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【461さん踏破録】〜元引きこもりダンジョンオタク、入るたびに構造が変わるグンマダンジョンを攻略して最強探索者に至ってしまう〜  作者: 三丈夕六


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第37話 焼け落ちた村で

 霊体の漕ぐ船に乗って湖の向こう岸へと渡る。礼を言うと、霊体は片手を上げてそのまま消えていった。どうやらこのダンジョン内では人の代わりにあの霊体が住んでいるみたいだ。


『ヨロイ君。あの木の近くにあるアレが言っていた魔法陣じゃないか?』


 周囲を見回してみると、林の中に一際大きな樹木があり、そのふもとに赤い魔法陣が光っていた。


 魔法陣の近くに行き、周囲を警戒してからその上に乗った。すると真っ白な光に包まれる。数秒後、違う場所へと到着した。



 ……。



 到着した瞬間、鼻をつくような異臭に襲われる。村みたいだが……木製の建物が黒焦げになってブスブスと煙が出ている。なんだここ? 何かに襲われた跡地か?


「リレイラさん、ここって……」


 リレイラさんに声をかけてみる。しかし、インカムの向こうからリレイラさんの返事が無い。


「リレイラさん?」


  ……ダメだ。この村周辺は亜空間みたいに連絡が付かないのか? マズイな……。この先もこんな調子じゃあリレイラさんに心配かけちまう。


「クソ、何回コールしても繋がらねぇ」


 ……考えても仕方ねぇか。とにかく今は次の階層へ渡る魔法陣を探さないと。


 ショートソードを引き抜いて村の中を進んでいく。中はさらにひどい有様だった。無事な建物は1つもなく、住んでいたであろう人々は黒焦げになって死んでいる。それは大人だけじゃない。子供までいて、思わず顔を背けたくなった。


 だが、その光景に最近聞いた話を思い出す。管理者は確か焼け落ちた村の事を話していたよな?


 リレイラさんと連絡は付かないが、さっきみたいに管理者とは話ができるかもしれない。


「管理者、聞いてんだろ? もしかしてここってお前の言っていた場所か? 突然変異達の村って」


 何もない空間へ声をかけてみると、そこに小さな亜空間の門が現れた。


 ──そうだな……今回の攻略に我が干渉した事で、時空の歪みが我の記憶にある時代を写し出したのかもしれぬ。


 やっぱりそうか。


「次の階層へ渡る魔法陣はあるのか?」


 ──ここは村の北側か。南へ向かってみよ。そちらに村の出入り口があったはずだ。魔法陣が現れるとしたらそこだろう。


 南に向かって村の中を進む。崩れた家からは黒焦げの手が伸びていたり、身を寄せ合うように死んでいる遺体もある。モンスターは……出てこないな。


 ここは異質過ぎる。それになんだか嫌な予感もするし、早く抜けちまおう。


 村の中央広場までやって来た時、急に霊体の集団がいる事に気付いた。建物の陰に身を隠して広場を覗き込む。そこには1人の女の霊体と十数人の兵士達、そしてその後ろにボロボロの服を纏った少女の霊体がいることが分かった。


 そして気になるのが……「ツノ」だ。女と少女にはツノが無いが、兵士達はみんなリレイラさんのようなツノがある。


「アレは……なんだ?」


 疑問に思っていると、再び管理者の声が響いた。


 ──あの女は過去の我だ。最後方にいる少女は唯一の生き残り……この「ツノ無し」の村が襲われた際に逃げ出した者だ。


「ツノ無し?」


──先日我が言った突然変異の魔族の事だ。ツノは魔族である証。それを持たぬ者は仲間と認められず、このような目に遭った。


 魔族……管理者のヤツ、リレイラさんと同じ異世界の出身だったのか……。


 あそこにいる(管理者)は兵士を連れて救援活動に来たってことか。だけどそれにしてはなんだか変だ。先程から霊体達が揉めているように見える。


 兵士達に向かって何かを訴える女。彼女が何を言っているのか聞き耳を立ててみた。



「何をやっている!! まだ生き残りがいるかも知れぬのだぞ! 早く救助活動を始めぬか!!」


 怒るように指示を出す女。しかし、兵士達は困惑したように顔を見合わせるだけだ。その内、隊長らしき兵士が女の前に進み出た。


「……ャルナ様、この村の者達にそこまでする必要があるのでしょうか? これだけ死が蔓延していれば、まもなく深淵を歩く者(アビスウォーカー)達がやって来ます。早く撤収を」


「なんだと……貴様、仲間を救わぬと言うのか!?」


 女が兵士に詰め寄る。しかし兵士は彼女の言葉は聞きたくもないというように顔を背けた。


「……こんな下賤な者達の為に命を賭けたい者などいません」


「下賤だと……? 彼らは私と同じ身の上だ。私にとっては仲間も同然……それを……!!」


 女が兵士に掴み掛かった瞬間、兵士の態度が粗暴になる。兵士は、女の胸倉を掴んで睨み付けた。


「調子に乗るなよ。俺達がアンタに従っているのはアンタの弟……王に敬意を持っているからだ。アンタにじゃねぇ……! そこを勘違いするな」


「ぐっ……!?」


「貴族達は言ってるぜ? 王はアンタを慕っているようだが……アンタは王族にふさわしくないってな」


 兵士が仲間達に撤収の指示を出す。


「撤収するぞ! アンタも早く撤収しろ。拾い上げてくれた王に迷惑をかけるぞ」


 女を残し、他の者は村から去って行く。残されたのは女と少女だけ。女は、家の残骸を退け始めた。


「誰か……誰か……!! 生きておらぬのか……!!」


 いくつもの家を回る女。その後ろをついて行く少女。やがて女は1つの家の前で座り込んだ。その手には黒焦げになった赤ん坊が抱かれていた。


「ダメだ……ダメだ……」


 赤ん坊を抱きながら泣く女。その様子を後ろから少女が見つめていた。


「スージニアよ……貴様達が何かしたのか? なぜこの赤子は死なねばならなかった……?」


 女の質問に少女が躊躇いがちに答える。


「……襲って来た者達は言いました。お前達は神に愛されなかった者だと。だからすべて奪うと」


「そうか……」


 女が赤子を置き、ブツブツと何かを呟き始めた。


「……先王に捨てられた時も、貴族達に慰み者にされた時も……言われた。お前達は証を持たなかったからだと。創生の神に望まれた存在では無いと……」


 彼女が地面を殴る。その手から血を流してもお構い無しに殴り続ける。


「なぜ、我は愛されなかったのか……なぜ王に仕えるには分不相応などと言われるのか……なぜ、我は世界に否定されるのか……今、分かったぞ……っ!!」



 そして彼女は血塗れになった手で地面を握りしめた。



「創生の神が我らを愛さなかったからだ。我らのようなツノを持たぬ者が生まれる事を考えてもいなかったからだ……!! 神さえ過ちを犯さなければ私は……我らは……!!!」


「あ、あの……大丈夫ですか?」


 少女が怯えたように声をかける。彼女はハッとした顔になって少女の頭を撫でた。


「貴様は私について来るが良い」


「よろしいのですか……?」


「ああ、我らツノ無し(・・・・)は創生神エリオンの過ちによって生まれた。このような悲劇は……終わらせねばならぬ。それを……手伝ってくれ」



 恨みを抱くような顔の女、拾われた事を喜ぶ少女。その2人の反応が対照的だ。彼女達の霊体は、この場を去ると同時に姿を消した。



 ──このダンジョンを生み出す事態を招いた、愚かな女の記憶だ。


「お前……」


 ──この時になるまで我は知らなかった。これほどまでにツノ無しは見下されていたのかと。ククッ……何が融和政策だ。それまでの私の活動は他の魔族にとってさぞ滑稽に見えたであろうな。


 声をかけようとしたが言葉が出ない。管理者は自分の事を突然変異と言った。そんな生まれだけでこんな仕打ちまで受けるのか……先程の言葉を聞く限り、彼女自身も生まれだけでひどい仕打ちを受けて来たんだろう。


 ──弟だけが唯一我を見てくれていたのだ。それを我は……その愛情を受ける資格が無いと……思ってしまった。己自身を穢れた者だと……。


「……」


 ──モタモタしていると深淵を歩く者(アビスウォーカー)というモンスターが現れる。早く11階を抜けるといい。


 振り返ると、人型のモンスターの群れがこちらへ向かっていた。ヘイム兵に似ているが、何か違う。真っ黒い影の存在が、ぎこちない足取りで向かって来る。


 ──深淵を歩く者(アビスウォーカー)。ヤツらは死の匂いを嗅ぎつけどこにでも現れる。頭を落とさぬ限り死にはしない。ヤツらには実体がある。遭遇したら頭部を狙え。


「そんな事教えて貰っていいのかよ?」


 ──こんな所で死なれたら気分が悪い。


「そうか……よ!!」


 言うと同時に南へ走る。ヤツらは10体や20体どころじゃない。100体近くはいる……流石にまともにやり合うのは避けたい。


 村の南へ向かって駆け抜ける。途中、建物の角から深淵を歩く者(アビスウォーカー)が飛び出してきた。


「……ォォォオオオ!」


「ちっ、村全体を囲んでやがったか」


 襲いかかって来たところを躱し、その頭を一閃する。ヤツがバタリと倒れ込んだ瞬間、他の深淵を歩く者(アビスウォーカー)達が集まってきた。


「鬱陶しいヤツらだな!!」


 まとわりつこうとするヤツらを避けながら全力疾走する。剣の刀身で背後を確認すると、既に村はヤツらに飲み込まれていた。



 前方に赤い光が見える。魔法陣だ。速度を上げようとした時、前方に3体の深淵を歩く者(アビスウォーカー)が現れた。



「うおおおおあああああ!!!」



 マジックバッグからクロウスラッシャーを取り出す。それを左手で投擲し、1体を仕留める。残った2体の隙間をスライディングで通り抜けて、魔法陣の中へ飛び込んだ。


「早く転移しろ……!!」


 向こうから深淵を歩く者(アビスウォーカー)達が波になって襲いかかって来る。早く……早く……!!!



「オオォォォォオオオオオ!!」


 

 直前に迫った個体の頭を斬り飛ばす。しかし、すぐさま後方の個体が襲いかかって来た。



 飲み込まれると思った次の瞬間、目の前が真っ白な光に包まれた──。




◇◇◇



『……君!! ヨロイ君!!』


 次に目を覚ました時、俺は崖のような場所にいた。インカムから聞こえるリレイラさんの声で一気に現実に引き戻される。


「あ、すみません。ボーッとしてました」


『ボーッとしてたじゃないぞ! 急に連絡は付かなくなるし眼界魔法(オキュラス)も効かなくなって! ……心配したんだからな……』


 涙声になるリレイラさんに謝りながら考えた。


 ツノ無し、魔族、焼き払われた村……。


 管理者の記憶をこのダンジョンが再現したのか? それともその時代に俺が飛ばされたのか?



 ……。



「リレイラさん、ツノ無しについてどう思いますか?」


『……どうしてそんな言葉を知っているんだ?』


「11階層で聞いたんです。リレイラさんはどう思ってるのかなって」


 思わず聞いてしまっていた。それは管理者がリレイラさん達と同じ世界の住人かを確かめたかったからだが……。それもあるけど……。


『私には……よく分からない。彼らと接した事が無いから』


 リレイラさんの口からあの兵士のような言葉が出たら……。


『でも』


 リレイラさんが続ける。その声は悲しそうで、だけど俺が知ってる優しい声だった。


『私は、彼らの気持ちが分かる。私も人間に嫌われているから……だからもし会う事があっても、優しくしたい』


「そうですか」


 リレイラさんの答えに、俺は安心した。

次回、崖を進む461さん。その先に待ち受ける物とは……?


おしらせ

間も無く完結につきましては、最終調整の為1週間をお休みを頂きます。お待たせ致しました申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いします。次回は2/14(金)18:10投稿です。

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