第40話 操る者
森のダンジョンを進む。倒しても倒しても立ち上がってくるスケルトン。まさにアンデッドの脅威を体感している感じだな。
奴らの肋骨に入り込んでいる光を消そうとも考えた。しかし、どんな方法を使っても光は消せない。そうしてスケルトンを避けながら進んでいくと、とうとう問題が発生してしまった。
『スケルトンが……』
20階も後半に差し掛かった時、スケルトンの群れと遭遇した。広い空間にひしめき合うスケルトン。ここから見ても12体はいるな。さっきまでの道に他のルートは無かった。木を切って迂回しようにも、金属のように硬い木の幹は俺の武器では切断できない。……あの中を突っ切らないと先に進めないな。
周囲を観察する。ヤツら、俺にはまだ気付いていないな。正面奥の通路まで駆け抜ければ突破できるか?
……いや、ここはブレイズラムの群れの時と同じ戦法でいくか。ここでアイテム出し惜しみしていたら死ぬ。
マジックバッグからクロウスラッシャーを2枚取り出し、回転させる。高さを調節して2枚のチャクラムを投擲した。
「よっ!」
風の刃を帯びたチャクラムがスケルトン達を切り裂きながら広間を進む。それは壁のように密集する木で反射し、さらにスケルトン達を切り裂いた。頭部を破壊され崩れ落ちるもの。左肩を破壊され盾を落とす者。腰を破壊されて上半身だけになる者……スケルトンに埋め尽くされていた広間にはあっという間に空間ができた。
よし、後はこの間に突っ切るだけだな。
左手に精神の盾を構え、右手でエマージャクスを握りしめる。落ち着け。全力疾走で正面にいる個体を叩き切っていけば抜けられる。
「ふぅ。行くぜ」
覚悟を決めて全力で駆け抜ける。起きあがろうとしているスケルトンを蹴り飛ばし、俺に気付いたスケルトンの顔面にエマージャクスを叩き付けた。
「オラァ!!」
吹き飛ぶ頭部。その瞬間、衝撃波が発生し、一瞬糸のような物が見えた。スケルトンの肋骨に包まれた光。そこから金色の糸が1本伸びているのが。
ん? なんだアレ?
「カタカタ!!」
「カタカタカタカタ!!!」
『ヨロイ君! 狙われているぞ!!』
見えた物に気を取られた瞬間、片腕だけになったスケルトンが襲いかかって来た。スケルトンの攻撃を精神の盾で防ぎ、エマージャクスでヤツの腰骨をぶった斬る。下半身が吹き飛び、上半身だけが地面に落ちるスケルトン。しかし、上半身だけになってもなおもスケルトンは俺を狙って来る。エマージャクスを振りかぶって全力で叩き付ける。
「ラァッ!!!」
発生した衝撃で再び糸が出現した。
「やっぱり糸が見えた! リレイラさんも見えますか!?」
『ああ! 私が糸の行先を見ていよう! ヨロイ君はエマージャクスでスケルトンを!』
「分かってます!!」
スケルトン達が俺を出口に向かわせまいと立ち塞がる。盾による体当たりでスケルトンのバランスを崩し、エマージャクスを叩き付けていく。4体目のスケルトンへ斧を叩き付けた時、リレイラさんが叫んだ。
『いたぞヨロイ君! そこから右前方へ走れ! 私が攻撃タイミングを合図する!」
「了解です!」
右斜め前に全力で走る。上半身だけになったスケルトンを飛んで避けたタイミングでリレイラさんが合図をする。ジャンプ斬りの要領で、俺はエマージャクスを地面へ叩き付けた。
「オラァ!!!」
発生する衝撃波。すると突然、目の前にローブのような物が浮かび上がった。
「キュア!?」
空中をフワフワと漂い、フード部分に2つの黄色い光が浮かんだ存在。それがユラユラと空中を漂っているのを視認する。その手から大量の糸が伸び、スケルトン達に繋がれていた。
『人形使いの亜種か!? ヤツが放つ魔法に気を付けろ! 対象を操る力があるはずだ!!』
「キアアアアアアア!!!」
人形使いが俺に光を飛ばしてくる。ヤツの手から放たれる眩い光の球体。光には金色の糸が伸びていて、人形使いの手元へと延びている。それはスケルトン達を操っているものと全く同じ光だった。
「コイツで操ってたのかよ!」
放たれた魔法をローリングで回避する。しかし、人形使いが手を引くと光から伸びる糸がしなり、避けたはずの球体が俺を追いかけて来た。どれだけ避けてもしつこく追いかけてくる球体。回避しているうちにスケルトン達も集まって来る。通常ナイフを投擲してスケルトンを操る糸を切断しようとするが、ナイフの切先はスルリと糸を通り抜けてしまった。
『あの糸は魔法だ。本体の人形使いを叩く以外スケルトンを止める方法はない、だが……まさか人形使いが霊体になっているとは……このようなタイプは見た事が無い』
リレイラさんも戸惑っている。霊体ってのはそれだけ特殊な存在なんだな。
『だが、エマージャクスの効果を受けて目視できるようになったという事は、実体化しているということだ。今ならヤツを倒せるはず』
「なら、今のうちに仕留めます!!」
飛びかかってくるスケルトンを精神の盾で受け止め足を払う。走りながら精神の盾を左腕から外し、人形使いへ投擲した。
『な、何をやってるんだ!?』
「コッチが使いたいんですよ!!!」
人形使いが右へ体を捩らせ盾を回避しようとする。ヤツの意識が逸れた瞬間、精神の盾の下……そこに装備していたフレクシルドを展開、ヤツの光球を弾き返した。狙いはヤツが精神の盾から逃げた先。そこへ向かって光球を弾き返す。
「オラァ!!!」
弾き返した瞬間、フレクシルドが粉々に砕け散る。この1回分で回数を使い切ったか。だが、1回で十分だ。
「ア゛ッ!?」
光の球体が人形使いに直撃する。自分の攻撃を受けて混乱したからか、一瞬動きを止めるスケルトン達。その隙間を縫うように走り、人形使いに斧でのジャンプ斬りを放つ。
「鬱陶しい事しやがって!!」
エマージャクスをヤツのフードへ叩きつける。
「キアアアアア!? ア゛ッ!?」
縦に真っ二つなる人形使い。一斉にスケルトン達が崩れ落ち、切り裂かれたヤツのローブからレベルポイントが溢れ出した。
──レベルポイントを2000pt獲得しました。
『通常の人形使いの10倍以上あるレベルポイント……特殊な個体だったようだな』
フロアを通して厄介な個体だったしな……体力は低かったが中ボスだったのかも。
だけどこれで俺の保有レベルポイントは1万5千ptを超えた。ボス戦前に強化して挑むか。
……ん?
人形使いのローブにキラリと光る物が見えた。それを拾い上げてみる。緑色の宝石? 丸いし宝玉かも。
「なんだこれ……?」
武器じゃなさそうだ。鑑定魔法を発動してみるか。
名称:真理の眼
分類:?
属性:?
効果:??????。使用回数?回
「真理の眼ってなんだ?」
『鑑定魔法で効果は分からなかったのか?』
「使ってみましたけど分からないですね……武器じゃないみたいですし、とりあえず必要なタイミングまで取っておきます」
謎のアイテムを手に入れた俺は、さらに先へと進んだ。
次回、森を進み、ついに25階層へ至った461さん。しかし、彼の前には巨大な門が。26階に行くには手に入れたカケラだけではなく門に施された仕掛けを解かなければならないようで……?




