第38話 成長
崖のエリアを進んで14階層へとやってきた。途中何度も現れた幽霊騎士に手こずったが、モーションも覚えたからか回復薬の使用は抑えながら進む事ができた。
だけど、問題というか……1つ難点があった。
『なぜ同じ魔族が時の迷宮を……そういえば、グンマダンジョンの情報伝達にも違和感があった……あれはもしかしたら管理者が……』
11階層での出来事を伝えてからリレイラさんは考え込んでしまっている。よほど管理者の正体がショックだったのだろう。
『あ……ごめん。さっきから自分の世界に入ってしまって……その、私と同じ魔族がこの状況を起こしたのが、ショックで……』
「大丈夫ですよ」
俺としても管理者の過去を見て気分が沈んでしまっている。リレイラさんはツノ無しという事で管理者を罵倒するような事は言わなかった。あの光景を見た俺にとっては、その事はかなり救われたが……もし、リレイラさんが無意識にそんな事を言っていたら……俺は彼女と普通に接する事ができただろうか?
こんな風に、俺達は微妙にギクシャクしてしまっていた。
ダメだ。最終攻略に入ってから妙に気が散ってるな。攻略に集中しろ、俺。
もう1度攻略を振り返る。この崖エリアはレズームやスライム種を中心としたエリアだ。一定区画ごとにレズームとスライムの縄張りがあるようで、スライムだけの場所はスライムだけ、レズームの縄張りではレズームだけが襲いかかって来る。
道幅はそれなりにあるものの、一本道の崖ではどうしても行動が制限されてしまう。レズームもスライムも厄介で仕方ないぜ。
考えながら一歩踏み出す。足裏に僅かな振動を感じた。
『奥で地面が盛り上がるのが見えた。レズームか』
「任せて下さい。上手くやるんで」
ここからはレズームの縄張り……なら、崖を利用した戦法で行くか。
地面で数度ジャンプする。すると振動がこちらへと向かって来るのを感じた。レズームのヤツら……一気にこちらに向かって来たな。すかさず消音魔法を発動。向かって来る振動からレズームの数を予測する。数は……2体か。狙い通りの数が釣れたな。俺に気づかなかった個体もいるはず……ソイツらを誘導するか。
マジックバッグの中からディガーファングを取り出し、崖に身を乗り出す。ヘルムの隙間から感じる風。この谷は相当深いな。
「追っかけてくれよ」
崖の壁面へディガーファングを投げつける。ドリル状のディガーファングが壁面の中へと潜って行く。それを追いかけるように別の振動が崖の下へと向かっていった。
「っし。後は向かって来る2体を……」
バックステップしてシャドウソードを腰に据える。一撃で仕留めるにはこれが1番効率がいい。
3。
地面を走る音が大きくなる。距離はあと10メートルほど。2体は並走して来てるな。
2。
あと5メートル。俺の動きを変えるならここしかない。相手の動きに変化が無いか見極めろ。レズーム達は並走したまま……次のカウントで攻撃モーションに入る。
1。
シャドウソードを握る手に力を込める。後少し。タイミングを誤るなよ。
0。
レズームの口が俺が立っていた場所へ飛び出してきた。
「オラァッ!!!!」
シャドウソードを横薙ぎに一閃する。
「ギシャ……!? ア゛アアアアアアァァァァァァ!!?」
飛び出して来たレズーム達は、シャドウソードの斬撃を受けて頭を跳ね飛ばされた。雄叫びを上げながらレベルポイントの光を溢れさせる2体のレズーム。すぐさま身構えるが、他に振動は無い。他の個体は先程のディガーファングを追いかけて崖下へ行ったままみたいだ。
レズーム2体分で100ptのレベルポイントがスマホに吸収される。残った残骸から新たなディガーファングを2個採取した。
「ディガーファングが減らなかったのはラッキーだったな」
『すごいな……もう、完全に対処できているじゃないか』
「レズームとは散々やり合ったんでモーションは覚えましたね。後はこの崖での戦い方を考えるだけです。それが固まって来たのかも」
『ふふっ。そうか……このダンジョンに入ってからすごく成長したな、ヨロイ君』
成長した? うぅん……俺は必死にやって来ただけなんだけど、リレイラさんが言うならそうなのかも。自分の事って自分じゃ分からないのかもな。
『よし、私も難しい事をゴチャゴチャ考えても仕方ないな。もっと君との探索に集中するよ』
レズームとの戦闘をキッカケに話しやすくなる。……リレイラさんがいつもの雰囲気に戻ってくれて良かった。
俺達は、さらに先へと進んだ。
次回、新たなエリアへ入った461さん。しかしそのエリアには不釣り合いなモンスターがいて……?




