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【461さん踏破録】〜元引きこもりダンジョンオタク、入るたびに構造が変わるグンマダンジョンを攻略して最強探索者に至ってしまう〜  作者: 三丈夕六


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第33話 異変


 翌日。


 いつもの商人の所へ向かうため、リレイラさんと2人で朝のみなかみを歩く。いつもならグンマダンジョンへ向かう探索者をチラホラと見かけるのだが、何故か今日は見かけない。


 リレイラさんと朝食を食べた喫茶店の前を通った時に中を覗いて見たが、人が極端に減っていた。なんかあったのか?


 疑問に思っていると、隣を歩いていたリレイラさんが突然頭を抱えた。


「あああぁぁぁ……」


「ちょ、そんなに落ち込まなくても……」


 リレイラさんはさっきからずっとこんな様子だ。頭を抱えては呻き声を上げている。


 ……まぁ。今朝起きたら隣で寝てた訳だもんな。今までの真面目なリレイラさんからしたら失態だと思うかも。


 リレイラさんはブツブツと独り言を言っていた。


(完全に浮かれていた……というかどうしていいか分からなかったから、辰巳君に見せて貰ったマンガのようにしてみたが恥ずかしすぎるじゃないか……しかも気絶した挙句寝ぼけて一緒に寝るなんて……というかそれを言ったら一緒に温泉も……ああぁぁぁ……)


 これ、話しかけて良いのか? 


「私はなんであんなことを……あああ……」


「俺は嬉しかったですけど……」


 リレイラさんが目を丸くする。彼女はオズオズと俺に聞いてきた。


「え、あ、あんな事をして引いていないか……? はしたない、とか……」


「そりゃ恥ずかしいですけど、リレイラさんに抱きつかれたら嬉しいし……ま、まぁ、落ち込む事じゃないですよ」


 リレイラさんの顔がどんどん赤くなっていく。そして、真っ赤になった顔で俺の隣にやって来た。肩と肩が当たるくらいの距離。リレイラさんは伏し目がちにチラチラとコチラを見て、ポツリと呟いた。


「じゃ、じゃあ……またする。ああいうの」


 いつものリレイラさんとは違う、幼いような表情。また彼女の新しい一面を見て俺の心臓は跳ね上がった。


「そ、そそそそそうですね……楽しみだなぁ〜」


「ふふっ、ヨロイ君も恥ずかしかったんじゃないか」


 俺の反応を見たリレイラさんが面白そうに笑う。……楽しみだなぁってなんだよ。期待してるってモロバレじゃん、俺。


 ドギマギしているとリレイラさんは何かに気付いたように「あ」と声を上げた。


「? どうしました?」


「あの商人の店……荷物を運び出していないか?」


「荷物?」


 リレイラさんの指した方を見ると、商人が店の外へアイテムを運び出していた。黒いバンが店の前に止めてあり、知り合いと思われる男がアイテムをバンの中へ運び込んでいく。商人は、俺達に気付くと大きく手を振った。


「おお! タイミング良かったぜ〜」


 俺達は、顔を見合わせて商人の元へ向かった。


 ……。


 商人は知り合いにアイテムの運び出しを任せて、俺達を店の中へ招き入れてくれた。


「今日で店仕舞いすることにしたんだ」


「え……なんかあったのか?」


 商人が不思議そうな顔をする。


「ん? 昨日の夜の事知らないのか? グンマダンジョンの方がすげー光ったじゃないか」


「光?」


 リレイラさんの方を見る。彼女は分からないというように首を傾げた。もしかして俺がボスと戦ってた時か? リレイラさんも眼界魔法(オキュラス)で視界を共有してたから外の景色に気が付かなかったのかも。


「みんなヤバイんじゃないかって大騒ぎしてよ。結構な数のヤツらがここを離れたぜ」


 そういや……管理者が時空の歪みの影響が大きくなっていると言っていた。もしかしたらそれが発光現象になったのかもしれないな……。


「みなかみに来る前に魔法障壁を潜ったろ? それも様子が変なんだ。後で見に行ってみな」


 ……魔法障壁か。ここに来る前に車で通り抜けたな。……行ってみるか。


「でさ、グンマダンジョンのアイテムも集まったし他の街で商売することにしたんだ」


 他の商人達も同じだろうか? 26階に行く前の準備はこれが最後のつもりでやった方がいいな。


「私達を待ってくれていたのか?」


「ああ。2人にはひいきにして貰ってたからな。入り用があれば、最後に取引しようと思ってな」


 取引をする前に自分の鎧を確かめる。ボロボロだが……胴体と右肩の装甲だけ直せば使えるか。極力アイテムに金かけよう。特に回復系統。回復薬だけはダンジョン内で手に入らないしな。


「じゃ、これが最後だ。どうする鎧の兄さん?」


 俺は、商人と最後の取引を行った。




◇◇◇


 商人に別れを告げた俺達は、鎧技師に鎧を預け、修理完了までの時間を使って魔法障壁の確認へ向かうことにした。車に乗って20分ほどの距離。道中、管理者に聞いた話をリレイラさんへ伝えると、彼女は運転しながら考え込んでいた。


「何か分かります?」


「その管理者の正体は分からないが……時の迷宮は知っている。私達の世界の伝説の古代遺跡だ。それがこの世界のどこかに来ている? 一体なぜ……」


 リレイラさんでも事情は分からない、か。その時の迷宮ってのはどこにあるんだろうか?


 2人でウンウン唸っていると、商人の言っていた魔法障壁が見えて来た。


「アレだ」


 リレイラさんが道路の脇に車を停める。みなかみに来た時に薄い青色だった魔法障壁は、向こう側が見えないほど濃い青色に変化していた。心なしか、俺達が通りぬけた時より範囲も広がっている。


「……管理者とやらが言っていた事は本当だ。歪みの範囲が広がっていると見て間違いないだろう」


 リレイラさんが深刻な表情で魔法障壁を見つめる。


「管理者は歪みの影響が俺達の生活圏にまで到着するかもしれないと言っていました」


「拡大した結果どんな影響があるか分からない。もしかしたら、ダンジョン外にモンスターが出現してしまうかも……そうすれば人的被害は免れない……」


 何も無い所にモンスターが? 探索者がいる場所ならともかく一般人の住む場所がそんなことになったら……。


「戻ろうヨロイ君」


 リレイラさんが血相を変えて車に戻る。鎧の修理は2時間ほどで終わると言っていた。それを回収して、辰巳に金を払って……それから26階を目指さないとな。



 ……。



 その時の俺はまだ気付いていなかった。



 グンマダンジョンを消失させる……つまり、時空の歪みを消失させるという事が、俺達にどんな影響を及ぼすのかを。







 次回、461さんはリレイラや辰巳へ別れを告げ、最後のグンマダンジョンへ……。

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