な感覚があった。これまで孤独に戦って来た彼女にとってそれは、命を預けられる戦友を得たような、そんな身を守れるほどの安心感に近かった。


恋や愛と呼ぶには程遠く、かといって簡単に手放せるようなものではない。もう彼女の心に居場所を作ってしまっているのだから。



「ええ、分かっていますよ。」


ミミが安らぎの表情で頷く。

最後まで言わずとも、主人の言わんとしていることをきちんと理解しているようであった。



「今度、夜の密室デートにお誘いしましょう!」

「話聞いてなかったわよね!!?」


キリッとした顔で宣言したミミに、シャルロッテが驚いてベッドから飛び起きた。



「安心してください、お嬢様。度数の高い酒を少量飲ませて且つ、私が公爵家の馬車の車輪を壊して泊まる口実を作る…完璧です!」


「それ訴えられて賠償金請求なんて絶対に嫌よ…」


本当に実行しそうなミミに対し、シャルロッテの最大の懸念はやはりお金のことであった。




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